2009年 若武者の健闘
祥也感動をありがとう
 ロードレース世界選手権(WGP)の日本GPは、1999年に鈴鹿サーキット(三重県)からツインリンクもてぎ(栃木県)に舞台を移した。2000年から03年までの4年間は鈴鹿で日本GP、もてぎでパシフィックGPと2大会が行われ、04年からもてぎだけの開催となり、日本GPの舞台として定着した。これまで数々の名勝負が繰り広げられたが、本紙でおなじみの遠藤智さんが撮った会心のショットを中心に思い出をつづってもらった。 (ペン&カメラ=遠藤智)


 250ccクラス(現モト2クラス)に富沢祥也がデビューしたのは2009年だった。開幕戦カタールGPでは12位。ホンダとアプリリアのワークスマシンが上位を独占する中で、ポテンシャルが劣る市販レーシングマシン「ホンダRS250R」にキットパーツを組み込んだバイクで奮闘した。迎えた第2戦の日本GPでは、初日のフリー走行はエンジントラブルのためほとんど走れず25番手。土曜日の予選が雨の影響でキャンセルになりフリー走行の順位でグリッドが決まり、決勝を迎えた。しかし、最後尾から素晴らしい追い上げた見せた富沢は10位でチェッカーを受けた。

 翌10年、2ストローク250ccエンジンを搭載した250ccクラスに代わり、4ストローク600ccエンジンを搭載したモト2クラスがスタートする。開幕戦カタールGPでモト2の初レースを制した富沢は、第2戦に予定されていた日本GPも当然のように優勝候補の筆頭に浮上。だが、アイスランドの火山噴火の影響でヨーロッパから飛行機が飛べない事態となり、大会は秋に延期になった。

 その年のサンマリノGPで富沢は不慮の事故でなくなり、日本GP出場はかなわなかった。写真は、2009年日本GPで10位になったときのもの。もう1枚は10年、日本GPが延期になり羽田空港からチームの本拠地があるフランスに戻るときのものだ。もし延期にならなければ、優勝していたかもしれないと今でも思う。

2017年 マルケス VS ドビツィオーゾ

雨中の熱闘最終コーナーのドラマ

 2017年、雨の中で繰り広げられたマルク・マルケス(93号車)とアンドレア・ドビツィオーゾ(04号車)の優勝争い。それまでも、この2人が最終ラップ最終コーナーまで繰り広げた戦いは何度もあるが、このレースは、日本GP史上屈指の名勝負になった。このとき、僕は最終コーナーで撮影していたが、最終ラップまでそこを動くことができなかった。普通はゴールシーンを撮るために場所を移動していくのだが、ドラマはここで起きるという確信があった。

 V字から立体交差を抜けて左、そして右へと切り返してビクトリーコーナーに向かう。先行するドビツィオーゾをアウトから抜いたマルケス。しかし、マルケスは前に出るも止まりきれず。ドビツィオーゾがクロスラインで立ち上がって先着するという、最高のレースだった。

 このレースは3日間雨が降り続いた。朝レインコートを着て、カメラを持ってコースに出る。一日のスケジュールが終わるまでレインコートを脱ぐことはなかった。それが3日間続いた。グランプリ取材フル参戦30年のキャリアの中で、これほど雨が続いたレースはない。観客もカメラマンもつらくて冷たかったが、それだけに身も心も熱くなるレースだった。

2017年 霧かすむ王者の背中

幻想的で大好きな一枚に

 雨が降り続いた17年の日本GP。もう1枚のベストショット。雨の中を走るマルク・マルケス。幻想的な写真になり、大好きな1枚になった。

2006年 青山博一涙の優勝

意地の連覇にもらい泣き

 06年の日本GPでKTMに乗る青山博一が250ccクラスで優勝した。前年はホンダで勝ったが、この年は「KTMに乗ったら勝てない」と言われながらの連覇。意地の優勝で、表彰台で見せた青山の涙に誘われてあんなにもらい泣きしたことはなかった。09年にホンダに復帰した青山は250ccのタイトルを獲得する。以後、日本人チャンピオンは出ていない(このシーンと下の2004年の表彰台は僕も確かに撮ったが、探すことができず、赤松孝さんの写真を拝借した)。

2004年 日本勢歓喜の表彰台

ロッシ BSタイヤに関心

 04年は玉田誠(ホンダ)=写真(中)=が優勝、バレンティーノ・ロッシ(ヤマハ)=同(左)=が2位、中野真矢(カワサキ)が3位。最高峰クラスで2人の日本人選手が表彰台に立った。このとき会見場でロッシは、優勝した玉田に「手を見せてくれ」と言い、手のひらにマメがまったくできていないことに驚いたという。ブリヂストン(BS)タイヤはスムーズに走るためバイクを力づくで制御する必要がなく、手にマメもできない。ミシュラン全盛の時代にBSがメキメキ力をつけていた時代。玉田の快走、そして手にマメのできないタイヤに、王者ロッシが異様な関心を示していた(写真は赤松孝撮影)。


2007年 開幕前プレイベント
◆新宿駅東口3000人超の熱気
 2007年日本GPの開幕前のプレイベントが新宿東口で行われた。参加したのはケーシー・ストーナー(ドゥカティ)、バレンティーノ・ロッシ(ヤマハ)、中野真矢(ホンダ)、玉田誠(ヤマハ)ら10人のモトGPライダー。開始40分前に配布した整理券1000枚があっという間になくなる盛況で、3000人以上が新宿駅東口ステーションスクエアを埋め尽くした。

 グランプリの取材でいろんなイベントが行われたが、人の数の多さでは、このイベントが、おそらく史上No.1だと思う。今でもあの会場の熱気を思い出す。しかし、締め切り間際の開催で写真を送り、原稿を書く場所を探すのが大変だった記憶もある。