2016年WEC第7戦「富士6時間」特集
過去の母国大会で抜群の強さをみせてきた中嶋一貴=9月2日、第5戦メキシコで(トヨタ提供)
過去の母国大会で抜群の強さをみせてきた中嶋一貴=9月2日、第5戦メキシコで(トヨタ提供)
 耐久レースの世界最高峰シリーズ、世界耐久選手権(WEC)が今年も静岡県小山町の富士スピードウェイで第7戦(10月16日決勝)として行われる。

      ◇      ◇      ◇

 今年の一貴はツキに見放されている。“ゴール3分前の悲劇”として語られる、6月の仏ルマン24時間レースでは初制覇に突き進みながら、残り1周でまさかの車両トラブルに見舞われてストップ。悔し涙を流した。

 「今年はルマンを含めた全てのレースでトラブルやハプニングが起きている。富士では良いレースがしたい」

 ルマンに限らず第2戦スパではエンジンが壊れ、直前の第6戦アメリカでもターボ関連の不具合に苦しんだ。なぜか一貴が乗り込む5号車に問題が集中し、ここまで2度の5位が最高でランキングも13位に低迷している。だからこそ日本で開かれる富士では納得できる走りがしたい。

 富士では当時は幸運に恵まれ、初開催だった2012年から2連勝を飾った。3年目の14年も同じトヨタのアンソニー・デビッドソン組に続く2位。昨年は車両の戦闘力不足で完璧な走りをしたものの5位に終わったが、過去の母国大会では抜群の強さを見せている。

 「ホームレースなので富士は特別ですね。今年もやってみなければ分からないものの、今までのレースよりは良い戦いができると思う。クルマのダウンフォース(気流で押さえる力)レベルもルマンに近いですし」

 トヨタは今年、参戦車両を全面改良した。悲願のルマン24時間制覇に狙いを絞り、トップスピードが伸びる「TS050HYBRID」を開発した。その狙いはずばりと当たり、ルマンでは決勝で抜群の速さをみせて初制覇目前まで迫って、車両開発の方向性は間違っていなかったことを証明した。反面、より多くのダウンフォースが必要なテクニカルなコースはやや不得手も、富士には1kmをはるかに超える長いストレートがあり、トヨタ車両のメリットを生かせる。

 「去年は勝つなんて言える状況ではなかったが、今年は展開次第で可能性はある。勝利を目標にやっていきたい」。これまでのうっぷんを晴らす、表彰台の頂を見据えている。

 富士はトヨタのホームコースだ。エンジンやハイブリッドシステムなどの心臓部を開発する東富士研究所(静岡県裾野市)は目と鼻の先。多くのファンからの熱い声援を背に走るだけに、ぶざまな姿を見せることはできない。