新車投入できずホゾを噛む思い
第5戦ヨーロッパGP編
ニュルブルクリンクを訪れ、スタッフに励まされて笑顔も出ていた井出(カメラ=神代雅夫)
ニュルブルクリンクを訪れ、スタッフに励まされて笑顔も出ていた井出(カメラ=神代雅夫)
 井出有治(31)の交代問題で揺れたヨーロッパGP。渦中の鈴木亜久里代表(45)が初めて内情を明らかにした。井出のスーパーライセンスは取り消しになっていないことを明言し、チームとして全面的にバックアップする意思をあらためて披露した。そして、ほかの日本人ドライバーの起用は完全否定。今週のスペインに向けて、リーダーは何を思う――。

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 最初にセカンド・ドライバーのシートから降りざるを得なかった井出有治のことについて書いておきたい。

 彼が乗れなくなった経緯については我々のチームの広報資料で発表した通りだが、井出自身は今回の顛末(てんまつ)をよく分かっていなかった。それでニュルブルクリンク(ドイツ)のモーターホームまで来てもらって、ボクから「FIA(国際自動車連盟)からこういうアドバイスがあってこうしたよ」と、事情を説明した。井出は「そうですか、すいませんでした」と言っていたが、今後の彼のことについてはチームとしてやれることは精いっぱいしてあげたいと思っている。

 ただ、井出が今後再びF1のシートに着くために何時間テスト・ランすればいいのかといったことはボクらがハンドリングしていることではなくて、FIAの出方次第。それがないとチームとしても対応のしようがない。だから井出の今後に関しては“待ち”の状態である。

 今週末はバルセロナ(スペイン)でレースがあるわけだけど、井出がサーキットに来るかどうかは分からない。ニュルブルクリンクで「どうしたらいいですか?」と聞いてきたけど、来るなとは言ってない。自分が来たきゃ来ればいいわけで「気持ちがつらくなきゃおいでよ」と言っておいた。井出は我々のチームの一員であって、クビにしたわけではない。

 さて、レースはサンマリノに引き続き2台ともリタイアとなってしまった。原因はモンタニも佐藤琢磨もハイドロリック系のトラブルで、オイルがリークしていたようだ。2戦連続で2台とも完走できなかったのはすごく残念なことで、いまのマシン・カラーリングにしてからどうも調子がよくないようだ。それは冗談にしても、ヨーロッパ・ラウンドに入って、ミッドランドでさえ新車を投入して来ているのに我々がそうできないのはホゾをかむ思いで、しかし、発足したての貧乏チームとしてはここはガマンするしかない。特に琢磨がスタートで20番手から12番手までジャンプアップする素晴らしいダッシュを決めてくれただけに、実に悔しい。自分が琢磨だと考えてみれば、よけいそれが実感できる。

 一刻も早く琢磨の頑張りに応えられるクルマを用意してあげたいが、いまの進行状況から考えると第8戦のイギリス・グランプリでの投入は難しいかもしれない。そのタイミングを外すと次が北米2連戦となって新車デビューにはふさわしい環境ではないから、可能性として11戦目のフランス・グランプリにズレ込むこともありうる。

 モンタニは、初めてのグランプリにもかかわらず予選から冷静に走ってくれた。ただ次戦スペインも彼でいくかどうかは現時点(決勝直後)では決定事項ではない。また、サードカーを投入するかどうかについても決まっていない。仮にサードカーを走らせるにしても、ドライバーの人選はこれから。ちなみに、その候補の中に日本人ドライバーはいない。

 これで5戦が終わったが、1戦1戦、あらゆることに何かしら問題が発生して平和なレースなど1回もなかった。しかし、これこそがF1なのだと思う。スペインでもめげずレースに取り組んでいく。(鈴木亜久里)