ヴィッツ試乗記
ヘッドライトがボディー側面まで伸び、ワイドなイメージとなった新型ヴィッツ(田村尚之撮影)
ヘッドライトがボディー側面まで伸び、ワイドなイメージとなった新型ヴィッツ(田村尚之撮影)
 欧州名の「ヤリス」で世界ラリー選手権(WRC)への挑戦を開始したトヨタ「ヴィッツ」がマイナーチェンジで生まれ変わった。フロントとリアのデザインを変更してスポーティーな印象になったが、中身の進化が侮れない。初めてのハイブリッド(HV)グレード導入に加え、ボディー強度を上げてサスペンションの調整を煮詰めた結果、復帰2戦目でトヨタに18年ぶりの勝利をもたらしたラリーカーの名に恥じない走りを手に入れた。

相当な走り込み

リアもランプがハッチバックに入り込み、横の広がりを感じる(田村尚之撮影)
リアもランプがハッチバックに入り込み、横の広がりを感じる(田村尚之撮影)
 やればできるじゃないか−。新しいヴィッツで走りだした直後にそんな独り言が漏れた。サスペンションがしっかりと動きながらも、コーナーで踏ん張る。日本の小型車では数少ない気持ち良い足回りだ。

 目立った変更点はボディーの溶接箇所を増やして剛性を増し、ショックアブソーバーと呼ばれるサスペンションの減衰装置を変えたぐらい。一見すると簡単なようだが、狙い通りに仕上げるには相当な走り込みが欠かせない。開発陣と走行テスト担当者がトライ&エラーを繰り返してようやくかたちになるものだ。

 豊田章男社長が「もっといいクルマづくり」を唱える社内のモチベーションは高く、見た目では分かりにくい開発でも地道に続けられる雰囲気になっているという。そうでなければ数を売ってこその小型車が、ここまで手がかかる走り味の調整にこだわれないだろう。

最量販「F」良い

 特に最量販グレードの「F」が良い。足回りやハンドリングなどの調整が「F」と同じで、女性ユーザーを狙った「ジュエラ」と合わせて販売台数の85%を占めると予想される。足回りは少し柔らかめな設定ながら、コーナーではしっかりと踏ん張り、狙い通りの場所を走れる。100kgほど重量が増すハイブリッドは穏やかな雰囲気となり、ワンランク上のような走り味だ。

初ハイブリッド

 今回の変更ではユーザーの要望に応え、初めてハイブリッドシステムを搭載した。基本骨格を共にするハイブリッド専用車「アクア」の排気量1・5リットルのシステムを流用しつつ、エンジンやシステム、バッテリーを改良。JC08モード燃費は34・4km/リットルでアクア(同37km/リットル)に劣るが、車重1090〜1190kgの区分ではクラス最高になる。燃費データは車重によって計測方法が異なり、ホンダや日産のライバル車の同じ車重区分のグレードと比較した場合でも勝っている。

 千葉県の田舎道で試乗した時、ハイブリッドは燃費が30km/リットルに迫りそうだった。発進のたびにアクセルを踏み込めば、こんな数字は記録できないが、かなりの実力派だ。速度にかかわらず気持ち良く走れるかは、見た目やデータでは分からないが、購入して長い付き合いになれば一番気になるところ。

 ヤリスのWRCデビューに合わせて1月12日に売り出された新しいヴィッツは、実用的な力を備えながらも走りは一級品。競技専用車と中身は違うが、どことなくラリーのイメージに近づいた。 (田村尚之)

 ★価格 ハイブリッドは181万9800円から223万7760円。ガソリンは排気量1リットルと同1・3リットルで、118万1520円から195万2640円。月販目標は9000台。

 ★GRMNも出るかも スポーツ性能に特化したトヨタの特別ブランドで新しいヴィッツにも限定生産で設定される見込み。GRMNとは「ガズーレーシング・チューンド・バイ・MN」の略。MNは「マイスター・オブ・ニュルブルクリンク」の意味とされる。また、今回の変更で全車ATになったが、今後スポーツタイプの「G’s(ジーズ)」でマニュアル車も登場しそうだ。