ダブル完走に手応え〜鈴鹿へ最終兵器投入
第16戦中国GP編
琢磨は失格になってしまったのの、ダブル完走にしっかりとした手応えをつかんだ亜久里代表(カメラ=川柳晶寛)
琢磨は失格になってしまったのの、ダブル完走にしっかりとした手応えをつかんだ亜久里代表(カメラ=川柳晶寛)
 佐藤琢磨は残念ながら失格になってしまった中国GPだったが、山本左近との初のダブル完走にしっかりとした手応えをつかんだ鈴木亜久里代表。いよいよ決戦の舞台、日本GPを迎えて初年度の総決算を見せる覚悟だ。ダウンフォースを増した最終改良を施して臨む最後の鈴鹿。すべては今週のために――。熱い思いがほとばしる。

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 モンツァの戦いの後、シルバーストーンで3日間のテストを行い、佐藤琢磨、山本左近の両ドライバーともに参加した。

 イタリアの手記でも書いたことだが、マシンが05から06Bに進化したのはいいとしても、毎戦のようにトラブルが多発、まともにレースらしいレースができない。そこでシルバーストーンで徹底的に“トラブルつぶし”をしようと思ったのだ。

 上海でまずうれしかったのは、初日の金曜日にサード・ドライバーのモンタニが7番手のタイムを出したことだ。しかもトップ・タイムを記録したA・ブルツ(ウィリアムズ)の1.7秒落ち。かつてトップから6秒も7秒も離されていたのが悪い冗談だったかのようで、SA06Bのパフォーマンスはこのタイムで再確認できた。

 しかしその半面、レギュラーの2人にギア・ボックスや油圧系のトラブルが出たのにはガッカリした。シルバーストーンのテストが結果につながってない。これは頭にくる出来事だった。

 ウエットとなった予選もやり方を間違えた。たった15分間、しかも不安定なウエットなのだから、セッション中赤旗が出ることは想定内。こういう状況で我々のような弱小チームが第2次予選に進むチャンスがあるとすれば、ピット・インすることなく走り続けることだと思う。ルーティン通り律義にタイヤ交換のためのピット・インをしていては自らチャンスをつぶすだけ。案の定、赤旗が出て、うまいタイミングでのアタックができなかった。これは次戦への大きな反省材料だ。何しろ鈴鹿の週末も不安定な天候が予想されるのだ。もっとも、わがチームもハンガリーでエクストリーム・ウエザー(大雨用深溝)タイヤ、上海ではスタンダード・ウエット(通称インターミディの晴雨兼用浅溝)タイヤを経験できたのは収穫。鈴鹿は晴れでも雨でも戸惑うことなく取り組む自信はできた。

 決勝レースは琢磨、左近の態勢になってから初(5レース目)のダブル・チェッカー。琢磨14位、左近17位というリザルトもうれしかったが、その内容が良かった。

 特に琢磨がドライ・タイヤに履き替えてから安定したいいラップ・タイムで走ってくれた。左近はドライ・タイヤへの交換が早すぎるミスが出たが、2台ともに大きなトラブルなしにチェッカーを受けられた。

 残念だったのはレース後、琢磨が青旗無視(通算2回目)でレースから除外されたことだが、実質的に2台完走に変わりはない。これを糧に鈴鹿では持てる力のすべてを出し切りたい。

 鈴鹿はホーム・グランプリであり、僕自身の思い入れも強い。仮に鈴鹿が今季ラスト2戦目ではなく序盤戦に位置していたなら、恐らく僕はSA06を造らなかったと思う。鈴鹿のすべてのファンのためにSA05を“無理くり”進化させたのだ。

 しかし、まだハード・ウエアの進化が足りないと思い、空力パッケージの“スーパーアグリF1鈴鹿スペシャル”を急ぎ用意した。これはダウンフォース量を5%アップすることを狙ったもので典型的なダウンフォース・サーキットの鈴鹿攻略をターゲットとした最終兵器。日本GPの週半ば、イギリスからスタッフが“手荷物”扱いで空路鈴鹿に運び込む。この後の開発はない。

 スーパーアグリ・ファンだけでなく、鈴鹿のファン、いや、日本のすべてのF1ファンに僕らの真の実力を見てもらいたいと思っている。壁は厚く、高い。しかし、今年これまで培ったノウハウのすべてを注入して、Q2(第2次予選)に進むことをまずは最初の大きな目標としよう。

 幸い琢磨も左近も鈴鹿は自分の“庭”で、金曜のセッティング出しから他チームを上回る仕事をしてくれるはず。鈴鹿でのスーパーアグリF1チームのサプライズに期待してほしい。(鈴木亜久里)