2003年8月21日掲載
 ダラーラに乗り換えて2戦目のインディカー第12戦ケンタッキー(17日決勝)で、高木虎之介(29)=モーナン=は強烈なパフォーマンスを演じた。決勝ではマシン状態がしり上がりに良くなり、トップを快走するなど一時は表彰台どころか初勝利も望める展開だった。が、2回目のピットを前に何とガス欠――。何とかリタイアは免れたが、またもや“厳しい現実”が……。虎之介が痛恨のレースを振り返る。(虎之介=18位、優勝=サム・ホーニッシュJr.)



■予選は良くやった

 ダラーラで2戦目のレース。前戦ゲートウェイに続き2日間イベントなので、限られた時間を最大限有効に使えるよう、走行メニューなどはエンジニアとミーティングを重ねて万全の状態で臨んだ。予選出走順も19番目を引き当て、プラクティスのグループ分けもグループ2での出走となり、追い風が吹く。いいデータを集めるには、コースがきれいな状態であるにこしたことはない。

 ケンタッキーのコースは、メーンストレートとT1からT2間にバンプがある。サスペンションのダンパーとスプリングが完全にマッチしていないと、ストレートでは乗り越える瞬間にリアタイヤが空転してレブリミッターにあたり、タイムロス、T1とT2ではクルマがスキップして壁側に向かっていく。そういった意味ではセッティングがとても難しい。ミシガンのようにダウンフォースを減らしてスピードを上げるだけというわけにはいかない。200ラップを安定して走れる“いいレースカー”に仕上げなければならない。

 そのため今回は予選セッティングにはあまり力を入れられなかったが、1回目プラクティスでGフォースで走ったテスト(6月20日)のベストと遜色(そんしょく)ないタイムを出し、Gフォースを使うチームメートのアレックス(バロン)を上回れた。

 予選はプラクティスのデータをもとにし、トップから0・25秒遅れの12位。ハンドリングは走るたびに良くなっているが、まだまだスピードは足りない。新しいシャーシを持ち込んでいるのだから仕方のないところか。アレックスが17位に沈んだところをみれば良くやっている方だろう。Gフォースだったとしてもトーマス(シェクター=予選7位)の前後あたりがいいところか。

■58周目ついにトップ

 決勝前のウオームアップでは初めてフルタンクで走り、24・7097秒とトップから0・3秒も遅れた。Gフォースにしておけば良かったかなぁ……という思いが脳裏を横切ったが、その考えはレースが始まったら吹っ飛んだ。

 スタート直後はタイヤのプレッシャー(内圧)が上がらず14番手まで落ちたが、正常なレベルとなると一気にペースアップ。一度はパスされた(ブライアン)ハータ、ケニー(ブラック)、ロジャー(安川)らを楽にパスできた。すぐにP10までばん回したところで上位陣のピットインが始まった。54ラップにトップの(サム)ホーニッシュJrとエリオ(カストロネベス)がピットインすると後続も次々と向かう。これで僕の目前はガラ空きとなり、チャンス到来。燃料をセーブしていたのでまだ余裕があり、燃料をフルリッチ(パワーが出る状態)にして一気にペースを上げ、58ラップ目にトップに立ち60ラップまで引っ張ってピットイン。給油には多少時間が掛かったが、P9でコースに復帰した。

 チームメートのアレックスらとバトルをしているうちに2回目のピットインが近づいてきた。この時点で僕はトップをいくホーニッシュJrとほぼ同じラップタイム。1ラップを常に全開で走れるほど調子が良かった。Gフォースだと状況でハンドリングが大きく違い、ここまで安定して走れなかった。ダラーラはタービュランス(乱気流)の中でも単独走行でも安定したハンドリングだ。

■抜群のピット作業

 ところが121ラップ目のメーンストレートでピットに呼ばれた直後にガス欠となりエンジンストップ。なんとか惰性でピットまで戻れたが、その間に致命的な5ラップもダウン。2回目ピットストップ開始前で目前にしたトニー(カナーン)を、このピットでパスしようと思っていたのに……。悔やんでも仕方ないので気持ちを切り替え最大限のポイントを取るため、前走車を抜いていくことに集中した。僕のダラーラは悲しくなるくらいハンドリングが良く、前走車をハイサイドからでもローサイドからでも抜いていける。『これがトップ争いだったら』という感じだった。

 147ラップ目にケニーのマシンが燃えてイエローコーションとなると、上位は一斉にピットイン。僕もこのグループにまじってピットへ向かったが、抜群のピット作業でランク上位のドライバー全員を抜いた。この中にはホーニッシュJrも入っていて、ここで1ラップをばん回。余りに完ぺきな作業だったので、4周遅れという身がなおさら悲しくなってきた。今回は極限まで燃費を絞り、最後のピットインをだれよりも短い時間で済ませて順位を上げる作戦だった。F1なら予選が遅かった時のフェラーリ&M・シューマッハーのような戦略。予選12位からうまくいけば、ホーニッシュJrは無理でも3位のハータから6位の(アル)アンサーJrまでは十分に射程圏内だった。

 しかし、ダラーラに変更した2戦目で、Gフォース以上の可能性があったレースをしたのは確か。終盤は周回遅れながらトーマスやジル(ド・フェラン)といった速い連中を抜くこともできた。結果には結びつかなかったが、短期間でダラーラをここまでの戦闘力に仕上げてくれたチームには本当に感謝している。次のナザレスは今季最後のショートオーバル。不利なグループ1でのプラクティス出走になりそうだが、3日間イベントなのでじっくりセッティングを考える時間がある。正直、期待している。