待望の新車デビュー〜すべてがシェークダウン・テスト
第12戦ドイツGP編
新たな門出を祝ったスーパーアグリ。琢磨を中心に左近(中)、サード・ドライバーのF・モンタニ(左)とスタッフが雄叫びを上げたが……(カメラ=川柳晶寛)
新たな門出を祝ったスーパーアグリ。琢磨を中心に左近(中)、サード・ドライバーのF・モンタニ(左)とスタッフが雄叫びを上げたが……(カメラ=川柳晶寛)
 待望の新車「SA06」の初陣は2台そろってリタイアという苦い結果になったスーパーアグリ。鈴木亜久里代表にとっても期待と不安の渦巻くウイークエンドになったようだ。佐藤琢磨、これがデビュー戦の山本左近の戦いぶりをチーム・リーダーはどうみたのか――。

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 待望の新車SA06をこのドイツ・グランプリに用意できてまずはホッとしている。我々のように全従業員が120人程度の小さな会社では、予定の期日にキチンと新車を造り上げるということ自体が大変なことで、この新車も本来はフランス・グランプリにデビューさせる予定だったのだが、開発途中に風洞のムービング・ベルトが切れるなどのアクシデントがあって、とうとうシーズン折り返してからのデビューとなったわけだ。

 走り初めの金曜日は佐藤琢磨車、山本左近車ともに油圧系のトラブルが出てしまった。しかし、新車にトラブルは付き物なので、そのこと自体は心配していなかった。

 いちばん恐れていたのはドライバーから「前のクルマとあんまり変わりませんね」と言われることだったが、琢磨も左近も「リアが安定している」とフィードバックしてくれたのでひと安心。リアの安定、すなわち乗りやすいマシンにすることこそが新車の大きな目標のひとつだったのだ。そうでなければライバルと戦えない。

 土曜日は午前中の試走で左近が1分18秒台をポンポ〜ンと出してくれたのでビックリした。琢磨よりいいタイムを出したのだから、左近にはいい経験になったと思う。

 しかしセッションも残り2分となったころ、その左近が最終コーナーを後ろ向きに出てきたのには、もっとビックリ。スピンしながらクラッシュしたのには正直少しガックリ来たが、さほど大きなクラッシュではなく、予選は修理の時間がないのでスペアのSA05で走らせ、レースは再び新車に戻すことにした。ただし規則によりピット・スタートである。

 琢磨はモンテイロを抑えて予選17番手。前日に比べて着実にマシンがよくなっていることを実感。新車を出したことで、我々も確実にひとつ階段を上がったと思う。

 とはいえ、レースはそう甘いものではない。直接のライバルであるミッドランド(MF1)にしても、前戦フランスでこちらは旧車とはいえ周回遅れにされているので、我々としては戦績よりも新車の信頼性の確認をすることが先決だと思っていた。

 左近はたった1周でリタイア。原因は後輪を駆動するドライブ・シャフトのトラブルで、土曜日午前中のクラッシュで後輪をバリアにヒットした際に受けたダメージが広がったのだろう。せっかく初めてのレースなのにかわいそうなことをした。

 琢磨もリタイアとなったが、こっちはギア・ボックスからのオイル漏れでシフト・チェンジが不可能になってしまった。

 レースの結果に関しては仕方ないかな、と思う。何しろテストランなしでホッケンハイムに乗り込んで来たのだから、試走〜予選〜決勝のすべてがシェークダウン・テストみたいなもの。トラブルの発生は予測していたから、大きく失望したわけではない。

 実際に新車を走らせてみてペースが遅いことも分かった。琢磨は頑張ってくれたし、クルマのバランス自体はそこそこよかったのだが、1分19秒台から上がらなかった。1分18秒台でラップしなければレースにならないと思うから、次からはその1秒を探す戦いになる。(鈴木亜久里)