新型に手応え!戦闘力アップで快幕だ
スーパーGT開幕特集
公式テストで好調レクサスに迫ったリアルのNSX(多賀まりお撮影)
公式テストで好調レクサスに迫ったリアルのNSX(多賀まりお撮影)
 ホンダNSXが逆襲を狙う。GT500クラスに参戦する3メーカーの中で唯一、エンジンを車体中央に搭載する独自の車両作りを選択したことで苦戦を強いられてきたが、車両規則の変更に伴う新型の投入で戦闘力も高まった。岡山の公式テストではリアルの塚越広大(30)が好調なレクサス勢に割って入る総合4番手タイムを記録して気を吐いた。昨年8月に3年間交際した麻衣さん(25)と結婚し、心身ともに充実して新しいシーズンに挑む。

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節目の一年に完全燃焼を誓うNSXの塚越
節目の一年に完全燃焼を誓うNSXの塚越
 塚越の目の色が違う。長らくホンダの若手ナンバーワンと期待されてきたが、もう30歳。責任を負う中堅となった。

 「がむしゃらに結果を求めるだけの歳でもないし、モータースポーツ界のことも考えていかなければ−」。コース上で好パフォーマンスを発揮するのにとどまらず、プロスポーツ選手としてレース界を盛り上げることの重要性にも気が付いた。

 そんな思いはすぐに行動に移した。ファンから憧れる存在になれるよう、ホンダが昨年売り出したスーパースポーツカー「NSX」を購入し、サーキットへの移動に使うようになった。その上、移動時には、プロ野球やサッカー選手を見習いスーツを着用することも自らに課した。

 「高かったですが、レースで使うNSXを普段も乗っているのはいいじゃないですか。子どもが夢を持てると思う」。粋なスーツを着こなし、2500万円近い超高級スポーツカーで乗り付けるさまは、まさに憧れのレーサーだ。

 もちろん、走りにも磨きがかかった。全域で性能が向上したというNSXのまずまずな仕上がりも後押しとなり、オフシーズンのテストで上位に食い込む走りをみせた。「昨年までとはまるで違う。まだ改善する部分はあるが、車体もエンジンも良くなった」。シーズン序盤は絶好調のレクサス勢の壁は厚そうだが、テスト同様に本番でも割って入る覚悟だ。

 「NSXは昨年勝っていないので、久しぶりの勝利をうちのチームで挙げたい。まず1勝!」

 家族をもち、人生の節目を迎え、大人の自覚が生まれた塚越。昨年までとはひと味違う。

ホンダ・佐伯昌浩GTプロジェクトリーダーに聞く

「足回りと空力を合わせて対処した」

ホンダの佐伯昌浩GTプロジェクトリーダーはレースに強いクルマを目指してNSXを開発した
ホンダの佐伯昌浩GTプロジェクトリーダーはレースに強いクルマを目指してNSXを開発した
 過去3年苦戦を強いられたNSXがまずまずの仕上がりをみせる。唯一、運転席後方にエンジンを搭載する独自のクルマ作りが徐々に実を結び始めてきた。

 今年からホンダのGTプロジェクトリーダーに就いた佐伯昌浩氏(50)は「レースに強いクルマ作りをターゲットに開発してきた」と開発テーマを明かす。他陣営同様に規則変更で25%失ったダウンフォースを取り戻すことを目的に、まずは空力面の開発に力を入れた。

 「CFD(コンピューターを使った数値解析)や風洞にかけて細かなところまでやってきた。どこが−というわけでなく、車体全てで見直し、昨年レベル近くまで取り戻せた」。ボンネットが高くやや不利なシルエットのNSXだが、徹底したデータ解析で失ったダウンフォースを取り戻し、ドライバーからは「違和感がない」という評価を受けた。

 課題だった足回りも手を入れた。昨年までの車両は走行中に跳ねる症状に悩まされたが、佐伯リーダーは「足回りと空力を合わせて対処した。もっと走り込んでタイムを上げることにつなげたい」とした。多少症状は残っているようだが、足回りの仕様を変更できる第2戦までに最善の状態に持ち込む予定だ。

 排気量2リットルの直噴ターボエンジンも進化した。今年はタービンを大径化したため、パワーが出るまでのタイムラグが心配されたが、「ベンチ(台上)でしっかりセッティングを出して問題をクリアした」。佐伯リーダーはスーパーフォーミュラ(SF)のプロジェクトリーダーも兼務し、同じエンジンながら異なる要求もある両カテゴリーを見ることで相互メリットも生んだ。

 「昨年からSFで使う技術をSGTにも投入したので、エンジンの扱いやすさは増した」。複数のタイヤメーカーが参戦するSGTのタイヤ接地力は高く、SFほど神経質になる必要はないが、タイヤが摩耗するレース終盤では武器になる。

 「好調なレクサスに開幕で追い付くのは厳しいが、シーズン中には捕らえたい。何より各チームのモチベーションが高い」。戦えるクルマを開発してきたホンダが台風の目になる。