少しでもアドバンテージを広げようと逃げたかった
佐藤洋美の8耐ライダー直撃!!(4)YAMAHA-YART 中須賀克行
転倒後も必至にマシンを押してガレージに向かう中須賀。チームメイトの芳賀(左後)も声援を送る
転倒後も必至にマシンを押してガレージに向かう中須賀。チームメイトの芳賀(左後)も声援を送る
 「鈴鹿8時間耐久ロードレース」で00年以来、12年ぶりに驚速ラップを刻みヤマハにポールポジション(PP)をもたらした中須賀克行(31)だったが、決勝ではトップを周回中に自らが転倒を喫し修復作業も実らずリタイア。16年ぶりとなる優勝をヤマハにプレゼントすることはできなかった。11日には鈴鹿の悔しさを胸に世界耐久選手権第4戦「オーシェルスレーベン8時間耐久」に臨んだが、ここでも転倒を喫し12位。悔しい耐久シリーズ2戦を中須賀に振り返ってもらった。(聞き手=佐藤洋美)

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 ―鈴鹿8時間耐久を終えてドイツ8時間耐久(オーシャスレーベン)に参戦。

 中須賀克行「鈴鹿8耐と同じように予選では最速タイム(3人の平均なので予選は3番手)を出して決勝では2位走行中に転んでしまいました。耐久での転倒は3度目で、さすがに3度目はないと思っていたので…。俺って耐久向いてないのかなと落ち込みます」

 ―でも走り切って12位でチェッカーを受けました。

 「マシンを起こして再スタートが切れたので追い上げました。アベレージでは、どのセッションでもベストタイムを記録しながら懸命に走り切りました。耐久は80%の力でリスクを冒さず安定して走ることが求められるけど、自分は100%、それ以上に行こうとしてしまう。その方が集中出来るし、いいレースが出来ると思っているので…。そのへんの力の加減を学ばなければいけないのですが」

 ―でも、100%が中須賀選手の魅力です。8耐でも感動のドラマをたくさん届けてくれました。トップ10トライアルの走りが強烈でした。

 「ありがとうございます」

 ―朝のフリーでマシントラブルがあり、あのトップ10トライアルで乗ったマシンは自分が乗る予定ではないマシンだったと聞きました。

 「レースウイークは、自分が走る時間にトラブルがあったり、確認することがあったりで、思うように走行時間が取れずフラストレーションがたまるウイークでした。あのトップ10トライアルは、8耐の中で唯一自己主張できるセッションなので、毎年、気合を込めて挑んでいます。でも今年はマシンも煮詰めて来たものと違いますしトップ10トライアルに向けてのリズムが刻めていない。この条件の中でどれくらい走れるのかと思っていました」

 ―それでもヤマハ12年ぶりの8耐PP獲得。12年前のPPは芳賀紀行選手で昔の自分を見ているようだと賛辞を送っていました。

 「正直、巧(高橋)が2分7秒台に入れてトップに立ち、ここに追いつけるか?と…。清成(龍一)が2分7秒0を出した時には、抜くのは難しいと思っていました。渾身のアタックでした。ベスト、ベストと来て6秒台が出た時には自分でもびっくり。ヤマハのマシン、ミシュランタイヤが支えてくれたタイムだと思います。8耐直前のトーチュウの取材時に2分6秒8でPPと宣言していたけど、それは紀行さん(芳賀)に励まされての発言だったので自信があったわけではなかった。だから余計に嬉しかったです」

 ―決勝でも勝ちに行く姿勢に多くのファンが魅了されました。

 「逃げたかったんです。少しでもアドバンテージを広げて渡したかった。8耐では序盤の差が後々まで響きます。ここで稼ぎたかった。オーバーペースでした。8耐マシンは一緒に走るライダーたちが乗れるようにポジションもセッティングも自分のものとは違います。その微妙な違いが一瞬の判断を遅らせたり鈍らせたりすることがあるのだと思い知りました。普段なら回避できる転倒をしてしまう。清成も同じだったのではと思います。コンマを争うレースでは、その微妙な違いが転倒へとつながってしまう」

 ―130Rの激しい転倒でフロントホイールは割れパンクと、とてもピットに戻ってくるのは難しいと…。

 「紀行さんが06年の8耐で決勝を走ることが出来なかったので、今年も同じ状況になってしまう。それは出来ないと思いました。なんとしてもピットに戻って紀行さんに走って欲しかった。ピットロードに差し掛かった時に僕の面倒をずっと見てくれている先輩の吉川和多留さんと紀行さん、メカニックが迎えて来てくれていて、皆の顔を見たら涙がこみ上げて来て止まらなくてなってしまいました」

 ―炎天下で40分以上もマシンを押して戻って来た。

 「観客やオフィシャルのみなさんの励ましもありました。ピットロードではライバルのチームも皆がピットの前に出て大きな拍手で迎えてくれました。8耐を戦う皆がメーカーもチームも関係なく励ましてくれたことに感動しました。これが8耐なんだなと思いました。転倒してしまったことは申し訳なくて反省していますが、マシンを必死に押して戻って来たことで8耐に参加している皆で作りあげている8耐の魅力を知ったような気がします」

 ―マシンを修復して芳賀選手も決勝を走ることが出来ました。

 「チェッカーを受けることはできませんでしたが紀行さんもトップを狙ったこと、マシンを押して戻って来たことを認めてくれました。本当に紀行さんはビッグネームなので後輩の僕は緊張しての8耐でしたが、最後は『また一緒に走ろうな』と声をかけてくれました。T・ヒルも『またやろう』と言ってくれました」

 ―後は全日本とMotoGPもてぎ戦ですね。

 「8耐は応援して頂いたみなさんに申し訳ない結果になりましたが、全日本ではタイトル奪回、MotoGPでは上位入賞をめざします」
中須賀驚速ラップ! ヤマハが12年ぶりにPP