2016年WEC第7戦「富士6時間」特集
第5戦メキシコで疾走するトヨタ6号車(手前)と同5号車。ホームコース富士で勝利を目指す(トヨタ提供)
第5戦メキシコで疾走するトヨタ6号車(手前)と同5号車。ホームコース富士で勝利を目指す(トヨタ提供)
耐久レースの世界最高峰シリーズ、世界耐久選手権(WEC)が今年も静岡県小山町の富士スピードウェイで第7戦(10月16日決勝)として行われる。総合優勝を争うLMP1クラスにはトヨタ、ポルシェ、アウディが最新技術で開発した最新鋭のハイブリッド車両を投入し、頂点を懸けた争いを毎戦繰り広げている。母国大会を迎えるトヨタ・ガズー・レーシングはここまで未勝利ながら、不運の連続だった中嶋一貴(31)が乗る5号車、そしてしぶとくランキング3位につける小林可夢偉(30)の乗る6号車が優勝の二文字に向けて突き進む。

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トヨタの看板を背負って富士WEC参戦に燃える小林可夢偉(トヨタ提供)
トヨタの看板を背負って富士WEC参戦に燃える小林可夢偉(トヨタ提供)
 可夢偉は現在ランキング3位。初めてのLMP1クラスの挑戦ながら、F1時代をほうふつさせるしぶとい走りを続け、ここまで4度の表彰台に上る奮闘を見せている。

 「あまり相性が良くないと思っていたメキシコでも表彰台に上れたし、続くアメリカでも続けられた。でもまだ勝っていない」。ここまで予想以上の結果を残してはいるが、待望の勝利に手が届いていないことには納得がいかない。

 WECにはフェラーリのワークスドライバーとして、2013年にLMGTEプロクラスにフル参戦した。慣れないGT車両に苦しみながらも4度の表彰台に立ち、所属した「AFコルセ」のチームタイトル獲得に貢献した実績がある。

 だが、今年から初挑戦のLMP1車両はこれまで乗ってきた車両とは大きく違う。速く走ることはもちろんながら、使用できる燃料の制限が厳しく、ブレーキング時のエネルギー回生や徹底した燃費管理など、チームから指示された通りの精密な走りを続けなければならない。

 「LMP1で富士を走るのは初めて。13年は雨でほとんど走れずに赤旗終了だったので6時間耐久も体験していない。トヨタのドライバーとして初めて日本の世界選手権を戦うし、いろいろと楽しみなことが多い」

 トヨタのドライバー育成プログラムでF1まで駆け上がった可夢偉だが、2009年にトヨタF1からスポット参戦したのはブラジルとアブダビGPの2戦のみ。フリー走行を走った日本GPも鈴鹿サーキットだった。トヨタの看板を背負って世界選手権が開かれる、トヨタのホームコース(富士)での母国大会は初めて。気持ちが入るのは当然だ。

 「富士はルマン以降でTS050との相性が一番良い。予選一発はポルシェやアウディにアドバンテージがあるけど、レースではいい戦いができると思う。ランキング2位争いをしているので、何とか逆転したい」。ランク2位のアウディ8号車とは0・5ポイント差。自身のWEC初勝利でひっくり返す。

TS050開発者たちに報いる

佐藤代表「これまで以上の力強いパフォーマンスを」

 富士はトヨタのホームコースだ。エンジンやハイブリッドシステムなどの心臓部を開発する東富士研究所(静岡県裾野市)は目と鼻の先。多くのファンからの熱い声援を背に走るだけに、ぶざまな姿を見せることはできない。

 佐藤俊男チーム代表も「富士はトヨタにとってシーズンハイライトの一つ。熱心な日本のファンと接し、多くのトヨタ社員からの応援も受け、誇らしい気持ちでレースに挑める」。ルマン24時間に続く大切な一戦に気持ちを高まらせた。

 今年のルマンでは車両トラブルで初勝利を逃したばかり。母国大会では決して負けるわけにはいかない。東富士研究所の開発者たちはTS050を今年から投入するため、数カ月間も不眠不休に近い状態で踏ん張ってくれた。力強い姿を見せることで、そんな裏方の苦労に報いたい。

 「パワートレーン開発で大変な努力を続けてくれたメンバーの働きに報いる良い機会。彼らの働きがレースの現場で生かされていることを、多くの観客が見守る中で証明したい。これまで以上の力強いパフォーマンスを発揮する」と佐藤代表。2012年の初開催から3連勝を飾った得意の富士で、今年一番の戦いをすることを誓った。