スズキ モトGPで培った最新テクノロジーの融合「GSX-R」
昨年はヨシムラから出場した加賀山だが、今季は自身のバイクにまたがって雪辱を期す(いずれも竹内英士撮影)
昨年はヨシムラから出場した加賀山だが、今季は自身のバイクにまたがって雪辱を期す(いずれも竹内英士撮影)
 新型コロナウイルスの影響で、全日本ロードレース選手権(全7戦)は第3戦のスポーツランドSUGO戦(5月23、24日)が事実上の開幕戦になる。注目の最高峰のJSB1000クラスは、今季は新たな時代の幕開けを告げるラインアップが出そろった。ホンダ、ヤマハ、スズキ、カワサキの4メーカーの主力チームを率いる“総大将”の意気込みをご紹介─。まずはスズキの「Team KAGAYAMA」を率いる加賀山就臣(45)が登場。

『オレはヒール役でいい。誰もが楽しめる全日本を目指す』

 スズキのワークスライダーとして活躍していた加賀山は、英国スーパーバイク選手権(BSB)、スーパーバイク世界選手権(WSB)で8年間を戦った。闘志あふれるライディングと、幾度ものけがを乗り越えるガッツで「サイボーグ」と呼ばれ人気を誇った。世界から日本に帰ってきて、「海外で培った経験やノウハウを生かし、日本のレース界の発展に貢献したい」と一念発起。チームカガヤマを2011年に結成して全日本ロードに参戦を開始した。それから10年。今年は加賀山にとって節目の年になる。

 13年には念願の鈴鹿8時間耐久ロードレース(8耐)に参戦を開始。ロードレース世界選手権(WGP)元チャンピオンのレジェンド、ケビン・シュワンツを引っ張り出し、WSBで活躍した芳賀紀行を呼び寄せてドリームチームを結成して参戦、3位表彰台に上がった。以後もモト2ライダーのドミニク・エガーターやハフィス・シャーリンらを参戦させるなど毎年サプライズを巻き起こし、13〜15年は3年連続3位と表彰台の常連チームとなった。常に話題には事欠かない加賀山。昨年の全日本ロードでは、自身がライダーとしてヨシムラにレンタル移籍して業界をあっと言わせている。だが今季はチームカガヤマに戻り心機一転、勝負の年と位置付ける。

 「昨年の結果(ランキング7位)は願っていたものではなかったし、出し切れなかったという思いもある。それでも、最新のマシンを走らせているヨシムラで学んだことは大きい。今年はその経験を生かしたい。簡単ではないが、勝利もタイトルもあきらめずに挑む」と雪辱を期す。

 全日本は激動の時を迎えつつある。ヤマハファクトリーの中須賀克行がディフェンディングチャンピオンとして10度目のタイトルを狙うが、そのチームメートの野左根航汰が力を付けて中須賀に迫っている。一方、ホンダはHRCのエースの高橋巧がWSBに参戦するため、ハルクプロの水野涼の成長に期待がかかる。また、ケイヒンホンダから実力者の清成龍一が本格参戦を開始する。

 「いろんなキャラクターがあって、レースは面白くなると思う。オレはヒール役でいい。邪魔な壁になってレースを盛り上げたいだけ。JSB1000を戦う仲間たちと競って、お祭りの時のように、参加するライダーも応援してくれる観客も誰もが楽しめる全日本を目指す」ときっぱり。何よりも“業界”の発展を願う加賀山がJSBを引っ張る。
◆GSX−R1000R ABS 市販車はスズキのスーパースポーツのフラッグシップ。「The King of Sportbikes」の称号を目標に開発された。コンパクト化や空力性能を極限まで追求し、高いハンドリング性能、スムーズなスロットルレスポンスと優れた燃焼効率を備える。これを規定の範囲で改造したのがレース車両。
 30年以上にわたり、世界耐久選手権をはじめ、世界中のプロダクションレースで数々の勝利を得たGSX−Rの開発経験と、モトGPで培われた最新テクノロジーの融合を果たした。

★ST1000クラス 昨年までのJGP2クラスに代わって新設された、JSB1000に次ぐクラス。次代のJSB1000やWGPモト2クラスで通用するライダーの輩出をもくろむ。車両規定はST600車両をベースに、4ストローク4気筒のエンジン排気量は600〜1000cc。改造範囲の広いJSBに対してSTは改造範囲がかなり制限されており、タイヤもワンメーク(ダンロップ)。レース距離もJSBが70〜130キロなのに対してSTは70キロ程度になっている。

 初年度は長谷川のほか、元WGPライダーの高橋裕紀、尾野弘樹をはじめ、津田拓也、藤田拓哉ら元JSB1000のトップライダー20人がエントリーしている。
 チームカガヤマにとって、若手育成も重要なテーマのひとつ。今季から始まる「ST1000クラス」に、昨年の全日本JGP3チャンピオンの長谷川聖(19)を投入する。

 「通常ならJGP3からST600にステップしてJSB1000と段階を上がるけれど、長谷川は600を飛び越えていきなり1000に挑戦する。無謀なことかもしれないが、長谷川自身が望んだこと。そして、彼ならそれが可能だと思った」と、チーム代表でもある加賀山は言う。

 17年の開幕戦でJGP3参戦2年目の長谷川(当時16歳)は、自身初となるPPを獲得して脚光を浴びる。決勝では首位に立ちながら転倒してしまうが、加賀山はその走りが印象に残ったという。「そこから気にして見るようになった。実際に話をしたのは最近だけど、彼の熱意を買った。大排気量でも通用すると思うし、成長に期待がもてた」とのことでチームに招いたという。

 長谷川は4歳からポケバイに乗り、レース一筋に歩んで来た。かなりのレースマニアでもあり、幼いころからレースのビデオを熱心に見て、加賀山を応援していたという。
 「加賀山さんが全日本で加藤大治郎さんとバトルしていたころから見ています。“宇宙人”秋吉耕佑さんと“野生人”加賀山さんのコンビで、ヨシムラで鈴鹿8耐に出て優勝したビデオは何度も何度も見ました。チームカガヤマの8耐の活躍も見ています。だから、自分が憧れのチームに入れるなんて夢のよう」と目を輝かせる。秋吉と加賀山のペアが鈴鹿8耐に勝利したのは07年、長谷川は7歳になったばかりだ。

 「ST1000は考えていた以上に大変そう。まずスピード、パワーに慣れなければ」と期待と不安で頭がいっぱい。
 「スズキを代表するスターになってほしい。チャンスがあれば世界にも飛び出してほしい。だが、ST1000はトップ10に入るのも大変だと思う。そこで常にトップ5に入り、表彰台を狙ってほしい」と加賀山。

 自身はプレイングマネジャーとしてチームをまとめながらJSB1000で勝利を狙い、ST1000の長谷川を指導する。この新たな戦いに注目が集まっている。