2003年7月31日掲載
 インディカー第10戦ミシガン(27日決勝)に挑んだ高木虎之介(29)=モーナン=は予選11番手、決勝も6位に終わった。得意なはずのスーパースピードウェイに向けてシート位置を変更するなど万全な態勢を整えたが、予選セッティングを詰める最終プラクティスでマシントラブルが発生したうえ、判断が裏目に出たことが響いた。だが、レースに挑むまでの過程には大きな進歩があり、チームメートのアレックス・バロン(32)が勝っても悔しさはなかった。(虎之介=6位、優勝=アレックス・バロン)



 僕らはミシガンに向けてスーパースピードウェイのシミュレーションを繰り返し、ハードウエアで取り払える物はすべて取り払い、スピードアップを図る作戦を立てた。わずかに追い付けないチップガナシのスコット・ディクソンをポールポジションから引きずり下ろすため最後のドラッグ(空気抵抗)低減作業に取り組み、シートポジションを下げることにしたんだ。

 言葉にすると簡単でも、実際にやると難しい。ナッシュビル戦後の火曜まる1日かけてシートを作り直し、ペダルのポジションを変え、アイポイントをネックサポートぎりぎりにし、ヘルメット頭頂部が3cm以上は下がった。視界と操作性の影響、特にひじがハンドルを回したときにわき腹やモノコックに当たらないようにするのが大変だった。ドラッグの元となるモノコックトップのウインドースクリーン(風防)を外すのが第一目的だが、プラクティス初日で問題がないことが分かるまで心配という状況だ。以前のシートも十分低く作ってあり、新しいポジションだとブレーキペダルを操作すると足がつりそうになったが、「どうせブレーキは使わないだろ?」とメカニックが冗談を言うほどだった。

 実際に走ってみたら、スクリーンがなくてもヘルメットが風で振られることもなく、バイザーに当たる砂もひどくはない。これまでもヘルメットの揺れはアライさんに作ってもらったスポイラーでしのげたが、スクリーンを付けていた最大の理由はバイザーの汚れ対策。インディ500では6枚もつけている「捨てバイザー」がもたないほど砂とオイルで汚れたからね。新しいポジションではバイザーは汚れずヘルメットの揺れもない。当然ドラッグは減り、作戦は成功したはずだった。

 初日のプラクティス2回はすべてレースセッティングに費やした。ようやく見つけたGフォースのレースセッティングのスイートスポットをさらに的確にするためだ。ここのところ細かな開発パーツが投入され、課題のフルタンク時のオーバーステアはナッシュビル戦から良くなったが、まだ完ぺきではない。しかし、相変わらずグループ1で“掃除係”の走行から抜けられず、スーパースピードウェイでは欠かせない、他車と比較したダウンフォースレベルの見当がつかない。グループ1ではロジャー(安川)と引っ張り合うぐらいだが、グループ2の連中は1回目から2ワイド(横並びで走行)はもちろん7〜8台が連なり3、4ワイドでレースさながらに走り、相手の出方を見ながら空力パーツのホイールフリップやピッグズイヤーを付け替え、ドラフティング中でのハンドリングやスピードを試していた。

■作戦はペンスキーに勝っていた

 しかも、予選直前の最終プラクティスではギアボックスが壊れ、15分ほどで走行中断。予選セッティングを詰めることができず。レギュレーションでホイールフリップやピッグズイヤーは予選、レースとも同じ状態で使用するように決められており、予選出走時にレースのダウンフォースを決めなければならない。長いミーティングの末、アレックス(バロン)はローダウンフォース仕様、僕はハイダウンフォース仕様で走ることになった。ここまでやったレースセッティングで、路面が悪い状態ではハイのほうがバランスが良かったからだ。僕はレースは2つのサポートレース後に行われるために路面は汚れ、気温も上昇してコース状況は悪いと判断した。

 予選ではチップガナシが取り組んでいた独特のギアリングを取り入れたのも裏目に出て、トップから0・3379秒差の11番手。予選セッティングができなかったから仕方がないが、これで序盤にトップグループのドラフトに潜り込めなくなった。

 レースではドラッグが多すぎて序盤はスピードが伸びず最下位近くまで落ちた。それでもセッティングは路面の悪い状態に合わせてあったのでペースは徐々に上がり、ローダウンフォース仕様の連中を抜き、燃費とピットワークの良さですぐに7番手までばん回。2回目ピットの後には6番手のアレックスをかわすこともできた。スピードは上がらなくとも上位に行けそうな感じもあったが、このあたりから路面コンディションが急激に良くなった。

 フラフラしていたローダウンフォース仕様の連中のペースが上がりだし、僕はじっくり走る以外に手がなくなった。トニー(カナーン)も僕のポジションまで下がってきた。セッティング失敗の口だろう。

 その後はイエローコーションが続き、リスタート直後にダッシュをかけてトップの(サム)ホーニッシュJrに近くまでからんで3〜4台のドラフトに引っ張ってもらおうと粘ったが、単独走行になると失速して結局は6位でゴール。ピット作業でチップガナシの2台を抜くなどチームも頑張ってくれたが、今回はこれが精いっぱいだった。グループ1出走という難しい条件の中、エンジニアと考え抜いて決めたセッティングだから不思議と悔しさはなく、同じレイアウトのフォンタナに向けて良い勉強になったと思える。何より理にかなったセッティングが進められ、アレックスが勝つなどチーム戦略はペンスキーやチップガナシにも勝っていたと思えるからだ。

 次は「もてぎ」タイプのシフトダウンとブレーキングのあるセントルイス戦。初めて走るコースだが、P8に終わったもてぎの雪辱戦といきたいところだ。