ホンダNSX逆襲へ
2018年開幕特集(1)
真摯(しんし)な姿勢でSGTに挑むジェンソン・バトン
真摯(しんし)な姿勢でSGTに挑むジェンソン・バトン
 今年のスーパーGTには新しい風が吹く。2009年にF1を制したジェンソン・バトン(38)=英国=が、ホンダ陣営のチームクニミツからGT500クラスに挑戦する。元F1王者のフル参戦はシリーズ初。バトンはF1活動が18年にも及び、GTカーの経験がほとんどなく、独特の走り方を求められるSGT車両に戸惑いながらも、事前テストでは徐々に存在感を増した。4月7日に岡山国際サーキット(岡山県)で開かれる開幕戦は見逃せない。

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バトンにファン殺到

チームクニミツからGT500参戦

バトンが乗り込むクニミツのNSXが台風の目になる
バトンが乗り込むクニミツのNSXが台風の目になる
 バトンの存在感は群を抜く。シーズン開幕前に開かれた公式テストでの人気ぶりはすさまじく、あまりにファンが殺到するので専用の警備員を置くほどだった。

 「テストなのにすごいファンにびっくり。僕はフォーミュラカーのレースを18年間やってきたが、今はとても新鮮なシーズンを迎えようとしている」。あまりの盛り上がりにやや戸惑うが、初めて経験するGTカーのシーズンを心待ちにする。

 昨年は第6戦の鈴鹿1000キロに第3ドライバーとしてスポット参戦したが、今年はレギュラーだ。「マレーシアで1日、その後国内でテストを積んできた。SGTは2人のドライバーが乗るので、初めての自分には十分とは言えない。足りない分はナオキ(同僚の山本尚貴)をベンチマークとして学んできた」。開幕戦の舞台となる岡山の公式テストではバトンを中心にした走行スケジュールを組んだ。

 「1台のクルマを複数のドライバーで走らせるのがフォーミュラとの大きな違い。良い意味での妥協点を探るのがとても大切だ。その意味では良いモノを見つけつつある」。コンビを組む同僚との共同作業を実感し、その新しい発見を楽しんでいる。

 そして課題がもう一つ。GT300クラスとの混走だ。ライバルと戦いながら、速度差のあるクルマを効率良く追い抜くのは簡単ではない。「これだけは経験を積む以外に道はなさそう。サーキットによって差はあるけど、岡山のようなショートコース(1周3・703キロ)で40台以上のクルマが一緒に走るのはクレージーだよ」。混雑したコースの攻略にはもう少し時間がかかりそうだ。

 ただし、F1時代には技巧派として鳴らしてきた。雨絡みなど荒れた展開のレースで、独自の戦略を駆使して優勝をかっさらうこともあった。独特な戦いを強いられるSGTも、シーズン半ばにはすっかりマスターしているはずだ。

 「他陣営のポテンシャルも感じられるようになってきた。レクサスは安定して速いし、ミシュランタイヤを履くGT−Rは強そう。まだやるべきことはたくさんあるけれど、開幕戦が待ち遠しい。今はSGTを本当に楽しんでる」。バトンの新しい挑戦が始まる。

▼ジェンソン・バトン 1980年1月19日生まれ、38歳。英国出身。2000年に20歳でウィリアムズからF1デビュー。ベネトン、BAR、マクラーレンなど7チームに在籍。06年ハンガリーGPでの初優勝はホンダの第3期挑戦で唯一の勝利。09年にブラウンGPでタイトル獲得。F1通算306戦15勝8PP。

コンビを組む山本も刺激

バトンの学ぶ姿勢に刺激を受ける同僚の山本尚貴
バトンの学ぶ姿勢に刺激を受ける同僚の山本尚貴
 ◯…バトンとコンビを組む山本尚貴(29)は元F1王者の真面目な姿勢を高く評価する。「自分のことをベンチマークと言って敬意を払ってくれる。プライドもあるはずなのにすごい」。走行データなどを参考にしているのは事実だが、世界の頂点に立った男のひた向きな姿に少なからず衝撃を受けた。「姿勢は真摯(しんし)で積極的。自分にも刺激になる。一緒に良い結果を残さなければ−」。息の合った新しい同僚と、初めてのSGT王者に上り詰める。

事前テスト常に上位!リアルの塚越/小暮組

順調なオフシーズンを過ごしたリアルの塚越は笑みが絶えない
順調なオフシーズンを過ごしたリアルの塚越は笑みが絶えない
 ホンダ陣営で充実したオフシーズンを過ごしてきたのが、リアルの塚越広大(31)/小暮卓史(37)組だ。事前テストでは常に上位に名を連ねてきた。

 「昨年から地道にセットアップ(車体調整)を進めてきた成果。もっともっと良くして開幕戦に挑みたい」。そう語る塚越の顔には自信がくっきり。安定した速さを示しているのは、チームのエンジニアリングがうまく機能している証しだ。

 コンビを組む小暮も岡山の公式テスト2日目に最速タイムを記録するなど乗れている。「いろいろとトライしているので、必ず良い結果に結びつけられる」。しっかりと戦える体制を築いた。

 「まずは予選で−」と塚越が開幕戦の目標を掲げれば、小暮は「この勢いのままで」。ポールtoウインあるのみだ。

「低重心化と重量配分の最適化を進めた」

佐伯昌浩GTプロジェクトリーダーに聞く

リアルはベテランの小暮も調子委が良い
リアルはベテランの小暮も調子委が良い
 今季型のホンダNSXは大きな進化を果たした。新しい車両規則2年目のため改良できるところは限られているが、この4年間の不振を拭い去るため渾身(こんしん)の開発を進めてきた。

 ホンダの佐伯昌浩GTプロジェクトリーダー(51)は「一番大きなところはインタークーラーの搭載位置を変えたことです」と切り出す。昨季まではエンジンの上に設置していたが、「低重心化と重量配分の最適化を進め、下の方に移すことで対処した」と説明する。その効果はてきめんで、テストではNSX陣営全体のスピードが増した感じだ。

 もう一つは空力面の改良。佐伯リーダーは「できるところは全てやった」と言うが、「まだどれが良いのかを見つけ切れていない」と発展途上を認める。わずかな温度変化に対して敏感に反応する傾向もあり、シーズンを戦いながら煮詰める方針だ。

 「確実にポイントを取って、最終戦をチャンピオン争いの真ん中で迎えたい」。陣営として2010年から遠ざかっている王者を生み出したい。