タイで今季初勝利を挙げたレクサスLC500(トヨタ提供)
タイで今季初勝利を挙げたレクサスLC500(トヨタ提供)
 今季前半戦のGT500クラスはブリヂストンタイヤを履いた9チームがランキング上位を占める奮闘が目立つ。総合首位に立つレクサスLC500のサードは今季から加入の小林可夢偉(31)が前戦タイ大会で待望のシリーズ初勝利を挙げ、元F1ドライバーのジェンソン・バトン(38)=英国=を迎えたホンダNSXを駆るクニミツの山本尚貴(30)も総合2位。日産GT−Rのインパルは不運もあって総合10位に甘んじているが、第5戦富士500マイル(5日決勝)の優勝候補に名乗りを上げる。

可夢偉、我慢の戦い チームのために走り抜く

前戦タイで初勝利!

BSタイヤの特性を生かして2度の2位表彰台に上ったクニミツのホンダNSX(ホンダ提供)
BSタイヤの特性を生かして2度の2位表彰台に上ったクニミツのホンダNSX(ホンダ提供)
 今季からフル参戦する元F1ドライバーの小林可夢偉が4戦目(通算5戦目)にして初優勝を挙げた。7月1日の前戦タイ大会で元F1のヘイキ・コバライネン(36)=フィンランド=から渡されたトップの座を最後まで守り切った。

 「この車を乗りこなせていない状況で勝てたのは大きい。今のパフォーマンスに満足せず、後半戦に向けて調子を上げていきたい」

 ウエートハンディ制度を導入するなどSGTは独特な規則が多く、GT500はタイヤメーカー4社がしのぎを削る世界的にも類を見ない激しい戦いを繰り広げる。例えF1で活躍した有力選手でも、いきなりトップクラスで走るのは難しい。今季からのバトンしかり、4年目の同僚コバライネンも初めはてこずった。

 それは可夢偉も同じだ。トヨタの一員として参戦する世界耐久選手権(WEC)の開発作業などとも重なり、シーズン前の合同テストには満足に参加できなかった。その上テストは本番を見据えたタイヤのプログラムがメインとなり、「どうしても車に慣れる機会が少なくなり、(ドライバーとしての)引き出しが増えない」という苦戦を強いられた。

 そんな可夢偉を支えたのがBSタイヤだ。「どんな状況でも合うのが強み。暑かったり、寒かったり、雨が降ったりしても何とか合う。パッと乗っても乗りやすいし、特別な運転技術も必要ない」。そのオールマイティーな性格が、いろんなことを探りながら走る身には心強かった。

 シーズン後半戦のスタートになる富士500マイルは、同僚が総合首位に立ち70キロのウエートハンディを搭載する。「我慢の戦いになると思う。トラブルフリーで走り切ってポイントを取り、終盤の戦いにつなげたい」。WECと日程が重なったシリーズ第2戦を欠場しているので自身のタイトル獲得はないが、2年ぶりの戴冠に突き進む同僚のため、そしてチームのためにしぶとく走り抜く。

山本、総合2位 未勝利不満も悪くない流れ

2位表彰台2度も!?

富士で今季初勝利に挑むインパルの日産GT−R(日産提供)
富士で今季初勝利に挑むインパルの日産GT−R(日産提供)
 今季のクニミツは山本の快走が光る。SGT初挑戦で慣れないバトンをチームメートに迎えながら、レース終盤に怒濤(どとう)の追い上げを繰り返してここまで2位表彰台に2度も上ってみせた。

 「まずまずの成績を残せた。チームメートが初めてなのでシーズン序盤は難しいと思っていたが、お互いのマイナスをうまく補ってこれた」

 確実に結果を残して総合2位につけたことは満足しているが、ここまで未勝利。「不満なのは勝てなかったことだが、SGTの戦い方を考えると悪くない流れ」。シーズン終盤に向けて調子を上げる戦い方はSGTのタイトル奪取の方程式。その流れに沿っている。

 好調の原因を「ホンダが得意としているところでしっかり戦うことができている」と分析する。今季は天候が不安定で荒れたレースが多い中、NSXが得意なコースで確実に力を出してきた。

 開幕戦は真冬のような気温となって、各陣営とも持ち込んだタイヤがコンディションと合わず苦戦した。しかし、山本が所属するクニミツはBSのエンジニアと綿密な計算を行うなどしてタイヤ無交換という戦略を取り、2人のドライバーがそれを完ぺきに決めた。

 山本は「最後までパフォーマンスが落ちなかった。無交換で戦えるタイヤがなければできなかったこと。BSタイヤのおかげ」と振り返る。正確な計算と臨機応変に対応したチームとBSのエンジニアの頑張りがもたらした2位だった。

 目前に控えた富士500マイルは、64キロのウエートハンディを搭載するクニミツには苦戦が予想される。「ウエートハンディもあり優勝争いに絡むのは難しい。ただし、今回は特別に距離が長い。最後までちゃんと戦えれば得点できる。6位は狙いたい」。今季から変わったウエートハンディの規則では、50キロを超えると格段に車両の戦闘力が落ちる傾向が強いが、距離の長さを生かしてしぶとく得点を重ねていく。

佐々木、制覇に意欲 勝たなければいけない

頂点への条件そろう

 富士500マイル制覇に意欲的なのが、インパルの佐々木大樹(26)だ。ウエートハンディも36キロ。トップを取る条件はそろっている。

 「勝たなければいけないレースだと思っている。しっかりと完ぺきな仕事をしなければ−」

 500キロで争われた第2戦の富士でも存在感を示した。予選の不運で13番手スタートながら、同僚のヤン・マーデンボロー(26)=英国=と追い抜きを繰り返し、6位まで盛り返した。車とコースの相性は悪くない。

 インパルは昨季、車両の戦闘力不足もあって選手部門の総合15位と低迷した。雪辱を狙う今季はシーズン前の公式テストでトップタイムを記録するなど復調をアピールした。そこにはBSタイヤを熟知した佐々木の加入も好影響した。

 「初めてインパルの車に乗ったとき、タイヤと車が合っていない印象だった。そこから車のセッティングでタイヤに歩み寄り、BSにもGT−Rに合うコンパウンド(ゴム種)を出してもらった」

 佐々木は16歳から現在まで、レーシングカート用BSタイヤの開発を続けるその道のプロフェッショナル。GT500参戦5年目にしてようやくBS陣営のインパルに移籍し、本領を発揮できる場を得た。「タイヤ開発はコミュニケーションが大切。カートで知っているエンジニアの方もいるし、タイヤの情報などもうまく伝えられている」。チームが躍進するカギを握る存在だ。

 勝負をかける今年2回目の富士大会は第2戦の1・5倍以上、約800キロもの距離を走る今季一番の長丁場。「うちは決勝のペースが良いので、距離が長ければ長いほどプラス。タイヤも感触が良かった前回の富士をベースに改良してもらった」。表彰台の真ん中しか見据えていない。

 今季のインパルは目覚ましい活躍は見せていないが、車もタイヤも調子は上向き。富士で勝負をかける。