カムリ試乗記
低く構えた姿がかっこ良いトヨタの9代目「カムリ」。セダン復権の使命を託された(田村尚之撮影)
低く構えた姿がかっこ良いトヨタの9代目「カムリ」。セダン復権の使命を託された(田村尚之撮影)
 びっくりするほどかっこ良くなったトヨタ自動車の中型セダン「カムリ」(7月10日発売)は、1カ月で月販目標(2400台)の4倍を超える1万1500台もの受注が入るスタートを切った。セダンはメイン市場の北米でもスポーツタイプ多目的車(SUV)に押され、影が薄くなった日本市場を含めて巻き返しが急務。全てを一新した9代目のカムリは、セダンの人気復活という大きな使命を背負って開発された。

 開発者が「前例のない改革」と力が入る新型カムリはまさに生まれ変わった。低く構えたボディーラインは引き締まった肉体美のよう。デザインの良しあしは主観的なものだが、クルマにあまり興味がない人も「かっこ良い」と思うはずだ。

 通常の量産車では開発や生産コストを含め、ここまで凝ったデザインはなかなか採用しないだろう。ただし、劣勢気味のセダンの新たな魅力を提案する意気込みのトヨタは開発陣の尻をたたいた。外装デザインに限らず、内装やエンジン、足回り、乗り心地など全てを見直した。

 9代目となる新しいカムリは、「プラットフォーム」と呼ばれる車体の基本骨格を刷新するタイミングと重なったことが好影響。これから全面改良される中型車の基礎となる新たな基本骨格も開発するため、1車種の全面改良よりも多くの資源が投入されたようだ。スイッチに至るまで、ほぼ全ての部品をゼロから造り直したという。

 先代との大きな違いは、ボンネットで40ミリ、全高で25ミリも低くなったこと。それで食パンと陰口をたたかれた先代の印象を一新する低く構えた基本形を作れたが、背の高かった先代並みの室内空間も保った。室内高は全高と同じマイナス25ミリながら、前席の着座位置を低く後方にずらしたことなどで、窮屈な思いはしなかった。

 ダッシュボードの位置を下げたことも良い方向に働いた。ガラス面が増えて視界が広くなったことに加え、開放感も生まれた。ただし、ダッシュボード内には数多くの部品が入っており、限られたスペースに収めるのは至難の業。電子部品の開発担当者も「場所の取り合い」と漏らすほど。部品を一から造り直せたことで、サイズを小さくするなどして克服した。

 走り味は、ややアメリカン。新開発した2・5リットルの直4エンジンと、プリウスと同じハイブリッドシステムを組み合わせた味付けは米国仕様と同じのためか、低速からグッと力が出る豪快なフィーリング。ブレーキの印象もやや大ざっぱだ。

 燃費は良い。JC08モードは33・4キロ/リットル(Xモデル)で、田舎道を時速40〜50キロで走ると30キロ近いデータを示した。1時間ほどの試乗では20キロプラスα。

 開発者は「ボディー形状を考えず、とにかくかっこ良いクルマを目指した」という。発売1カ月の1万台超えは、ワンボックスやSUVに興味を抱く30代の心もつかんだのかもしれない。 (田村尚之)

 ★最新の安全装備 自動ブレーキと呼ばれる歩行者検知機能付きの衝突回避機能や、前車に自動追従する装置などを備えた「トヨタ・セーフティー・センスP」を全車に標準装備。後退時に後方を検知して自動でブレーキがかかる装置をトヨタブランドで初搭載(オプション)した。

 ★値段 Xは329万4000円、安全装備が充実するGが349万9200円で、Gのレザーパッケージは419万5800円。
独特なラインのインパネ回りは質感も高く、視界も良い(田村尚之撮影)
独特なラインのインパネ回りは質感も高く、視界も良い(田村尚之撮影)