サード王者の余裕 岡山で256周走り込み
スーパーGT開幕特集
順調なオフシーズンを過ごしたサードのレクサスLC500(多賀まりお撮影)
順調なオフシーズンを過ごしたサードのレクサスLC500(多賀まりお撮影)
 国内レースでナンバーワン人気を誇るスーパーGT(SGT)が2017年シーズンを迎える。GT500クラスは車両規則が変更され、レクサス(トヨタ)、日産、ホンダが新しい車両を開発し、オフシーズンのテストで熟成を図り、開幕戦の岡山国際サーキット(4月9日決勝)に挑む。昨年、最終大会で逆転王者に輝いたサードのヘイキ・コバライネン(35)/平手晃平(31)は新型車両のレクサスLC500をじっくり開発し、万全の状態で2連覇を狙う。

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コバライネン「満足」、平手「予選で遅れても挽回できる」

2連覇に向けて手応えを感じるサードのヘイキ・コバライネン(左)と平手晃平
2連覇に向けて手応えを感じるサードのヘイキ・コバライネン(左)と平手晃平
 サードのガレージには王者の余裕が漂う。開幕戦と同じ岡山国際で3月18、19日に開かれた公式テストは、最速タイムこそ同じレクサス陣営のトムス37号車に譲ったが、2日間で最多の256周も走り込み、総合2番手タイムを刻んだ。

 元F1ドライバーのコバライネンも満足げだ。「オフシーズンのテストは良い流れできている。新しいクルマはしっかりしていてバランスも良く、パフォーマンスが高い。信頼性の問題も出ていないし、満足している」。レクサス陣営が開発した新しいLC500の素性の良さを生かすため、大事な車体調整作業や開幕戦で使うタイヤの選択作業を順調に進めた。

 昨年にチーム初のSGT王者を獲得した原動力は、オフシーズンの徹底した走り込みだった。車体の基本的な調整から、状況に合わせたタイヤ選択などの膨大なデータを蓄積し、クルマの調整を進める基本方針を決定。それをベースに1年を通して安定した結果を残し、大一番となった最終大会の変則2戦でチャンピオンを手繰り寄せた。

 当然、今年も同じ戦略を採る。チームが新しいLC500を走らせたのは2月半ばからだが、マレーシア・セパンサーキットで昨年末と1〜2月に開かれたタイヤテストに、レクサスの開発メンバーとして平手が参加したことで作業はスムーズに進んだ。

 岡山の公式テストが、チームとしては3回目の新型車の走行だった。それでも平手は「セッティング(車体調整)はもう決まっている。(開幕戦で使う)タイヤの選択作業に集中し、これかな−というのが見つかった」と好感触をアピール。

 唯一の心配事は、6台がエントリーするレクサス勢はどこも調子が良いことだ。岡山の総合タイムでトップ3を独占し、トップ6に5台も占めた。「うちのチームはロングラン(連続走行)も一発もいいデータが取れている。予選で遅れても、決勝で挽回できる自信がある」。平手は実力が拮抗(きっこう)をするレクサス陣営内の戦いを制する覚悟だ。

 「目標はチャンピオンのみ。再びナンバーワンになることだ」。コバライネンが連覇を宣言するサードが、開幕戦からチャンピオンロードを突き進む。

永井洋治TRD開発部長に聞く

「長所は欠点がないこと」

レクサスLC500を開発したTRDの永井洋治開発部長(多賀まりお撮影)
レクサスLC500を開発したTRDの永井洋治開発部長(多賀まりお撮影)
 テストで完ぺきな仕上がりをみせたレクサスの新型車両「LC500」は、昨年までの「RC F」の欠点を補う開発を進めた。車両開発の責任者、永井洋治TRD開発部長(58)は「長所は欠点がないこと。弱いところを全部つぶしていったら、欠点がなくなった」と力説する。

 GT500車両は2014年にドイツツーリングカー選手権(DTM)とモノコック(運転席回りの基本骨格)や足回り、空力部品の一部などを共有する車両規則となったが、「RC F」は苦戦を強いられた。昨年はサードの奮闘で3年ぶりにタイトルを奪還したが、戦闘力では年間5勝を挙げた日産GT−Rに軍配が上がった。

 当然ながら、規則が変わる今年のクルマに懸ける開発陣の意気込みは半端ではない。「開発スタイルを見直した。どんなクルマなら勝てるか−をレクサスチームのエンジニアやドライバー、メカニックを含めて話し合い、コンセプトと目標を決めた」と永井部長。地道に弱い部分の聞き取りを行い、今年のクルマ作りに役立てた。

 大きな課題は三つ。エンジンやブレーキなどの冷却システム全般が弱く、条件によってはエンジンのパワーを100%引き出せず、ブレーキにも制約があった。次は富士スピードウェイで使うロー・ダウンフォース(気流で押さえ付ける力が低い)仕様の空力バランスが弱く、車体の整備性能もいま一歩だった。

 そこから明確な目標を立て、一つずつクリアした結果、欠点のないクルマに仕上がった。「自分たちが立てた目標は全てクリアできた。これで負けたら仕方ない。レクサス全体の力を出し切ったのだから」。LC500は納得の力作だ。

 排気量2リットルの直噴ターボエンジンに弱点はなかったが、今年から1年間に使用できるのが2基になった対策に力を注いだ。年間3基だった昨年は、最後に2戦しか使えないスペシャルエンジンを投入してライバルを圧倒したが、今年はそのエンジンで4戦を戦えるように、性能を落とさず耐久性を上げた。

 「開発という面では満足しているが、レースはやってみないと分からない。慢心すると負けるから、常に新しいタマ(秘密兵器)を持っている」。テストを圧倒したレクサスながら、再び王座に就くまで手は緩めない。