昨年のルマンで初優勝したトヨタ。右から中嶋一貴、セバスチャン・ブエミ、フェルナンド・アロンソ、トヨタ自動車の友山茂樹副社長(トヨタ提供)
昨年のルマンで初優勝したトヨタ。右から中嶋一貴、セバスチャン・ブエミ、フェルナンド・アロンソ、トヨタ自動車の友山茂樹副社長(トヨタ提供)
 6月は24時間レースの集中月間だ。1〜2日に静岡県の富士スピードウェイで復活2年目となる「富士スーパーテック24時間レース」が開催され、15〜16日に世界3大レースの1つに数えられる「ルマン24時間レース」(仏サルトサーキット)、1週間後の22〜23日には「ニュルブルクリンク24時間レース」(独ニュルブルクリンク)と続く。耐久力もマシンの性能を測るバロメーター。昼夜を問わない戦いが今年も熱い。

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ルマン24時間 トヨタ、日本車初の連覇に挑む

ルマン連覇を狙う8号車のトヨタTS050ハイブリッド(トヨタ提供)
ルマン連覇を狙う8号車のトヨタTS050ハイブリッド(トヨタ提供)
 今年で87回目を迎える伝統のルマンではトヨタの連覇がかかる。今季の世界耐久選手権は変則開催で昨年から足掛け2年にわたるスーパーシーズン。昨年のルマンは第2戦、今年は8戦目の最終戦としてシリーズに組まれた。

 「(第7戦スパで)チームタイトルを決めることができた。次回は、最大目標のルマン連覇とドライバーチャンピオン獲得の大仕事が待っている。それがどれだけ困難なものか誰よりも心得ていると思っている」。昨年のレースをトヨタ8号車の一員として初制覇した中嶋一貴(34)は並々ならぬ責任感を抱きながら本番に臨む。

 最高峰のLMP1クラスは、同じハイブリッドエンジン車の「トヨタTS050ハイブリッド」を駆る小林可夢偉(32)のトヨタ7号車との一騎打ちとなりそうだが、非ハイブリッドのプライベートチームも虎視眈々(たんたん)とトヨタ打倒を狙っている。本番前に車両性能を均一にする性能調整が入る可能性もあり、予断を許さない。

 一貴のチームメートでもある元F1王者のフェルナンド・アロンソ(37)=スペイン=にとっては今回がトヨタでの最後のルマン。世界3大レース制覇を懸けてエントリーした今年のインディ500(米インディアナ州インディアナポリス)では無念の予選落ちを喫し、汚名を返上したいところだ。

 サルトサーキットは市街コースを中心にした1周13・626キロのロングコース。昨年は24時間で5286・888キロを走破したが、毎年、マシントラブルが出場チームの命運を分ける。トヨタは日本車初の連覇に挑む。

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 GT車両によるLMGTEアマクラスには日本選手4人がエントリーした。2年連続出場となる石川資章(52)はオーナーチームのMRレーシングでの参戦。フェラーリ488GTEでWECにもフル参戦しており、初表彰台を狙う。

 初出場は3人。昨季までスーパーGTに参戦したカーガイレーシングはアジアンルマンでシリーズ制覇を果たして出場権を獲得。オーナー兼任の木村武史(48)と元F・ニッポン選手のケイ・コッツォリーノ(31)らで臨む。マシンはフェラーリ488GTEだ。

 Dステーションレーシングを立ち上げて国内レースに参戦してきた星野敏(58)は独デンプシープロトンとジョイントし、ポルシェ911RSRで出場する。「ルマンはあこがれのレース。出てみたかった」と思いをはせた。

ニュルブルクリンク24時間 初の総合Vへ!KONDOら参戦

5月18、19日に開催されたニュルブルクリンク24時間の予選レース(トヨタ提供)
5月18、19日に開催されたニュルブルクリンク24時間の予選レース(トヨタ提供)
 近年、日本人選手や日本チームの参戦が増えているレースがニュルブルクリンク24時間だ。初開催は1970年。かつては「世界一の草レース」とも呼ばれたが、今ではルマンに次ぐ認知度を誇る。

 レースの舞台は、市販車のテストコースとして利用されている北コースを含む1周25・378キロのフルコース。5月には前哨戦となる6時間制の予選レースが開催され、102台のエントリーを集めた。

 近藤真彦代表率いるKONDOレーシングは初参戦で、松田次生(39)、高星明誠(26)、藤井誠暢(38)の3人を擁して日産GT−Rで臨んだ予選レースでは総合17位。今季は年間選手権のニュルブルクリンク耐久シリーズにも参戦しており、藤井も「万全の準備で臨みたい」と意気揚々だ。

 レーシングプロジェクトバンドウも、チームノベルとのコラボで「レクサスRC F」で初参戦。吉本大樹(38)とドイツ人のトリオで総合20位と健闘した。

 トヨタ自動車が手掛ける「トヨタガズーレーシング」のチーム名で2台がエントリー。土屋武士(46)、蒲生尚弥(29)、松井孝允(31)、中山雄一(27)の4人組がレクサスLCで出場して総合24位。佐々木雅弘(43)らが駆るGRスープラは途中で燃料系のトラブルが発生。周回数が規定に足りず、完走扱いにはならなかった。同チームの田中英幸チーフメカニックは「通常の整備では見ないところで出たトラブル。24時間レースの前に見つけられたことは良かった」と話し、レース本番までに対策を施す。

 スバルワークスのスバルテクニカインターナショナルはスバルWRXでのエントリーで、予選レースには山内英輝(30)、井口卓人(31)らが出場し、ノートラブルで総合34位で完走。SP3Tクラスのトップチェッカーで、本番では通算6度目のクラス優勝の期待がかかる。

 日本車は総合優勝を遂げたことはなく、過去最多勝はBMW車の19勝。昨年はポルシェ911GT3Rで臨んだ独マンタイレーシングが制した。今年はどのチームがレースを制するか。

富士24時間 GTネット大会連覇へまっしぐら

昨年の富士24時間レースのスタート(多賀まりお撮影)
昨年の富士24時間レースのスタート(多賀まりお撮影)
 富士24時間レースは日本で唯一の24時間レースだ。富士スピードウェイでは1967、68年に24時間レースを開催しており、昨年、スーパー耐久の1戦として復活。近隣の住民への騒音対策として競技車両にサイレンサーを装着して排気音を抑えている。

 GT3規定の車両で争う最高峰のSTXは4台がエントリー。アストンマーティン・ヴァンテージでシリーズ開幕戦(三重・鈴鹿)を制したDステーションレーシングは出走しておらず、2連覇がかかるGTネットの日産GT−Rが有利なレース運びをしそう。

 同じ日産GT−Rで参戦のタイロクレーシングからは本山哲(48)が選手登録された。開幕戦ではSTZクラスのテクノスポーツからスポット参戦し、ジネッタG55GT4を駆る予定だったが、直前の専有走行でチームメートがマシンを大破させてしまい、予選、決勝を走ることができなかった。

 本山は昨季でスーパーGTのGT500クラスからの引退を発表したが、「まだ乗ってほしいという声が多い。本当にありがたいこと」と今回も助っ人役を買って出た。仏ルマン24時間レースには4度出場の経験もあり、知恵袋としてチームをけん引していく。

 ST4クラスでは今季からトヨタ86で参戦するルーキーレーシングも見逃せない。スーパー耐久シリーズの開幕2戦にモリゾウの登録名でトヨタ自動車の豊田章男社長(63)がエントリー。富士24時間については出場に関する正式発表はないものの、「耐久レースを通じて、『もっといいクルマづくり』をしたい」としており、まずは5月31日の予選に登場するかが注目される。
スーパー耐久第2戦では豊田章男トヨタ自動車社長もルーキーレーシングのトヨタ86をドライブ(多賀まりお撮影)
スーパー耐久第2戦では豊田章男トヨタ自動車社長もルーキーレーシングのトヨタ86をドライブ(多賀まりお撮影)