ルマン24時間レース特集
トヨタの悲願、そして自らの雪辱を果たすためルマンの頂点を狙う一貴(いずれもトヨタ提供)
トヨタの悲願、そして自らの雪辱を果たすためルマンの頂点を狙う一貴(いずれもトヨタ提供)
 トヨタ・ガズー・レーシングが悲願の仏ルマン24時間レース制覇に挑む。1985年から挑戦を開始したトヨタは、プライベートチームへの車両供給を含めてこれまで5度の2位に甘んじてきた。今年こそ−の思いは強い。とりわけ昨年は中嶋一貴(32)が乗り込んだクルマが、残り1周まで首位を快走しながらトラブルに見舞われる悪夢を見た。何が何でも頂点を奪い取る決意だ。

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昨年ゴールまで1周で止まった一貴が乗るTS050(トヨタ提供)
昨年ゴールまで1周で止まった一貴が乗るTS050(トヨタ提供)
 図らずも悲劇の主人公になった一貴の雪辱戦が始まった。「チームとしての準備はしっかりできている。去年あんなことがあって、絶対に勝つ−という意気込みでクルマを作ってもらった」。世界耐久選手権の開幕2連勝を飾る勢いのまま大事な一戦を迎えた。

 昨年は勝利を確信した残り1周で突然「ノーパワー!」と無線で叫びクルマがストップ、あまりの悔しさから崩れ落ちるように降りた。あれから1年。「ルマンで味わった悔しさは、ルマンじゃなければ−」。今でも心の中のくすぶるモヤモヤを晴らすチャンスがやってきた。

 不運は昨年だけではない。日本人初のポールポジションを獲得した2014年にもトップを快走しながら、深夜に車両トラブルでリタイアする悔しさを味わった。なかなか2位の壁を打ち破れないトヨタと同様に、一貴もルマンでは乗り越えなければならないモノがある。

 フランスに旅立つ前には刺激を受ける出来事があった。F1参戦時代に2年間戦った佐藤琢磨の米インディ500制覇の吉報だ。「あの優勝がものすごいことなのは間違いない。僕らもその流れを引き継ぎたい」。ともに戦うのは世界3大レースに数えられる伝統の一戦。同じ日本人として、かつてコース上で火花を散らしたライバルとして、琢磨の偉業をたたえつつ、自らに気合を入れた。
3度目の正直に挑む一貴のトヨタ8号車(トヨタ提供)
3度目の正直に挑む一貴のトヨタ8号車(トヨタ提供)
 まして今年は最高の状態で大一番に挑める。「ルマンのプロジェクトが始まって6年目。3台体制ということも含め、今までで一番しっかり準備ができている手応えはある」。乗り込むTS050HYBRIDは昨年と同じ名称だが、規則で変更できない車体以外は足回り、エンジン、ハイブリッドシステム、さらにはバッテリーまでも見直してきた。

 ここ数年、一貴は個人的に歯車がかみ合わないことが続いた。昨年は参戦したWECとスーパーフォーミュラの2シリーズで未勝利に終わり、一昨年はWECのクラッシュで背骨にひびが入る大けがも負った。そんな悪い流れも今年は一変。WEC開幕戦で同シリーズ4年ぶりの勝利を挙げると、SF開幕戦、WEC第2戦、スーパーGT第3戦と4連勝。SF第2戦で連勝は途切れたが、本人も驚く良い流れに乗っている。

 「ポルシェも2台いるし、僕らも3台体制。そう簡単ではないが、(自分で)取るつもり」。さまざまな思いを背負い、一貴が因縁のルマンでトヨタと自らの壁を突き破る。