スーパーGT第6戦鈴鹿1000km特集
バンドーのレクサスLC500で鈴鹿1000キロに挑む可夢偉
バンドーのレクサスLC500で鈴鹿1000キロに挑む可夢偉
 スーパーGT(SGT)第6戦の第46回鈴鹿1000キロ(27日決勝)が三重県の鈴鹿サーキットで開かれる。タイトル争いも残り3戦で佳境に入り、鈴鹿での順位が大いに影響する。そんな大事な1戦に、F1で火花を散らした2人の選手がGT500クラスにスポット参戦する。バンドウの小林可夢偉(30)と無限のジェンソン・バトン(37)=英国=だ。乗り込むクルマはレクサスLC500、ホンダNSXと異なるが、装着するタイヤはともにヨコハマで、第3ドライバーとしてSGTデビューを飾る条件は一緒。2012年のF1日本GPで激しく3位を争った2人が再び鈴鹿で激突する。

  ◇ ◇ ◇

可夢偉「良い仕事するだけ」

追試でホンダNSXや独特なSGTの戦い方を学んだジェンソン・バトンの走り
追試でホンダNSXや独特なSGTの戦い方を学んだジェンソン・バトンの走り
 ついに可夢偉がSGTデビューを果たす。総合13位につけるバンドウの助っ人ながら、シリーズで最も過酷な鈴鹿1000キロで、F1や世界耐久選手権(WEC)で培った経験を思う存分見せつける。

 「良い仕事をするだけ。しっかり走ってチームに貢献したい」。大事な1戦を前にしても可夢偉はいつも通り。第3ドライバーという立場を忘れず、シリーズを戦う関口雄飛、そして国本雄資をサポートする仕事を全うする覚悟だ。

 事前テストには2度参加した。シーズン開幕前の3月に開かれた岡山国際サーキット(岡山県)、そして7月に鈴鹿サーキットで行われた公式テストでチームに加わった。ただし、雨絡みの天候だったことに加え、チームの車体調整作業などを優先したため、しっかりと走り込める環境にはなかなか恵まれなかった。

 ようやく最低限のプログラムを消化できたのは、鈴鹿の最終日に記録した53周のみ。走行後に「ちょっとはマシになったかな。タイムを安定して刻むのは問題ないよ」とようやく笑みを漏らしたが、慣れないクルマ、慣れないタイヤでぶっつけ本番に近い状況で挑むことになった。

 心配はしてない。昨年からトヨタ・ガズー・レーシングの一員として最高峰クラスのLMP1クラスに出場しているWECでは、LMP2、LMGTEなど下位クラスの遅いクルマと混走しており、スピードを落とさず周回遅れを処理するのはお手のもの。100%感触をつかめていないSGT仕様のレクサスLC500をなだめすかしながら、確実にゴールを目指して走ることだろう。

 鈴鹿はザウバーに在籍していた12年のF1日本GPで上位チームに真っ向勝負を挑み、日本人3人目の3位表彰台に上る快挙を演じた場所。トヨタ自動車の育成出身で、17歳で海外に飛び出したため、意外と走行経験が少ない場所ながら、決して相性は悪くない。

 「全体的に周回数は少ないけど、大した問題ではない。やるべきことを、やるだけ」。まるで熟練した職人のような雰囲気を醸し出す可夢偉が、鈴鹿でいぶし銀のような輝きを放つ。

バトン「結果残したい」

バンドーからSGTにデビューする小林可夢偉
バンドーからSGTにデビューする小林可夢偉
 この英国紳士に鈴鹿がよく似合う。F1マクラーレンの第3ドライバーとして1年を過ごすバトンが、SGTシリーズの大一番に挑むことになった。

 「すごく楽しみにしているよ。スーパーGTはものすごくレベルの高いシリーズ。出場選手の技量も高いし」

 昨年12月に開かれたホンダのイベントでSGT仕様のNSXに初めて乗り、「ものすごくクールでかっこ良い」とシリーズへの興味が膨らみ、ホンダにレース出場を打診。6月に現在総合15位の無限から、鈴鹿1000キロにスポット参戦することが決まった。

 ハコ車と呼ばれる市販車の姿を残した車両のレースでは、世界的にも人気が高いSGTは、腕に覚えのあるドライバーなら一度は出てみたいのだろう。ただし、事実上フォーミュラカー一筋のバトンは苦労した。

 「NSXは約600馬力でF1は約900馬力。パワーに大きな違いがあり、ドライビングスタイルが変わってくる。この違いに慣れるには少し時間がかかるよ」

 初テストになった6月のタイヤメーカーテストでは、初めてのクルマ、初めてのタイヤ、初めてのチームに戸惑った。雨絡みのコンディションだったこともあり、思うように走れず表情もさえない。さらに速度が違うGT300の処理も、最後まで慣れることはできなかった。

 F1ドライバーが余興で参戦するなら、不完全な状態でも本番を迎えただろうが、バトンは“追試”を直訴。7月の公式テストに自費で参加し、消化不良だった部分を1つ、1つ消していった。

 「F1はもっとフロントのグリップ(接地感)がしっかりしている。まずはクルマのリアルな動きに慣れること。同時にチームメート2人と力を合わさなければ−。僕はゲストなので彼らの方向性に合わせる」。1年を通して戦う武藤英紀と中嶋大祐の意見を尊重しながら、長いF1生活で蓄積した経験をクルマ作りに生かしていく。

 真夏の本番では新たな障害が待ち構えているだろう。それでもバトンは「他のドライバーと一緒に作業をするのはエキサイティング。結果を残したい」。日本GPを制した11年以来となる鈴鹿の表彰台真ん中に挑む。
慣れないSGTを克服するため自費でテスト参加したバトン
慣れないSGTを克服するため自費でテスト参加したバトン
 ★2012年日本GP 予選3番手からスタートした小林可夢偉(ザウバー)がレッドブルやフェラーリと互角の戦いを繰り広げた。中盤から3位になった可夢偉は、終盤タイヤの条件が良かったジェンソン・バトン(マクラーレン)からの猛追を受けるが、20周にわたり巧みな走りで守り切った。日本人選手のF1表彰台(いずれも3位)は1990年の鈴木亜久里(ラルース・ランボルギーニ)、2004年の佐藤琢磨(BARホンダ)に続く3人目の快挙だった。