WGP開幕戦
中上、エースが世界を驚かせる 悔しさかみしめ
モトGP2年目の中上貴晶。初の表彰台に立つことはできるか(遠藤智撮影)
モトGP2年目の中上貴晶。初の表彰台に立つことはできるか(遠藤智撮影)
 もうモトGPルーキーではない。最高峰クラス2年目の中上貴晶からは気迫がみなぎる。結果が伴わなかった昨季の悔しさをかみしめ、新シーズンに打って出る。

 「シーズンのスタートに向けて準備は整った。モチベーションは、とても上がっている。開幕戦がとても楽しみ」。オフシーズンに実施された4サーキットでの公式テストでは目標にしていたトップ10入りを果たした。最後にカタールで行われたテストでも8番手タイム。今季の活躍を期待させた。

 今季は2018年型のホンダRC213Vで出場する。旧型ながらチャンピオンマシンに変わりはない。パワーの高さ、アクセル感覚の良さ、車体の安定性ともに好感触を得ており、「僕の乗るマシンは完成されているので、ウインターテストでやることは、自分のセットアップ(車体調整)を見つけ、安定したラップを刻めるようにすること。走ることに集中できるし、本番でも常にトップ10を目標にシーズンを戦う」と目を輝かせた。

 昇格1年目の昨季はランキング20位と目立たなかったが、最終戦バレンシアGPでは雨天の難しい路面状況のなか自己ベストの6位でフィニッシュした。今季の当面の目標はモトGPクラスでは自身初となる表彰台に上がること。日本人の最後の表彰台は2012年バレンシアGPで2位になった中須賀克行(ヤマハ)。優勝となると、04年の日本GPを制した玉田誠(ホンダ)までさかのぼる。

 「今年は自分にとって大きなターニングポイントのシーズン。モトGPライダーとして続けられるかどうかの大事なシーズン。カタールはモト2時代も得意なサーキット。序盤の3戦が大きなチャンス。一戦一戦全力で挑む」

 開幕戦カタールGPでどんな走りを見せてくれるのか。日本のエースが世界を驚かせるか。

 ▼中上貴晶(なかがみ・たかあき) 1992(平成4)年2月9日生まれ、27歳。千葉県出身。2007年の最終戦バレンシアGPで125ccクラスからWGPデビュー。08年からフル参戦。10、11年は全日本選手権を戦い、12年にモト2クラスでWGPにレギュラー復帰。16年オランダGPで初優勝し、17年イギリスGPで2勝目。昨季、モトGPクラスに昇格し、ランク20位。

 ◆モトGP 旧500ccクラスから2002年に名称変更。4ストロークエンジンに限定され、現在は排気量1000ccの4気筒で争われる。使用できるエンジン数は年間7基でシーズン中のエンジン開発は禁止されているが、ポイント獲得が規定に満たないメーカーには優遇措置がある。タイヤはミシュランのワンメーク。今季はホンダ、ヤマハ、スズキ、ドゥカティ、アプリリア、KTMの6社が参戦する。

佐々木、大ブレークの予感

カタール公式テストを走る佐々木歩夢。今季こそブレークだ(ドルナ提供)
カタール公式テストを走る佐々木歩夢。今季こそブレークだ(ドルナ提供)
 グランプリライダーとして表彰台に立つことの重要性は知り尽くしている。モト3でレギュラー参戦3年目を迎える佐々木歩夢は有言実行で臨む。

 「今年の目標は、まずベストリザルト(7位)の更新と初表彰台獲得。とにかく表彰台に立たないことにはチャンピオン争いに加われない」。登竜門カテゴリーのアジアタレントカップ、ルーキーズカップでチャンピオンを獲得。2017年にはモト3でルーキータイトルも手にした。今季は優勝争いに加われるライダーであることを自ら証明しなければならない。

 「フィジカル面では全く問題はない。あとは小さなミスをなくすこと。昨年はぶつけられたり不運の転倒もあったりしたが、そういうところを走っている自分がいけない。まだ力が足りていない証拠」と自らを戒めた。

 今季もマレーシアGPを開催するセパン・インターナショナル・サーキットが運営する「ペトロナススプリンタレーシング」からの出場だが、自身のチーフメカニックに昨季までチームメートを担当していたフランス人のティボー・グラビエ氏が就いた。そのおかげで、これまでとは違う取り組みができるようになったという。

 「ティボーとやるようになって、トップライダーたちがミーティングに長い時間をかける意味が分かってきた。今年はいいチームだと思う。みんなが1番になろうと気持ちが1つになっている」。あらゆる項目について細かく指摘を受けており、そこからヒントを得ることもあるという。

 モト3で日本人が表彰台に立たなくなって久しい。2010年のドイツGPで小山知良(当時KTM)が2位に入ったのが最後だ。佐々木が2019年を大ブレークのシーズンにする。

 ▼佐々木歩夢(ささき・あゆむ) 2000(平成12)年10月4日生まれ、18歳。神奈川県出身。16年のマレーシアGPでモト3クラスからWGPデビュー。17年から同クラスにフル参戦し、ルーキータイトルを獲得。2年連続でランク20位。決勝最上位は7位。父の慎也さんも元グランプリライダー。

 ◆モト3 旧125ccから2012年に名称変更。4ストロークの排気量250cc単気筒エンジンに限定され、今季はホンダとKTMの2メーカーがバイクを供給。エンジン回転数も上限が毎分1万3500回転に制限されている。タイヤはダンロップのワンメーク。参加選手の年齢制限があり、1月1日時点で28歳以下。ワイルドカード(地元推薦枠)での出場者は25歳以下。

長島、心機一転上位うかがう

今季でレギュラー参戦3年目。意地でも初優勝をもぎ取る(ドルナ提供)
今季でレギュラー参戦3年目。意地でも初優勝をもぎ取る(ドルナ提供)
 モト2クラスの長島哲太は心機一転のシーズンを楽しみにしている。チームも2017年に所属したスペインの「SAGチーム」に移籍。エンジンも一新されて大きな変化を実感した。

 「今年は面白いシーズンにしたい。とにかく、乗っていてすごく楽しい。走りに幅が生まれた」

 モト2クラスは全車共通のエンジンがホンダ製の4気筒600ccからトライアンフ製の3気筒765ccに変更。モトGPクラスで使用するマニエッティマレリ社製のエンジン・コントロール・ユニット(ECU)が採用されたことで、制御の幅が広がり、最高峰クラスに近い走りができるようになったという。

 「トライアンフ・エンジン1年目。全員が同じ条件。大きなチャンスになる。今年は結果を求められる。一戦一戦ベストを尽くしたい」

 自身の決勝ベストは昨季のタイGPで記録した8位。何ごとにも全力で挑むことを身上にしており、「開幕戦カタールGPではまずは自己ベスト更新」。めりはりの利いた走りで上位争いに加わる。

 ▼長島哲太(ながしま・てつた) 1992(平成4)年7月2日生まれ、26歳。神奈川県出身。2013年の日本GPでモト2クラスからWGPデビュー。14年からレギュラー参戦。15年にシートを失うが、16年にGP復帰。昨季はホンダチームアジアでランク20位。決勝最上位は8位。

 ◆モト2 旧250ccから2010年に名称変更。モトGPも戦うKTMや独カレックス、伊MVアグスタ、日本のNTSなど複数のメーカーが車体を供給しているが、エンジンについては全車共通。昨季まではホンダ製の排気量600cc4気筒が使用され、今年からトライアンフ製の同765cc3気筒に変更された。タイヤはダンロップのワンメーク。

   ◇ ◇ ◇

◆鳥羽、本番で結果残す

 ホンダチームアジアで3年目のシーズンを迎える鳥羽海渡(18)=ホンダ=は是が非でも結果を残す。

 「最後のカタールのテストでもいい感じだった。大事なのは本番でどれだけやれるか」

 昨季は開幕戦カタールGPで7位とまずまずのスタートを切り、第7戦カタルーニャGPで自己ベストの6位。前半戦だけで3度のシングルフィニッシュを果たしたが、その後は苦戦が続いた。チームはホンダの育成選手を起用しており、同じクラスを3年続けるのは難しい状況ながら、青山博一監督の強い推薦で「あと1年」に懸けることになった。

 登竜門のアジアタレントカップの初代チャンピオンで、レプソル国際選手権のモト3クラスでも日本人初優勝を果たした経歴の持ち主。開幕戦で波をつかむ。

 ▼鳥羽海渡(とば・かいと) 2000(平成12)年4月7日生まれ、18歳。福岡県出身。17年の開幕戦カタールGPでモト3クラスからWGPデビュー。昨季はランク22位。決勝最上位は6位。 

◆小椋、がんがん行く

 今季から待望のレギュラー参戦を果たした。鳥羽海渡の新チームメートとなった小椋藍(18)=ホンダ=は同じ日本人ライバルに追いつき追い越せの構えだ。

 「1年目だから勉強のシーズンなんて思わない。どのサーキットでもがんがん行く。目標はどの大会でもベストを尽くすこと」。鳥羽のほか、佐々木歩夢、真崎一輝はいずれもミニバイク時代からのライバル。1人だけ遅れてのフル参戦となるが、ライダーの評価は互角だ。

 昨季はレプソル国際選手権に参戦するかたわら、ワイルドカード(地元推薦枠)でWGPのモト3クラスに計4戦に出場。デビュー戦となったスペインGPで15位に入り、初ポイントを獲得。非凡な走りでホンダチームアジアのレギュラー枠をつかんだ。

 小椋の存在が日本人ライダーたちの走りをさらに熱くさせる。

 ▼小椋藍(おぐら・あい) 2001(平成13)年1月26日生まれ、18歳。埼玉県出身。昨季のスペインGPでモト3クラスからWGPデビュー。ワイルドカード(地元推薦枠)で計4戦に出場。決勝最上位は15位。今季からフル参戦。

◆真崎、テストで自信

 日本人ではただ1人、KTM製バイクでの参戦だ。モト3クラス2年目となるRBAボエの真崎一輝(18)は今季の飛躍が期待される。

 「昨年は準備不足と初めて経験するサーキットも多く、なかなか結果につなげられなかった。今年はしっかりテストで走れたし、自信はある」

 チームの本拠地はスペイン。もともとはホンダの育成ライダーだが、昨季の開幕前に同チームで欠員が出たことから急きょ選手契約を結んだ。入賞5回でランク31位と苦しんだが、1年間グランプリで走った学習効果で巻き返しを期す。

 2017年には佐々木歩夢に続いて登竜門のルーキーズカップでタイトルを獲得した実力者でもある。まずはシングルフィニッシュを果たし、上位争いにも加わる。

 ▼真崎一輝(まさき・かずき) 2000(平成12)年8月22日生まれ、18歳。福岡県出身。17年の最終戦バレンシアGPでモト3クラスからWGPデビュー。昨季からフル参戦し、ランク31位。決勝最上位は10位。

◆鈴木、今季で卒業だ

 モト3クラスでは21歳ながら日本人最年長。参戦5年目となるSIC58の鈴木竜生は今季を最後に、このクラスから卒業したいと考えている。

 「(開幕前の)テストも終わり、これからがバトルの時間」

 チームに加入して3年目のシーズン。待望のホンダ製バイクで戦い、過去2年はともに決勝最上位が4位でランクも14位。獲得したポイントも2年連続で71ポイントだった。そのため、今季に向けてはモト2クラスへ昇格するかどうかで悩んだが、「モト3でしっかり結果を残してから」とチーム残留を選んだ。

 昨季の開幕戦カタールGPでは予選で転倒し、右手首を骨折。決勝を欠場した。今季はスタートダッシュをしっかりと決め、初表彰台、初優勝を着実に奪いにいく。

 ▼鈴木竜生(すずき・たつき) 1997(平成9)年9月24日生まれ、21歳。千葉県出身。2015年の開幕戦カタールGPでモト3クラスからWGPデビュー。昨季はランク14位。決勝最上位は4位。

古巣SAGに移籍して心機一転の長島哲太(ドルナ提供)
古巣SAGに移籍して心機一転の長島哲太(ドルナ提供)
◆山中琉聖、開幕緊急デビュー


 日本人6人目のモト3ライダーとして山中琉聖(りゅうせい、17)が開幕戦に緊急デビューすることになった。チームエストレージャガリシアのレギュラーに起用されたセルジオ・ガルシア(スペイン)の代役で1戦にのみ出走する。ガルシアは今月22日が16歳の誕生日で開幕戦は16歳以上と定める出場資格を満たしていない。山中はこれまで海外登竜門シリーズのアジアタレントカップ、ルーキーズカップの参戦経験があり、「あまりナーバスにならずに集中して頑張りたい」と緊張の面持ちだ。
開幕直前の公式テストで好調だった鳥羽海渡(ドルナ提供)
開幕直前の公式テストで好調だった鳥羽海渡(ドルナ提供)
フル参戦1年目の小椋藍(ドルナ提供)
フル参戦1年目の小椋藍(ドルナ提供)