「ステップワゴン」試乗記
ハイブリッドも追加されたが、実力に見合った売上げにつながっていないステップワゴン
ハイブリッドも追加されたが、実力に見合った売上げにつながっていないステップワゴン
 人間同様、実力はあるのに世に認められない車もある。ホンダの主力ミニバン「ステップワゴン」もそんな1台だ。2015年に発売された5代目は、独創的で使いやすいリアゲートを備えながら販売はいま一歩。今年9月末の一部改良でハイブリッドモデルを追加し、全車に自動ブレーキなどの先進安全システムを搭載したものの波に乗り切れてない。10月末には初代からの累計販売台数が150万台を突破した人気ミニバンだが、世間の風は意外と冷たい。 (ペン&カメラ=田村尚之)

女性の反応イマイチ

リアドアの半分が横開きする便利なワクワクゲート。ゴルフバッグも縦にすっぽり入る
リアドアの半分が横開きする便利なワクワクゲート。ゴルフバッグも縦にすっぽり入る
 9月の一部改良の売りはハイブリッドモデルの追加。上級ミニバン「オデッセイ」に搭載する2モーター方式のシステムを搭載し、ひとクラス上の滑らかで力強い走りを与え、カンフル剤とするはずだった。

 確かに効果はあった。今年に入ってから月販3000台前後をさまよっていたが、10月は4737台、11月は5032台を記録して持ち直した。それでも、直接のライバルとなるトヨタのヴォクシー/ノアは販売網の影響もあるが、毎月1万台を軽く超えている。

 ミニバンはここ数年、国内で年間32〜34万台も販売され、ステップワゴンが属するミドルクラスはその半分を占める人気市場。ヴォクシー/ノアに加え、日産からも自動運転を売りにする「セレナ」が投入される超激戦区だ。

 ステップワゴンも3強の一角ながら、5代目はパッとしない。リアドアに採用した「ワクワクゲート」が本来の評価を受けていないことが最大の理由という。一般的な上下開閉に加え、ドアの中心近くで横開きする特殊な構造になっており、狭い場所で開け閉めするときにはものすごく便利な構造だ。

 ただし、デザイン的には左右が非対称になるなど好き嫌いが分かれ、特に女性からの反応が芳しくないという。開発者は「実際に使うと女性からも好反応なのですが、食わず嫌いと言うか…」と漏らす。一部変更で一般的なリアドアへの変更も検討されたようだが、利便性の高さは間違いなく「地道にいくしかない」と粘り強くアピールする覚悟を決めたという。

馬力も安全装備も◎

左右非対称で個性的なリアビュー
左右非対称で個性的なリアビュー
 追加されたハイブリッドモデルの仕上がりはかなり良い。低速からのモーターのアシストが力強く、ホンダいわく「3・5リットルのV6エンジン並」の加速をする。搭載モーターは184馬力相当の強力なもの。車格的には少しぜいたくな感じだ。

 小型車「フィット」などに搭載する1モーター方式でも間に合ったが、多人数乗車時の走りに制約がかかるという判断で2モーター方式を採用したという。走りにこだわるホンダらしい。

 アクセルを踏み込むとパンチの効いた加速をするが、低速域からジワッと力が出る様は高級車のよう。吸音材の多用に加え肉厚ガラスを採用するなどして静粛性も高く、室内外の質感も申し分ない。

 上級ハイブリッドの搭載で、値段が330万480円からとガソリンエンジンに比べて50万円近くも高く、ユーザーの投資に見合った付加価値として高級感を演出したようだ。「オデッセイのハイルーフ版のつもりで開発」したという開発陣の狙いは当たった。

 自動ブレーキなどの先進安全システム「ホンダセンシング」が全車標準装備となり、販売の8割を占める上級タイプ「スパーダ」には高速道路の渋滞時に前車を自動追走するシステムも備える。それでも声高にPRしないのがホンダ流という。

 車とはいえ、良いモノが正当な評価を受けてほしい。ホンダの肩を持つわけじゃないが、ステップワゴンがもっと評価されることを切に願う。

 ★価格 ハイブリッドは全モデルが装備充実のスパーダで、330万480円から355万9680円。ガソリンは245万5920円から366万5000円。

 ★燃費 静岡県の田舎道を20キロほど走った時は、車内の燃費計が15〜20キロを行ったり来たりで平均18キロという感じ。ガソリンターボは同条件で10〜15キロ。足回りは良く動き、乗り心地も良くロングツーリングでは疲れ知らずだろう。