2003年8月28日掲載
 インディカー第13戦ナザレス(24日決勝)の高木虎之介(29)=モーナン=は屈辱の予選最下位を喫した。ダラーラシャーシで3戦目、初めてのショートオーバルというデータ不足がたたった結果だが、Gフォースにスイッチした決勝では巧みな戦略を駆使し、トップ争いの可能性すらあったという。最後は電気系統トラブルでリタイア(14位)に終わったが、大ピンチにもめげず最後まで勝負への執念を燃やし続けた姿はあっぱれだ。奮闘の一部始終を――。(虎之介=14位、優勝=エリオ・カストロネベス)



■変則的なコース

 ナザレスは2年ぶりだ。初オーバルレースがここだったから、何だか懐かしい。テストでも走っているからコースを知らないわけではなかったが、再確認のため車検日にレンタカーで走ってみると意外にトリッキーなコースなんだなぁ〜と改めて感じた。路面のアンジュレーション(うねり)、バンク変化、そしてバンプもオーバルとしてはかなり独特でロードコースのようだ。今回の下見走行でそんなことに気付いたのは、当時はCARTに慣れるのに必死で視野が狭かったのかもしれない。といってもほんの2年前の話なんだけどね。

 1日目のプラクティス出走順はエントラントポイント順に分かれたのでコース清掃係の第1グループだったが、予選出走の抽選は13番手スタートと悪くない。最初の6台くらいまでがサポートイベントで変化した路面の影響を受けるからね。2日目プラクティスは予選出走順で分かれるので、僕はグループ2。ハンディキャップはある程度克服できそうだ。

 そんなこんなで雰囲気良く初日に臨んだ。ところがそう簡単にはいかないのが現実。世界レベルのレースは甘くはない。プラクティス1のグループ1は本当にコースが汚く、クルマがスライドしまくってセッティングがなかなか進まない。そのうえクラッシュ車両の排除で15分ほどロスし、走行時間が実質的に30分ほどに短縮された。一方、グループ2は通り雨で一度中断となり、雨が上がった後にセッションやり直しで45分きっかり走り、雨の前と合わせて1時間近くも走り込むことができた。トップタイムは僕より1・8秒以上も速い。ここまで離されるとさすがに厳しい。

 まあ、グチッていても始まらないので、ランチを取る間も惜しんでエンジニアとデータを分析して2回目へ。またまたサポートレースで路面が悪化。走り始めはかなりてこずったが、終了までには何とかセッティングも進み1回目より1秒近く短縮できた。しかし、グループ2の連中は早くもレースセッティングに突入。僕らも進んだが、トップグループははるか先。午前中のトップ5とケニー(ブラック)、ロジャー(安川)らはセントルイス後にここでプライベートテストを行っているという。トリッキーな1マイルオーバルでは、テストでのデータ蓄積は大きなアドバンテージとなるものだ。

 予選日はグループ2からの出走だが、プラクティスは30分しかない。前夜5時間ものミーティングで考えたセッティングが当たるか――という感じだったが、良くなったもののトップとの差がありすぎ。ターン3でのアンダーステア(曲がりにくい状況)がどうしても直らない。結局大きな改善もなく予選に臨み、トップから1秒遅れの最下位となった。

■優勝目指す作戦

 ダラーラで3戦目だが、ショートオーバルは初めて。予想以上にセッティングが遅れてしまった。新しいパーツを投入し続けていることもあり、テストなしで本番というのはさすがにつらい。シミュレーションはちゃんとできているが、タイムには結びつかない。基本的には正しい方向にいっているはずだが、いかんせん時間がない。結局レースはGフォースに戻す決断を下した。

 最後尾スタートだからといって、僕らは決してレースをあきらめたわけじゃない。あくまで上位入賞、優勝すら目指す戦略を立てた。ショートオーバルで予定ピットインは2回。タイヤは70周以上もたせなければ。もちろん先頭からラップダウン(周回遅れ)されることも計算に入れ、これを逆手に取って順位を上げる作戦だ。ここは追い抜きが難しいサーキットだから。

 いざ本番。スタートではタイヤが冷えているうちに数台かわし、18ラップ目に先頭の(スコット)ディクソンがきたのですぐに先行させた。そして追走。ディクソンが周回遅れをパスするすきに僕も一緒にパス。そうして43ラップ目までに16番手まで浮上。48周目にイエローとなり、僕を除く全車両がピットへ向かった。ここでラップダウンを解消して15番手。僕は89周目まで引っ張りピットイン。2ラップダウンとなったが、これで僕のゴールへのウインドーは140ラップ前後に開くはずだ。123周目にクラッシュでイエローとなったときに再びトップと1ラップダウンとなり、13番手に浮上した。

 トップグループはもう1回給油が必要だが、1回イエローがあれば燃費を絞ってゴールまでたどり着ける。僕はもう1回入らないとダメ。そうこうしているうちに165ラップ目にイエローが出た。抜けないナザレスでの順位変動を嫌うトップグループは動きづらく、僕を含めた4台のマシンがピットへ向かった。僕は1ラップダウンのままだが、このままグリーンが続けばピットインのあやでトップ争いができる可能性も出てきた。が、万事休す。185ラップ目のターン3立ち上がりで一瞬エンジンが止まり失速。この時は息を吹き返したが、イエロー中の205ラップ目に再びストップ。電気系統のトラブルだ。粘って、粘って、あきらめないで限りなく上位フィニッシュを狙ったが、無念のリタイアに終わった。

 このリポートが掲載されるころには、僕はシカゴランドでテストをしているはずだ。8月上旬からの4連戦というハード日程に一区切りがつき、残りは3レース。いよいよハイスピード・オーバルでラストスパートだ。もちろん初優勝を目指し、これまで以上に集中して臨むつもりだ。