もっとマシン操作理解して〜粘走琢磨には感謝
第13戦ハンガリーGP編
内容はどんどんよくなっているとう亜久里代表(カメラ=川柳晶寛)
内容はどんどんよくなっているとう亜久里代表(カメラ=川柳晶寛)
 佐藤琢磨が新車SA06で初めて完走したハンガリーGPだったが、山本左近はスタート直後にリタイアと、うれしさも半分の鈴木亜久里代表。左近のリタイア原因を詳しく分析し、悩めるルーキーに対して初めて苦言を呈した。

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 まずは初めに、ホンダ第3期F1挑戦初優勝おめでとうございます! と言いたい。足掛け7年、115戦目の勝利は遅すぎた気もするが、レースは1回勝つと大きな自信になって一皮むけるものだ。今回の勝利がたまたまではないことを証明するためにもこれからもがんばってほしいし、ウチもいい刺激をもらったと思っている。

 今回は新車SA06の2戦目となったが、思った以上のトラブルが出た。土曜日午前中はモノコックからフロア(マシン底部の外板)が外れかかってしまい、その修理に時間がかかり、佐藤琢磨、山本左近とも必ずしも満足なセッティングで予選に臨めたわけではない。我々のように、そうそうたるワークス・チームに竹ヤリで挑むようなチームはまずトラブルなしに走り込めることが最低条件で、その辺の詰めはまだまだ甘い。しかし、毎戦毎戦よくなっていることは事実だから、同じトラブルを起こさないようにしたい。

 そんな中で琢磨も左近もよく走ってくれたが、当面の敵であるミッドランドのアルバースは抑え込めたもののモンテイロに先を越され、第2次予選まで進まれてしまったのは悔しかった。タイヤはむしろウチの方がソフトだったので、グリップもいいはず。新車を入れても予選でなぜミッドランドの1台に負けるのか、しっかり分析して次戦トルコに備えたいと思う。

 レースは雨で大混乱となったが、他の20台が軽い雨用のスタンダード・ウエット・タイヤを履いてスタートしたのに対し、ウチは大雨用のブリヂストン製エクストリーム・ウエザー・タイヤを装着した。20度という低い路面温度、乾いても滑りやすい路面ではエクストリームの選択は悪くなかったと思うが、実は今のSA06のフロント・サスペンションはキングピン角度(ハンドルが自然に直進位置へ戻るようにするピンの取り付け角度)が小さく、レイン・タイヤを履くとハンドルの手応えがなくなってしまうので、エクストリームで行ったという事情もある。

 たとえば、他のマシンが普通の自転車だとしたら、ウチのマシンは一輪自転車のようなものと言えば分かってもらえるだろうか。コーナーでステアリングを切り込むとスッと入るが、その先の手応えがなく、とめどないアンダーステアになってしまうのだ。これはフロント・サスペンションが4年前のものなのに、レイン・タイヤがとてつもなく進化したためのアンバランスから来ている現象で、その辺も次戦トルコから新しいフロント・サスペンションがくれば解決できるはずだ。

 レースはいいスタートを切った左近が1コーナーでコース・オフ、リタイア。ドライバーはブレーキがロックしたらエンジンが止まったと言っているが、どうもロックした時にクラッチを切ったのはいいにしても、ギアをシフト・ダウンせず5速ギアに入れたままだったことでエンストしたらしい。

 マシンにはエンジンのアンチ・ストール装置が付いているからなかなかエンストしないものだが、左近がクラッチを操作していることで、マシンのコンピューターがアンチ・ストール機能を起動しなくてもいいと判断したようだ。むしろスピンしてしまった方がよかったのかもしれない。そうしたらエンジンは止まらなかった。クラッチとミッションがどんな回路・手順になっているのか、左近はエンジニアとじっくり操作について話して理解してほしい。せっかくあれだけいいスタートを切れたのに、0周リタイアではもったいない。

 琢磨は粘り強い走りでSA06を初完走させてくれて感謝している。ただし、マシンにはレース中まずクラッチのトラブルが出て、次に3速ギアが使えなくなり、2速と4速で代用するしかなかったのがなんとも悔しい。そのことでペースが上がらなかったことは容易に想像できる。ホンダの優勝うんぬんより、ウチはギア・ボックスの信頼性をリセットすることに全力を挙げなければならないのだ。

 さて、次戦トルコまで3週間あるが、ボクは今週自分の会社が主催するカート合宿でレースをしなければならないし、20日は鈴鹿1000kmに参戦。社員より社長の方が忙しいという会社である。こんなことしてるF1チーム・オーナーって他にいるんだろうか? 次戦トルコGP、しっかり走り切りたい。(鈴木亜久里)