新チーム立ち上げ4年ぶりシリーズ復帰
2018年開幕特集(5)
4年ぶりにドライバーとしてシリーズ復帰する道上龍(右)は新人の大津弘樹(左)とコンビを組む
4年ぶりにドライバーとしてシリーズ復帰する道上龍(右)は新人の大津弘樹(左)とコンビを組む
 ベテランの道上龍(45)が新しい挑戦をスタートさせた。スーパーGTのGT300クラスに新チーム「モデューロ ドラゴ コルセ」を立ち上げ、4年ぶりにドライバーとしてシリーズに復帰する。車名は「モデューロ ケンウッド NSX GT3」。昨季、世界ツーリングカー選手権(WTCC)を戦いドライバーとして覚醒。GTデビューの若い大津弘樹(23)とコンビを組み、クラス王者への戦いに挑む。

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ベテラン&ルーキー融合!年の差コンビいざ出陣

今季からGT300クラスに挑戦する「モデューロ ケンウッド NSX GT3」
今季からGT300クラスに挑戦する「モデューロ ケンウッド NSX GT3」
 ずいぶんと若返ったような印象だ。公式テストで精力的に走り込んだ道上は、クルマを降りるとすぐにエンジニアらと熱心に話し込む。今季からSGTにデビューするホンダの新しいNSX GT3の調整作業に全身全霊で取り組んだ。

 「WTCCがなくなるのが分かって、次の居場所を考えた時にSGTに戻りたい、やってみたいと思った」

 2016年終盤にドライバーとして突如復帰し、昨年はホンダワークスの一員としてWTCCを戦ったことで現役続行への意欲が出た。「この年で海外に出て、大変だったが、勉強することもたくさんあった。まだドライバーとしてやれると思った」と振り返る。

 道上は2013年限りで第一線を退き、自らが代表、監督を務める「ドラゴコルセ」を立ち上げ、SGTのGT500クラスとスーパーフォーミュラに参戦を開始した。14年にはSGTの鈴鹿1000キロ、16年にはWTCCの日本大会などにスポット参戦したが、本業はあくまでもチーム運営だった。

 しかし、ホンダからのオファーを受けて挑戦した昨年のWTCCフル参戦で気持ちが揺り動かされた。世界の猛者と互角に渡り合うことで、まだ走れる−という確信が生まれ、同シリーズが今年から発展的な消滅をすることが分かった昨年夏から再びチームを興すことを模索した。

 「2年間チーム運営していたことで、比較的スムーズに物事が進んだ。多くの企業の方々にサポートをいただき、本当に感謝している」。ホンダの子会社で純正用品メーカー「ホンダアクセス」や、AV・家電メーカーの「JVCケンウッド」などの支援を取り付け新しいスタートを切った。

 選んだクルマはなじみ深いホンダNSX。「さすがに500は厳しいので300にしたが、NSXへの思い入れが強い。久しぶりに新型も売り出され、一般のお客さんも興味があるだろうし」。SGTの前身、全日本GT選手権時代の2000年に初タイトルを獲得したのをはじめ、12年間もNSXでGT500を戦ってきた。GT300クラスの挑戦でも今年から日本に導入されるNSX GT3を選ぶのに迷いはなかった。

 シーズン開幕前の公式テストではクラス10番手前後のタイムを記録するのにとどまったが、「他車との差も確認できた。車体とタイヤのマッチングなどを進めたが、トラブルなく順調に作業を行えた」と見据えた。

 「最低でも3年ぐらいやって、最終的にはチャンピオンを取りたい。もちろん今年でもいいけどね」。生き生きとした表情でそう意気込みを語る道上が、新しい挑戦を心底楽しんでいる。

待望のGT3、ホンダ満を持して投入

米国IMSで2勝の実績

2月に開かれた「モデューロ ケンウッド NSX GT3」のカラーリング発表会。道上(前列左から1人目)、大津(同2人目)が奮闘を誓った
2月に開かれた「モデューロ ケンウッド NSX GT3」のカラーリング発表会。道上(前列左から1人目)、大津(同2人目)が奮闘を誓った
 道上が参戦車両に選んだホンダNSX GT3は、昨年、米IMSAシリーズに挑戦を始め、今年から満を持してSGTに投入される市販レース車両だ。ホンダの山本雅史モータースポーツ部長は「ドライバーを選ばない、誰が乗っても頂点のスーパーカーレースを楽しめるのがベース」と開発方針を明かす。

 FIA−GT3規定で作られたクルマは、ユーザー参加型のモータースポーツの頂点を戦う道具として生まれ、実力のあるアマチュアドライバーが運転することが大前提。速いだけでなく、扱いやすさが求められ、NSXもその延長線上だ。

 ただし、GT300クラスのようにプロドライバーが乗り込むレースでは、他メーカーのGT3車両とハイレベルな戦いが繰り広げられる。乗りやすいだけでは戦えず、先行投入されたデイトナ24時間で優勝に迫った快走など通算2勝を挙げた米国での実績が今年のクルマに生きてくる。

 山本部長も「米国で蓄積したデータが生かされている。その部分はメリット」。ホンダはユーザー支援の姿勢だが、デビュー初年度から高い戦闘力を示したい。

大津GTデビュー「走りながら成長」

 道上とコンビを組む大津は初めてのSGT挑戦となる。ホンダの育成選手としてFIA−F4、全日本F3と歩みを進め、今年ははGT300クラスに参戦する。

 「初めは悩むときもあったが、道上さんの走行データと比べられるので助かった」

 テストを始めたばかりは苦戦もようだった。今まで車重が軽いフォーミュラカーしか経験がなく、重量もあって動きも鈍いGTカーに戸惑うこともあったが、F3からF・ニッポン(スーパーフォーミュラの前身)、SGT、WTCCなどあらゆるカテゴリーに参戦した経験のある同僚の走行データと比較することで、一つ一つ問題を解決していった。

 ただし、GT500クラスとの混走に慣れるにはもう少し時間が必要だろう。同じクラスのクルマと激しく争いながら、後ろから猛烈な勢いで迫る500の車両を効率的に追い抜かさせなければならない。「500が来る感覚が難しい。特にアウトラップ(コースインした周回)では…。予測、予測で走るようにしている。それがGTなんで−」と試行錯誤の真っただ中だ。

 「タイヤマネジメント(管理)は良い勉強になっている。安定して速く走ることなど学ばないといけないし。毎回いろいろな発見があり、毎回成長している」。酸いも甘いも知り尽くした大ベテランとの挑戦で、自らを高めたい。
 ★ケンウッドのモータースポーツ 「モデューロ ドラゴ コルセ」のサブスポンサーに今年から就いた「JVCケンウッド」はケンウッド時代からさまざまなモータースポーツを支援している。始まりは1983年に仏ルマン24時間レースに出場するポルシェチームのサポートから。91年にはF1マクラーレンのオフィシャルサプライヤーとなり、2013年から昨年までオフィシャルシリーズパートナーとしてWTCCをスポンサード。SGTも2013年からシリーズスポンサーとなり、今年からドラゴコルセの支援を始めた。