FIM世界耐久選手権(EWC)最終戦として初開催
鈴鹿8耐1カ月前特集
全日本オートポリスで今季初優勝を飾り、気分良く3連覇に臨む王者・中須賀=昨年の大会から
全日本オートポリスで今季初優勝を飾り、気分良く3連覇に臨む王者・中須賀=昨年の大会から
 “真夏の祭典”鈴鹿8時間耐久ロードレースの決勝(7月30日)まで1カ月。今年は第40回の記念大会というだけでなく、2輪のFIM世界耐久選手権(EWC)の2016〜17年シーズンの最終戦として初めて開催。年間チャンピオンが生まれる締めくくりの舞台になったことでグレードアップされた。ヤマハが3連覇するのか、ホンダが巻き返すのか。それともカワサキ、スズキの台頭か。4メーカーによる威信をかけての激突に、例年にも増して注目が集まっている。 (佐藤洋美)

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WGPの2人を従えてヤマハから優勝をもぎ取る決意のハルクプロ高橋巧
WGPの2人を従えてヤマハから優勝をもぎ取る決意のハルクプロ高橋巧
◆ヤマハ・ファクトリー 全員が8耐優勝者

 3連覇を目指すヤマハ・ファクトリー・レーシング・チームは、全日本ロードレース選手権で4連覇、6回のタイトルを持つ中須賀克行(35)を中心に、スーパーバイク世界選手権(WSB)のアレックス・ローズ(26)=英国=とマイケル・ファンデルマーク(24)=オランダ=のラインアップ。全員が8耐優勝者で、スーパーバイク乗りのスペシャルチームを結成した。

 今シーズンは転倒続きだった中須賀は、全日本第5戦(6月25日、オートポリス)で優勝を飾り復調ムード。一方、野左根航汰の代役で参戦(14位)したファンデルマークは「鈴鹿8耐のためにいい経験ができた」と笑顔。中須賀も「マイケルは僕のポジション、セッティングで違和感なく乗ってくれた。自分自身、勝つことができて、鈴鹿8耐にいい弾みがついた」と成果を強調した。


◆ホンダ・ハルクプロ モト2中上ら起用

 一方、この2年ヤマハにやられっぱなしのホンダは体制強化を図る。エースチームのハルクプロ、634号車には高橋巧(27)に、ロードレース世界選手権(WGP)モトGPのジャック・ミラー(22)=オーストラリア=と、モト2の中上貴晶(25)を配した。高橋は鈴鹿8耐で過去3勝を挙げており、8耐経験の少ない中上、初挑戦のジャックをまとめて4勝目に挑む。

 高橋は今年モデファイされた新型マシンを駆り全日本(JSB1000)で絶好調。開幕2連覇を飾り、第4戦もてぎでも2位、第5戦オートポリスはトップ争い中にトラブルでリタイアしてしまったが、本人の力量に陰りはない。8耐では過去2年アクシデントでリタイアが続いているだけに「最後まで走り切って力を示したい」という気持ちは誰よりも強い。
渡辺一馬の走り
渡辺一馬の走り
◆カワサキ・チームグリーン エース渡辺&ハスラム

 昨年の鈴鹿8耐で2位と躍進したカワサキのチームグリーンは、渡辺一馬(27)をエースライダーに迎え、昨年2位の原動力となった英国スーパーバイク(BSB)のレオン・ハスラム(33)=英国=を継続し、第3ライダーにはアジアロードのスターライダー、アズラン・シャー・カマルザマン(32)=マレーシア=を起用する。1994年以来の勝利を狙うカワサキに加入したばかりの渡辺は全日本では表彰台に食い込む力を見せており「まだまだマシンのポテンシャルを発揮しているとは言えないので、鈴鹿8耐にはしっかりと引き出して優勝を狙える状況にしたい」と意気込んでいる。


◆ヨシムラスズキ ギントーリらに託す

 ヨシムラスズキは鈴鹿8耐5度目の勝利を、津田拓也(32)、ジョシュ・ブルックス(34)=オーストラリア=、シルバン・ギントーリ(34)=フランス=に託す。ギントーリは2014年のWSBチャンピオン。今季は代役ライダーとしてモトGP参戦するなど、その実力は高く評価されている。スズキも新型マシンを投入。津田は「まだマシンが仕上がったとは言えない」と調整に苦心しているが、全日本では確実に表彰台に上っている。津田は「ヨシムラファンの熱い期待をヒシヒシと感じています。チーム一丸となって優勝を目指す」と誓った。
ヨシムラのエース、津田が虎視たんたん
ヨシムラのエース、津田が虎視たんたん
◆復帰組“ミスター8耐”伊藤真一注目

 9年ぶりに鈴鹿8耐に復帰するモリワキ(ホンダ)は、清成龍一(34)と高橋裕紀(32)で悲願の優勝を目指す。また、“ミスター8耐”の伊藤真一(50)が鈴鹿8耐復帰する。ライダーはEWCに参戦していたグレッグ・ブラック(27)=英国=とジョシュ・フック(23)=オーストラリア=のラインアップ。清成と伊藤は鈴鹿8耐で4勝しており、最多優勝記録5勝で1位の宇川徹に並ぶかにも注目が集まっている。
V請負人・清成はモリワキから
V請負人・清成はモリワキから
◆EWC最終戦 スズキVSヤマハ1点差

 EWCは第4戦スロバキアを終了して、最終戦鈴鹿8耐を残すのみ。現在ランキングトップはSERT(スズキ耐久チーム)で、2位はGMT94ヤマハだが、両者はわずか1点差(132対131)。3位のYARTヤマハも105点でまだチャンピオンの可能性を残す。

 そのYARTは、今季ヤマハワークスライダーとなり、全日本ロードでも初優勝を飾るなど上り調子の野左根航汰(21)を有する。野左根はEWC第2戦ルマン24時間耐久からチームに合流、ブロック・パークス(35)=オーストラリア=と、16年ドイツスーパーバイク選手権チャンピオンのマービン・フリッツ(24)=ドイツ=とのトリオで2位を獲得、第3戦オシャースレーベンでも2位、第4戦スロバキアは4位だっただけに鈴鹿8耐で巻き返したいところだ。

 日本人チームとしてEWCにフル参戦するTSRは、EWC参戦メンバーとは違う布陣で8耐に挑む。WSBのステファン・ブラドル(27)=ドイツ、モト2のドミニク・エガーター(26)=スイス=のラインアップだ(第3ライダーは未定)。

 同じフル参戦組のトリックスターは出口修(43)とエルワン・ニゴン(33)=フランス=に、昨年の全日本最終戦でけがを負った井筒仁康(46)が復帰するかに注目が集まる。この3人でEWC開幕戦ボルドール24時間では3位を獲得している。

 これまでEWCチームの監督たちは「ワークス系チームが多く参戦する鈴鹿8耐は、ポイントを取ることさえ難しく世界で一番過酷な耐久だ」と言っていたが、EWCチームの実力はレベルアップしており、今大会ではトップ争いに絡む可能性もある。8耐そのものを狙いに来るスペシャルチームに、EWCのタイトル獲得をもくろむ勢力が入り乱れての夏の激戦。ますますヒートアップしてきた。
EWC参戦中のYART野左根航汰はゼッケン7番。現在ランキング3位だ。
EWC参戦中のYART野左根航汰はゼッケン7番。現在ランキング3位だ。