スーパーGT第6戦鈴鹿1000km特集
得意の鈴鹿で大暴れする覚悟のスバルBRZ
得意の鈴鹿で大暴れする覚悟のスバルBRZ
 スーパーGT第6戦の鈴鹿1000キロ(27日決勝)にGT300クラスのスバルBRZで挑む、R&Dスポーツの井口卓人(29)/山内英輝(28)組が今季初勝利に狙いを定めた。同シリーズ独自のJAF(日本自動車連盟)−GT規則で作られたクルマは、難しいコーナーが続く鈴鹿サーキットでこそ本領が発揮できるコーナリングマシン。これまで5回挑んだ鈴鹿で2度の勝利と1度の3位表彰台に上った実績を生かし、辰己英治総監督(66)以下チームが一丸となって表彰台の頂に挑む。

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鈴鹿での大駆けを誓うBRZの井口卓人(左)と山内英輝(STI提供)
鈴鹿での大駆けを誓うBRZの井口卓人(左)と山内英輝(STI提供)
 これだけ鈴鹿と相性が良いのも珍しい。毎年超激戦が続くGT300で、BRZは5年間で2勝&1表彰台という好結果を残してきた。「鈴鹿に行くと違う車のように走れる。運も良いしね」。今年も思うような戦いができない辰己総監督だが、鈴鹿の話には目尻が下がる。

 市販車の思想を極力残したクルマ作りをしてきたBRZは、規則の影響からどんなコースでも速いオールマイティーなクルマにはならない。市販車と同じ2リットルの水平対向エンジンにターボを装着してパワーを引き出しているため、コースによっては力を出し切れないことも少なくない。

 辰己総監督は「2リットルのターボなので、強いブレーキで速度が落ちると(立ち上がり加速が)厳しい。でも、コーナーが連続する鈴鹿は速度が落ちにくく、クルマの旋回能力が問われるところ」と分析する。ストップ&ゴーのツインリンクもてぎ(栃木県)などは大の苦手だが、1コーナーから2コーナー、S字と流れるように続く鈴鹿はシケインぐらいしか強いブレーキをかけるところがなく、BRZのハンディが薄まり、メリットを生かせるという。

 ただし、1000キロレースのため、燃費という課題が浮き彫りになる一面もある。「BRZは5回ピットストップじゃないと乗り切れない。(次のピットインまで)最低24周は走らなければならず、天候やセーフティーカー(SC)導入のタイミングで柔軟にピットインを変えられない」と漏らした。

 昨年から5回ストップが規則で義務付けられ、4回で乗り切れるクルマも同じ土俵に立つことになったが、燃費が良いライバル勢は給油時間が短いことに加え、次のピットインまでの周回数を柔軟に変えることができ、戦略面でも有利に働く。

 しかし、鈴鹿では“神風”が吹く。昨年はピット作業を終えた直後にSCが導入されて大きなアドバンテージを築け、雨用タイヤから晴れ用に替えるタイミングが予定ピットインとどんぴしゃだったこともあった。辰己総監督は「何だか運に恵まれている。でも、速く走っていないとそれも生かせない」。無心に走るBRZの姿に女神がほほ笑むのかしれない。

 当然、辰己総監督が「2人とも今のGT300では抜群に速い」と太鼓判を押す井口、山内のドライバーの頑張りも大きい。「2人のタイム差は多い時でも(1周)コンマ1秒。富士(前戦)など100分の1秒台だった」。BRZが持つ力を100%絞り出して走った結果だ。

 前戦の富士で4位に食い込んだ井口は「限界まで攻めきった。完璧なレースだったので悔いはない。鈴鹿では前向きな状態で挑める」と表彰台の真ん中を見据え、山内も「チーム全員ミスなく戦って4位。悔いなし。鈴鹿は勝ちにいく」と言い切る。今年もBRZが鈴鹿で暴れ回る。


 ★後方支援 BRZの快走の陰にはチームを運営するR&Dスポーツの経験が大きく影響し、世界ラリー選手権時代から技術支援してきた「DENSO」などの支援企業の存在も侮れない。辰己総監督は、鈴鹿で好結果を残してきた最大の要因を「チーム力」と言い切る。

◆ウエートハンディ100キロ 首位グッドスマイル試練

100キロのウエートで挑むグッドスマイルのメルセデスAMG
100キロのウエートで挑むグッドスマイルのメルセデスAMG
 GT300の総合首位につけるグッドスマイルの谷口信輝/片岡龍也組(メルセデスAMG)は、鈴鹿に100キロものウエートハンディを搭載して挑む。真夏の1000キロにも及ぶ長丁場の戦いには厳しい状況だ。

 さすがの谷口も「100キロ重いマシンで1000キロ走るの…苦痛…」とブログで弱音を漏らす。ただし、2014年以来の3度目の王者を獲得するには、厳しい状況で得点を重ねるのが重要なことは分かっている。前戦の富士でも70キロのウエートを搭載しながら2位に食い込んだ。

 谷口が「ポイントを1点でも取るために、片岡と1000キロを戦うわけです」と静かな闘志を燃やせば、その片岡は「100キロのウエートで挑みます」と覚悟を決める。たった1点への執念を込めた走りを極める。

◆ARTAここも頂きだ

富士で勝利して勢いに乗るARTA。左から鈴木亜久里監督、高木真一、ショーン・ウォーキンショー
富士で勝利して勢いに乗るARTA。左から鈴木亜久里監督、高木真一、ショーン・ウォーキンショー
 前戦で鮮やかなポールtoウインを飾ったARTAの高木真一/ショーン・ウォーキンショー組(BMW・M6)が総合3位に浮上して鈴鹿に挑む。首位との差は12点。GT300の最多勝記録(18勝)に並んだベテランの高木は「M6は鈴鹿が少し苦手だが、富士で使った新しいタイヤに期待したい。鈴鹿にも合いそう」。車両とコースの相性はいま一歩ながら、富士で投入されたブリヂストンの夏場に強いタイヤに託す。ルーキーのウォーキンショーは「長いレースと聞いている。ミスを犯さず、ポイントを取りたい」と力を込めた。

◆陥落ツチヤ逆襲だ

鈴鹿で富士の雪辱に挑むツチヤのトヨタ86MC
鈴鹿で富士の雪辱に挑むツチヤのトヨタ86MC
 富士でまさかの車両トラブルに見舞われ総合首位から陥落したツチヤの松井孝允/山下健太組(トヨタ86MC)が鈴鹿での逆襲を誓う。山下は「富士はリタイア。でも、鈴鹿じゃなくて良かった。1000キロは勝ちます」ときっぱり。土屋武士監督は「富士ではあまり起きないことが起き、それが引き金で電気系がショート。不運なことが原因なので仕方ない」と気持ちを切り替えた。徹底的にこだわる準備やエンジニアリングを誇る集団は、鈴鹿でチームを挙げた雪辱戦に挑む。


 ★GT300クラス JAF−GT車両と呼ばれる国内独自の規定で作られた車両と、FIA(国際自動車連盟)−GT3車両と呼ばれる国際規格で自動車メーカーが製作して販売するレース専用車で争われる。JAFは鈴鹿の優勝候補筆頭に挙げられるスバルBRZに加え、シリーズを運営するGTアソシエイションが提供するシャシーやエンジン、足回りをベースに開発したマザーシャシーのトヨタ86MCやロータス・エボーラなど。FIAはフェラーリやポルシェ、メルセデスベンツ、BMWの超高級スポーツカーが多数参戦する。