2020年の創業100周年へ体制づくり
2018年WGP開幕特集(5)
モトGP1年目の昨季はけがで泣いたリンス(スズキ提供)
モトGP1年目の昨季はけがで泣いたリンス(スズキ提供)
 ロードレース世界選手権開幕戦カタールGP(18日決勝)を前に、最高峰クラスのモトGPクラスは大混戦の様相だ。2000年以来の世界チャンピオン誕生を狙うスズキは従来通り1チーム2台体制。ともに加入2年目となるアレックス・リンス(22)=スペイン、アンドレア・イアンノーネ(28)=イタリア=でタイトル争いを演じる。今季はホンダ、ヤマハ、ドゥカティ、アプリリア、KTMを合わせた6メーカー、24選手で激戦が展開される。 (遠藤智)

リンス、強気でチャンピオン狙う

エンジン規則の“縛り”が緩いスズキ。イアンノーネもタイトル争いに絡みたい(スズキ提供)
エンジン規則の“縛り”が緩いスズキ。イアンノーネもタイトル争いに絡みたい(スズキ提供)
 スズキが仕上げてきた2018年型の「GSX−RR」が好調だ。モトGP2年目のシーズンを迎えるアレックス・リンスも開幕前の合同テストで常にトップグループの一角に食い込んだ。

 「今年のスズキは、正しい方向に向かっている。テストでも実感できた。(会場だった)マレーシア、タイ、カタールとも戦闘力が高かった。一番の改善点は加速。それがタイム短縮につながった」

 好調の要因はエンジンの進化だ。加速と最高速が改善され、それを生かす車体とのマッチングも上々。相乗効果で、どのサーキットでも好調をキープした。「今年の目標は全てのレースで表彰台争いに加わること」と強気のコメントに徹した。

 昨季のリンスはけがのためシーズン前半の5レースを欠場した。が、後半は着実に力をつけてシングルフィニッシュの常連に定着。最終戦バレンシアGPでもベストリザルトの4位を刻み、表彰台まであと一歩のところまで迫った。最大の課題が「体力のなさ」だったが、今年は、スピードをキープする体力強化にも成功。チームのエースに浮上した格好だ。

 125cc(現モト3)、モト2ではチャンピオン争いに加わりながら、1度もタイトルを獲得できなかった。しかし、潜在的なセンスは抜群でスピードもある。そこを見込んでスズキがモトGPクラスに登用した経緯もある。

 今年のマシンは外観の変化は少ないが、エンジン、車体、空力面の全てが改善された自信作。チャンピオン争いに加わることはもちろんのことだが、2016年までスズキに在籍したマーベリック・ビニャーレス(現ヤマハ)に成績で上回ることも目標の一つだ。

 2020年はスズキの創業100周年。節目の年にタイトルを必ず取りたい。今年は大事なシーズンとなる。車両開発を担当する河内健テクニカルディレクターも「100周年でタイトルを取るために頑張っている。昨年は選手が2人とも入れ替わり、ゼロからのスタートで苦戦した。今年は徹底的にマシンを見直した。テストでその効果を感じた」と手応えをかみしめている。

 スズキの選手がタイトルを獲得したのは2000年のケニー・ロバーツJr.が最後。ライバルに追いつき、追い越せ。開幕戦から大暴れする。

イアンノーネ、エースの座は渡さない!

 モトGPで6年目のシーズンを迎えるアンドレア・イアンノーネはエースの座を絶対に明け渡さない姿勢だ。

 「最後のカタールテストでマシンは大きく前進した。ベースのセッティングは出たと思う。とりあえず、ここまでは順調。開幕戦が楽しみ」と成果を強調した。

 昨季のスズキは苦しいレース運びが続いた。チームメートのリンスが前半戦、けがで5戦を欠場。開発スピードが半減したことで車体の調整が進まず、車体の弱点も特定できなかった。ライバル陣営は複数チーム体制。ファクトリーチームのみで臨む陣営にとっては厳しい事態だった。

 昨季は決勝最上位4位と振るわなかったが、その結果、今季はエンジン開発で優遇措置が取られ、シーズン中も新仕様を投入することができる。開幕テストで仕様を確定させなければならないライバルに比べると非常に有利だ。

 イアンノーネにとってもカタールGPが開かれるロサイル・インターナショナル・サーキットは得意コース。チームをリードし、選手権もリードしていく。

ブリビオ・チームマネジャーは笑顔で総括

 スズキを率いるダビデ・ブリビオ・チームマネジャーは笑顔でテストを総括した。「開幕に向けて全てのテストが終わった。リンスの走りが安定していた。イアンノーネはまだやり残したことがあり、レースウィークに最後の調整をするが、心配はしていない」。好発進を期待した。

遠藤智の目

 復活ムードのスズキが、ホンダ、ヤマハ、ドゥカティの3強に加わってきそうだ。中でもリンスの成長は著しく、自身初の表彰台、優勝の期待が膨らむ。昨年、低迷したイアンノーネも復調。得意なサーキットでは圧倒的な速さを見せるだけに、今年はスズキ移籍初優勝の期待が膨らむ。2020年のスズキ100周年に向けた体制づくりも活発化することは間違いなく、ストーブリーグも大きな注目。

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 【カタールGP】開幕戦の舞台で、夜間照明によるナイトレースが名物だ。毎年、現地時間の夕刻から3クラスの決勝が開催される。会場のロサイル・インターナショナル・サーキットは首都ドーハの北に位置し、コース1周は約5・4キロ。メインストレートが1068メートルと長いのが特徴だ。

 初開催は2004年。もっかヤマハが3連勝中で出場メーカーでは最多の通算8勝。次いでホンダとドゥカティで3勝ずつを記録している。スズキは勝利がない。09年には中東では珍しい大雨で、モトGPのみが翌日にレースが順延となった。