23年ぶりのタイトル奪取へ
インパルのカルソニックGT―Rが霊峰富士に今季初Vを誓う(日産提供)
インパルのカルソニックGT―Rが霊峰富士に今季初Vを誓う(日産提供)
 スーパーGTのGT500クラスに参戦するインパルの星野一義監督(71)がシリーズ第5戦の富士500マイル(5日決勝)で恩に報いる必勝態勢を敷く。1982年から支援を受ける自動車部品メーカー「カルソニックカンセイ」が8月25日に創立80年を迎えるため、何としても今季初勝利を挙げたい。今季前半戦は4戦を終えて総合首位から17ポイント差の10位と力を出し切れていないが、大事な1戦を制して最終目標となる23年ぶりのタイトル奪取に挑む覚悟だ。

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 ここだけはどうしても負けられない。インパルは今年も満足できるシーズンを過ごしてはいないが、星野監督は今までの恩に報いたい気持ちでいっぱいだ。

 「ホンダやトヨタ(レクサス)が速くなっているが、長い間お世話になっている。とにかく良いイメージを残したい」

 日本ラヂエーター時代の1982年からレース活動を支えてもらうカルソニックカンセイとの提携は今年で37年目。一企業が1つのチームをこれだけ長くサポートするのは世界的にも珍しい。星野監督も「こんなに長くフォローしてもらっているスポンサーに足を向けて寝られない」と漏らすほどだ。

 その恩義あるスポンサーが8月に創立80年を迎える。義理堅い星野監督ならずとも結果で恩返ししたいところ。今季の開幕前には「80周年の記念に優勝トロフィーを渡したい」と1995年以来23年ぶりのタイトル奪取を誓った。

 しかし、ここまでは思うように事が運んでいない。「今年もかなり頑張っている。今まで以上にやっているが、どうも流れに乗り切れていない。勝てるときはすいすい勝てるものなんだが…」。2016年の第5戦を最後に勝利から見放されている状況を脱するため、チームは一丸となって奮闘するが、どうしても結果がついてこないのだ。

 そんな負の連鎖から脱するには、8月の富士大会は持ってこい。最後の勝利は2年前の8月に開かれた富士だった。「ここだとGT−Rでも何とか戦える。レースは何が起きるか分からないし、ピットイン、アウトも完璧にやりきりたい」。決意を込めて大事な1戦を見据えた。

 今年は真夏の富士が500マイルの長丁場となる。車の速さだけでなく、ドライバーやメカニックを含めたチームの総合力が問われる。「長ければ長いほどいい。トラブルが出る心配はないだろうし、うちの車はレースペースが速いから」。チームと車の相性が良い真夏の富士を制し、久しぶりにタイトル争いに名乗りを上げたいところだ。

 「俺の名誉なんてどうでもいい。カルソニックカンセイさんの80周年に、どうしても記念のトロフィーを渡したい。チャンピオンを取って恩返ししたい。とにかく頑張る。てっぺんを狙って、いい涙を流したい」。現役時代から脈々と続く信頼関係を王者という形に残したい。そのためにも富士でひと暴れだ。

チーム士気高まる、佐々木&マーデンボロー

恩のある「カルソニックカンセイ」の創立80年を祝う富士制覇に挑むインパルの星野一義監督(左)。今季から加入の佐々木大樹(右)も気合十分(日産提供)
恩のある「カルソニックカンセイ」の創立80年を祝う富士制覇に挑むインパルの星野一義監督(左)。今季から加入の佐々木大樹(右)も気合十分(日産提供)
 チームの士気の高まりはドライバーもひしひしと感じている。今季から加入した佐々木大樹(26)は「車とタイヤはどんどん良くなっている。前戦タイ大会もぶつけられるまでうまく戦えていた」と上り調子をアピール。今季は天候不順の影響で予選で思うような結果を残せず、それが決勝に尾を引く悪循環に陥っているが、状態は決して悪くない。

 加入2年目を迎えたヤン・マーデンボロー(26)=英国=は「とにかく富士のレースに集中していきたい」と気合が入る。テレビゲームの世界大会を制してリアルレーサーの世界に飛び込んだ異色のキャリアだが、アグレッシブな走りが星野監督のお気に入りだ。

 佐々木は「上位とのポイント差がないので、タイトル争いに加わるにはここが勝負所」。富士の優勝にとどまらず、王者を見据えた。

カルソニックカンセイ、80年の歴史

「カルソニックカンセイ」は今年37年目のサポート。カルソニックーブルーのGT―Rはシリーズには欠かせない存在だ(日産提供)
「カルソニックカンセイ」は今年37年目のサポート。カルソニックーブルーのGT―Rはシリーズには欠かせない存在だ(日産提供)
 カルソニックカンセイの出発地点は1938(昭和13)年8月25日に設立された「日本ラジエーター製造株式会社」。52年に社名を「日本ラヂヱーター株式会社」に変更し、54年から日産自動車の資本参加を受け、同社の自動車ラジエーター製品全ての生産を担うことになった。

 80年に「日産純正M型・カーエアコン」の販売を開始し、悲願だった国内オプションエアコン事業に参入。81年には全車共通で使える本体共用キットを採用した「Mシリーズ」を発売して国内のカーエアコン普及に貢献した。

 会社や製品の認知度向上を目指した82年、インパルに対してモータースポーツのスポンサーを開始。広報活動に加え、熱交換機や空調機の開発フィードバックも進める。また、自動車産業の一員として、車の魅力を伝える活動を現在まで続けている。

 88年には社名を「カルソニック株式会社」に変更した。業態が熱交換、排気、空調、電子システムなど多岐に渡り、国際化も進んだことで創立50年の8月25日に実施。

 2000(平成12)年には、1956年に「関東精器株式会社」として設立された車の各種制御システムなどを開発する「カンセイ」と合併。4月1日に「カルソニックカンセイ株式会社」が発足した。

 05年に日産自動車の連結子会社となり、17年には米投資会社が出資する「CKホールディングス」の100%子会社となる。

82年8月富士から、インパルとカルソニックの歩み

 カルソニックカンセイが初めて現役時代の星野監督をサポートしたのは、1982年8月に富士スピードウェイで開かれた「RRC富士チャンピオンズレース」にスーパーシルエットと呼ばれたグループ5車両の「ニチラインパル日産シルビアターボ」として支援した時から。それを皮切りに今日に至るまで脈々とチームを支援し続けてきた。

 インパルと歩みを共にしただけに参戦カテゴリーも多岐にわたる。全日本スポーツプロトタイプカー選手権や全日本ツーリングカー選手権、スーパーフォーミュラなどチームが出場した主要カテゴリーほぼ全て。

 スーパーGTは前身の全日本GT選手権(JGTC)がスタートした1994年からメインスポンサーとして活動し、「カルソニックGT−R」としてエントリーする車名は同シリーズには欠かせない存在となった。

 ただし、タイトル獲得からはしばらく遠ざかっている。JGTCが本格的に始まった94、95年に連覇を果たしたが、それ以後は2015年の総合2位が最上位。今年は23年ぶりのタイトル奪還にチームとスポンサーが一体になる。