最終戦もてぎGT500
12ポイント差の総合3位につけるauトムスのLC500(左)必勝態勢で最終戦に挑むauトムスの関口雄飛(トヨタ提供)
12ポイント差の総合3位につけるauトムスのLC500(左)必勝態勢で最終戦に挑むauトムスの関口雄飛(トヨタ提供)
 KeePerトムスの平川亮(24)/ニック・キャシディ(24)=ニュージーランド=組(レクサスLC500)がスーパーGTの最年少シリーズ連覇に狙いを定めた。10月の前戦オートポリス(熊本県)で待望の今季初勝利を挙げて首位のチームクニミツにポイント数で並んだ。最終戦はチームにも車両にも相性が良いツインリンクもてぎ(栃木県)。前でゴールした方が戴冠するマッチレースを必ず制する覚悟だ。

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息ぴったりの24歳コンビ

スーパーGTの最年少連覇を狙うKeePerトムスのニック・キャシディ(右)と平川亮(中)。左は関谷正徳監督=優勝した第7戦で(トヨタ提供)
スーパーGTの最年少連覇を狙うKeePerトムスのニック・キャシディ(右)と平川亮(中)。左は関谷正徳監督=優勝した第7戦で(トヨタ提供)
 絶対に負けられない。首位と同ポイントで最終戦に挑むKeePerトムスの2人はライバルだけを見据えて戦う。

 「100号車(クニミツ)だけを見てレースをすればいい。うちのクルマはもてぎと相性が良い。それを信じて戦う」

 SGT参戦5年目を迎えた平川の気持ちにぶれはない。今季も昨年獲得したシリーズ最年少コンビでの王者を守るため、67ポイントで並ぶライバルの目の前でゴールすることだけを見据える戦略を胸に秘めた。

 チームとコースの相性も良い。昨年は予選3番手から2位でゴールして戴冠し、アンドレア・カルダレッリ(イタリア)とのコンビだった2015年はポールtoウイン。チームは晩秋に開かれるもてぎのコンディションを巧みに読んで最適なタイヤを選び、車体調整も的確に合わせくる。連覇に向けて心強いサポートだ。

 コンビを組むキャシディはKONDOレーシングで参戦するスーパーフォーミュラ(SF)で、1ポイント差で総合2位に終わったばかり。SGTでも対峙(たいじ)するライバルはSFと同じ山本尚貴。どうしても力が入ってしまうはずだ。

 「昨年も同じような状況で最終戦を迎え、2位に入ってチャンピオンになったことが自信になっている。(今年も)こんな状況で最終戦を迎えられることに感謝しているよ」

 タイトル争いをして最終戦に挑めることに感謝するが、心の底には雪辱の思いは強いはず。SF最終戦では終盤に猛烈な追い上げで0・654秒差まで山本を追い詰めた。直後にツイッターで「男は終わりなんて言わないものだ。全力を尽くしたが1ポイント足りなかっただけ。チームやみんなのサポートに感謝する」と男らしく締めたが、続けて負ける訳にはいかない。

 10月上旬に開かれたもてぎの合同テストではNSX勢が軒並み下位に沈んだ。車体の空力性能が優れているとされるが、ストップ&ゴーと呼ばれるもてぎのコース特性ではそのメリットを生かせないという。そのことはKeePerの2人も理解しており、精神的な余裕を生んでいるはずだ。

 昨年からコンビを組む平川とキャシディの相性はぴったり。24歳の同い年で、互いにその速さをリスペクト。レース週末では何かと2人で過ごすほど仲も良い。そのコンビネーションを生かし、必ずタイトル争いに勝利してみせる。

 ★最終戦のウエートハンディなし SGTは基本的に獲得ポイント数の2倍に当たる重りを搭載して戦うウエートハンディ制を導入しているが、最終戦はウエートなしのガチンコ勝負となる。1戦前の第7戦もウエートを半減して戦うなど、シーズン終盤戦はチーム本来の力を発揮できるようになっている。ただし、全戦出場していない場合は出場数に応じたウエートを搭載する。

auトムス関口「全然諦めていない」

クニミツと同ポイントで最終戦に挑むKeePerトムスのレクサスLC500(トヨタ提供)
クニミツと同ポイントで最終戦に挑むKeePerトムスのレクサスLC500(トヨタ提供)
 わずかに残る可能性にかけるしかない。総合首位から12ポイント差の同3位で最終戦に挑むauトムスの関口雄飛(30)には、勝利しか道は残されていない。

 「心の底から逆転チャンピオンを狙っている。全然諦めていない。やってやるよ!」

 ツイッターに載せたコメントは強気一辺倒。例え狙い通り勝利をつかめても、同ポイントで並ぶ上位2台がともに4位以下に沈まなければタイトルが転がり込まない逆境ながら、攻め続ける覚悟を決めた。

 コンビを組む中嶋一貴(33)はトヨタの一員として参戦した世界耐久選手権の開幕戦と日程が重なった第2戦を欠場しため、タイトルの権利を残すのは関口のみ。同じトムスのKeePerが首位と同ポイントで並ぶ複雑な状況ながら、思い切り戦うことに変わりはないのだ。

 大好きな言葉は「最後まで諦めない」。どんな逆境に追い込まれても、攻め続ける切れた走りにファンは多い。コンビを組むドライバーとの共同作業という側面が多いSGTでも、関口の突出した速さはドラマを呼ぶ。7月の第4戦タイ大会では予選10番手から猛烈な追い上げで優勝争いに絡み、最後は残り1周でガス欠で止まったことは記憶に新しい。とにかく劇的なのだ。

 同僚の中嶋は今年6月の仏ルマン24時間レースでついに頂点に立った。何度となく勝利に迫りながら不運に泣かされ続けてきたが、そんな不運の連鎖を自ら断ち切った。「僕にはチャンスはないが、(関口には)まだ可能性は残っている。勝てば良いのだから−」。何とも肩の力が抜けたコメントながら、妙な説得力がある。

 熱く燃える関口と、沈着冷静な一貴。好対照の2人がもてぎで劇的な幕引きを狙う。

ARTA野尻&伊沢、勝つことだけを考える

17ポイント差の総合4位と旗色は悪いが、逆転王者に挑むARTAのNSX((ホンダ提供)
17ポイント差の総合4位と旗色は悪いが、逆転王者に挑むARTAのNSX((ホンダ提供)
 ARTAの野尻智紀(29)/伊沢拓也(34)組(ホンダNSX)は、かすかな望みを捨てずに最終戦に挑む。首位との差は17ポイント。勝ってライバルが下位に沈むことを待つしかない。

 それでも伊沢は決して諦めない。「可能性がゼロになった訳ではないので、絶対に諦めず勝つことだけ考えて臨みたい」。最後の瞬間が訪れるまで、戦う姿勢は決して崩さない覚悟だ。

 それにしても前戦オートポリスの不運が悔やまれる。総合2位で乗り込みポールポジションも奪った。決勝では路面コンディションの変化でうまくペースを上げられなかったが、5番手争いに踏みとどまっていた。が、47周目のヘアピンで後続車に追突されてスピン。入賞圏外に追いやられてしまった。

 レース直後の鈴木亜久里監督(58)は予想外の結果に無念さをにじませ「最終戦に気持ちを切り替え、良い結果で今シーズンを終えたい」と言うことしかできなかった。GT300クラスのBMW・M6との両クラス制覇という快挙達成も風前のともしびとなったが、5月の第3戦でポールtoウインを飾るなどタイトルを争ったシーズンを勝って締めくくりたい。