「働くクルマ」の無骨さが若者のハート射止めた
本格的な4WDのハイラックスはこんな悪路もへっちゃらだ
本格的な4WDのハイラックスはこんな悪路もへっちゃらだ
 トヨタ自動車が13年ぶりに4輪駆動トラック「ハイラックス」の国内販売を復活させた。山中など悪路で作業するユーザーの声を受けた再販ながら、9月半ばの発売からすぐに年間販売目標の2000台を軽く超える注文が入った。それもユーザーの90%以上が20〜30代と、若者のクルマ離れが問題視される現代では珍しい現象も起きている。 (ペン&カメラ=田村尚之)

 13年ぶりに復活したハイラックスが思わぬブームを生んだ。悪路を走るクルマでも快適性が求められる現代では珍しいパートタイム方式の4輪駆動を採用し、5人乗りながら最大500キロも積載できる荷台も備える本格的な「働くクルマ」だが、その無骨さが若者のハートを射止めた。

 トヨタの開発者によると、注文した人は「95%が20〜30代の男性。カラーは黒が9割を超え、下取り車もない人がほとんど」と説明する。新たにクルマを購入する若者が中心という特異なクルマになった。

 ハイラックスは全世界で毎年100万台を販売する超人気車だが、日本では2004年に販売を終了した。世界基準のボディーサイズと日本で求められていた4ナンバーサイズに大きな差があり、04年までは2種類の車両を製作していたが、生産効率を優先して日本での販売を取りやめた経緯があった。

 しかし、国内でも復活を望む声は根強かった。新型が発売される直前の旧型の保有台数は約9000台。新しくても13年はたっているクルマを直しながら使っているという。トヨタもそんなユーザーの声を受け、何度が復活を試みたが、リーマン・ショックと同社が北米で見舞われたリコール問題で2度も流れ、ようやく今回の復活にこぎ着けたという。

 そんな経緯がありながら、発売直後に注文を入れたのは新しいユーザーばかり。開発者は「既存ユーザーは慌てていない。今乗っているクルマの状態を考えながら買い替えるのでは」と分析する。車検などのタイミングに合わせ、9000台がじっくりと新車に替わっていくと見据えた。

 乗り味は何とも懐かしい。2・4リットルディーゼルエンジンは滑らかでパワフルで、自動ブレーキなど最新の安全システムも備えている。立派な現代のクルマだ。ただし、荷台に500キロの荷物を積んでも走れる硬めの足回りや、ドライバーの意思で2輪駆動や4輪駆動を切り替えて悪路を乗り切るパートタイム方式の乗り味は、武骨で楽しい。

 ボディーサイズは海外仕様のままの全幅1855ミリで日本の狭い林道では持て余しそうだが、スキーやマリンスポーツを楽しむレジャー中心なら問題はないだろう。ちなみに燃費は時速60キロの巡航で車内の燃費計が13キロ/リットル前後を記録するも、思い切りアクセルを踏み込むと6〜7キロ/リットルになった。

 年間2000台程度のクルマは、世界販売台数でトップを争うトヨタにすれば意味は持たない。会社としての利益も微々たるものだが、日本の開発陣が意地になった。アジア地域で販売するハイラックスの開発や生産はタイに移ったが、開発陣が手弁当で日本仕様の開発を行ったという。

 復活を求める声がある限り、最善を尽くすのが使命と考えた開発陣の心意気が、2度の復活機会を逃したハイラックスをよみがえらせた。新規ユーザーの開拓も生み、3度目の正直は成功した。

 ★価格 2モデルで「X」が326万7000円で、アルミホイールなど装備が充実する「Z」が374万2200円。全車6速AT。
武骨なリアビューも意外とかっこ良い
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ダブルキャブの5人乗りなので利便性も高い
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