2003年10月17日掲載
 渡米3シーズン目、インディカー初年度を締めくくる最終戦テキサス(12日決勝)に挑んだ高木虎之介(29)=モーナン=は7位フィッシュ、年間ランキング10位で今季を終えた。シーズン序盤は度々予選上位を記録したが、念願の日本人初V奪取に向けてマシンセッティングの試行錯誤を繰り返した後半は失速。ドライバーの速さはアピールできたものの頂点に立つ難しさを実感した1年でもあった。(虎之介=7位、優勝=ジル・ド・フェラン)



■今季を象徴

 テキサスは大接戦の末、ケニー(ブラック)とトーマス(シェクター)が大クラッシュ、イエローによるゴールとなった。幸いにも僕はクラッシュに巻き込まれる寸前で今季最後のレースを7位で終えることができた。シーズン後半はレース中のシャーシパフォーマンス向上を求めた試行錯誤が続き、予選で苦しんだが、何とか粘ってレースをまとめることができたと思っている。今季を締めくくる一戦も、そんな状況を象徴していた。

 最悪だった第15戦フォンタナ(9月21日決勝)から、テキサスで再び競争力を取り戻すにはテストをやるのが一番だが、規定のタイヤ数をシカゴランドのテストで使い切り、サスペンションデータをち密に解析することしかできなかった。しかし、フォンタナのレースデータを解析すると、序盤にトップを走行したトーマスと、僕の3、4セット目のタイヤでの単独走行タイムがほぼ同じ。セッティングを大幅に外したわけではなく、タービュランス(乱気流)中の不安定さに耐えるノウハウ、コーナーで失速しないノウハウ、これが同じGフォースを使うチップガナシとモーナンの違いだった。このわずかな違いが、彼らとの最終結果の違いに表れた。

 この問題はインディ500直後に気づいたが対策に時間を取られ、不振の原因にもなった。ダラーラへのシャーシ変更も対策のひとつだが、時間が足りなかった。決勝だけに焦点を絞る戦略はハイスピード化した今のインディカーでは難しく、予選のノウハウがないダラーラではいくら決勝がよくても結果には結びつかなかった。ところが、前半8戦の平均順位が10・875位で、後半8戦は10・750位。後半戦の方がわずかながらよく、レース途中で走行をやめたのは、それぞれフェニックスとナザレスの1回のみ。後半ではガス欠で順位を落とすミスもあり、内容的には意外にも後半の方が濃かった。イメージが悪いのは予選順位が低かったせいだろう。

 原因を究明し、テキサスのプラクティス1はスコット(ディクソン)に続いてP(ポジション)2。順調だったが、2回目にはセッティング不発の原因を特定するためモーリス・ナン(オーナー)の指示で、フォンタナ戦のセッティングを再確認している間にライバルに先行され、予選は完全にスピードで負けてしまった。全くダメなわけではなく、ウオームアップではスコットとサイド・バイ・サイドを全周にわたってできるなど大幅な改善が施されたが、5〜6台の大ドラフト(前車の後について空気抵抗を減らす状況)に入ると、Gフォースはあっという間にグリップを失い、壁に迫っていく――。

■いきなり目前に炎

 レースではドラフトの中で終始フラフラしながら最後まで機をうかがう作戦。ピットストップやイエローのリスタートで順位を上げ、コース上で抜き返されることを繰り返した。そうこうするうち、ゴールも近くなった188周目のバックストレートでいきなり目前に煙と炎が。ケニーとトーマスの大クラッシュ!

 次に見たものはエンジン。それが左フロントに当たり、マシンから何かが飛んでいった。スポッターの有松(義紀)さんから「大丈夫か? 左フロントウイングにダメージだ」と無線が入り、ピットからも「左フロントタイヤがスローパンクチャー」と連絡が入った。僕も「サスにヒット、ダメかも……」と連絡したところ、「ピットに入ったら順位が落ちる。タイヤを引きずってでもそのまま走り続けろ!」との指示。イエロー中なのでとにかく走り続けた。その間にも有松さんが「(スコット)シャープがイエロー中に虎を抜いた。オフィシャルにリポートしろ」と、ピットに怒鳴っている。僕のマシンはラジエーターが破片を拾ったようで水温が上昇、警告灯が点滅し始めた。スピードを上げてエンジンを冷やしたいけど、タイヤはパンクしているし……。

■スポッター席で怒声

 インディカーのルールでは、走行状態でゴールした順位が覆ることはない。が、ゴールするまでに僕がシャープの前に出ろという指示は出なかった。オフィシャルはケニーの救出で精いっぱい。イエロー中の追い越しなどに時間を割くヒマはなかった。

 レース後に聞いたところ、レースコントロールがスポッターの有松さんに「タイヤがホイールから外れそうだからタカギをピットインさせろ!」と怒鳴っていたとか。有松さんはそれを無視していたという。今回は序盤からいろいろ小競り合いがあり、スタンドの上にあるスポッター席は最初からケンカ寸前の怒鳴りあいだったという。

 こうして左フロントがボロボロになりながら何とか7位でゴール。年間ドライバーズランク10位が確定した。アメリカに活動拠点を移して3シーズン目だが、今年も日本人の記録を更新することはできた。これもアメリカでの活動をずっと支えてくれているトヨタ自動車、パイオニア、デンソー、東郷製作所、TAKAGI INDUSTRIESのスポンサーさんのおかげ。もちろんファンの皆さんの声援も大きな励みになっている。本当にありがとう。

 最後になるが、ケニーがクラッシュで受けたダメージは深刻な状況だ。いろいろな部分の骨折が判明しており、一刻も早い回復を祈るばかりだ。