中小企業への優良企業表彰で東京新聞賞のタマチ工業
東京本社を訪れ、ルマン24時間の優勝マシン縮小模型を前に笑顔を見せる(左から)城南信用金庫の川本恭治理事長、タマチ工業の米内淨社長、トヨタ自動車の林博美氏=東京都千代田区で(伊藤遼撮影)
東京本社を訪れ、ルマン24時間の優勝マシン縮小模型を前に笑顔を見せる(左から)城南信用金庫の川本恭治理事長、タマチ工業の米内淨社長、トヨタ自動車の林博美氏=東京都千代田区で(伊藤遼撮影)
 中小企業への優良企業表彰(東京都信用金庫協会主催)で、東京新聞賞を受賞した「タマチ工業」(本社=東京都品川区)の米内淨(よない・きよし)社長(55)が20日、東京都千代田区の中日新聞東京本社を来訪した。同社はモータースポーツの精密部品に特化し、トヨタのレース車両「TS050HYBRID」のエンジン部品を製作。2018、19年に仏ルマン24時間を連覇した偉業を支えた。中日新聞は同社提供のTS050の精密模型を東京本社1階ロビーで展示中だ。

 (田村尚之)

エンジン部品製作

 タマチ工業はモータースポーツ版のリアル“下町ロケット”だ。トヨタの悲願だったルマン制覇を、町工場の高い技術力で支えた。

 米内社長は懐かしそうに振り返る。「トヨタさんに鍛えられました。V6エンジンの開発では、正月も返上して頑張りましたから」。ルマンで快挙を達成した車両向けエンジン部品の製作を託されたのは2015年末。納期までの日数は通常の半分近い厳しいものだったが、50年以上もレースにかかわってきた老舗の底力を見せた。

 同社は設立2年後の1964年からトヨタ系のモータースポーツ部品の製作をスタート。国内レースに加え、ルマンや米CART(インディカー前身)などの海外挑戦も支えてきた。米内社長は「ルーツとなるオオタ自動車工業の時代から、モータースポーツはわれわれのスピリッツ」と胸を張る。1912年に操業を開始したオオタ自動車は、第2次世界大戦前からレース活動をするなど、モータースポーツが身近にあった。

現在は医療機器も

 現在は医療機器なども製作しているが、中心はモータースポーツ。ルマンのほか、国内のスーパーGTやスーパーフォーミュラ、F3やF4で使うエンジン部品の製作を担っている。確かな技術力が評価され、優良企業表彰でも東京新聞賞を受賞。「多くの人にモータースポーツの魅力を知ってほしい」と特注したTS050の8分の1模型の展示を申し出た。

 模型は19年にルマンを連覇し、トヨタが世界耐久選手権のタイトルを獲得した記念すべき車両がベース。この時は米内社長もルマンを訪れ、喜びを分かち合った。「自分のことのように誇らしかった。トヨタの方々からも感謝され、本当にうれしかった。これからも続けていきたい」。ふだんは脚光を浴びることはないが、タマチ工業のような“町工場”が数多くの快挙を作り出す。

 ◆タマチ工業 1962(昭和37)年11月に東京都港区で設立。レース用部品などを手掛ける。トヨタの仏ルマン24時間プロジェクトには89年ごろからかかわり、2018、19年と連覇した「トヨタTS050HYBRID」の排気量2.4リットルのV型6気筒エンジンの部品を製作。スーパーGTやスーパーフォーミュラなどのエンジン部品も製作する。選手やチームの支援も長く続け、昨年は石浦宏明、国本雄資、坪井翔、中嶋一貴、山下健太をサポートした。

 医療関係の製品も手掛け、ロケットの部品開発にも携わった。1981年に本社を品川区に移し、静岡県富士宮市の「西富士工場」と合わせ、従業員は124人。第2次世界大戦前から自動車を生産していたオオタ自動車工業が前身。

 ★東京本社でTS050の模型を展示 中日新聞東京本社の1階ロビーで、トヨタTS050の8分の1模型を8月まで展示する。タマチ工業が精密模型を製作する「SPARK JAPAN」に依頼した本格的な作品だ。同社は夏以降の稼働を目指し、静岡県富士宮市の西富士工場にオープンファクトリーを建設中で、そこに展示予定の模型を提供した。同ファクトリーではモノづくりに興味を持つ若者や子ども、近隣の人々に技術のこだわりを披露するのが目的という。