’95第5戦ドイツGP編
スペイン暮らしのノリックも、ヨーロッパ生活にはまだ慣れていないとか(カメラ=竹内秀信)
スペイン暮らしのノリックも、ヨーロッパ生活にはまだ慣れていないとか(カメラ=竹内秀信)
 予選中にウサギと衝突するという貴重な? 経験をした阿部典史。予選、決勝と成績は満足のいくものではなかったが、難しいコースに悪戦苦闘しながらも、何とかこなせるようになった。ノリックはニュルブルクリンクでプロとして何を学んだのか。
 レースが終わってすぐにフランクフルトの空港近くのホテルへ移動。月曜日のお昼の飛行機でバルセロナへ帰ってきた。今、夕方。といっても今日は天気が良くて太陽も高くて、日本だったらお昼過ぎって感じ。

 おなかがすいたのでおモチを食べて、レストランが開く9時をじっと待ってるところなんだ。僕の家は、バルセロナから南に車で30分ぐらい走ったシーチャスという観光地。家の真ん前が海で、トップレスの人たちが砂浜に寝そべっていたりする。

 めちゃくちゃに寒かったドイツGPから帰ってくると、ホント、天国のような所だ。これでレースの結果が良かったら、もっと気分はいいんだろうなあ。

 ドイツGPの3日間を振り返ると、初日はあんまり良くなくて、2日目はまあまあの出来。ウサギをひいてビックリって事件もあったけど、そんなに悪くはなかった。ワークス勢の中でもビリ(10位)だったのはやっぱり残念だったけどね。

 でも、今回から僕にとっては初めて走るサーキットばかり。もっともっと苦労すると思っていたから、決勝で予選よりも速いタイムでずっと走れたのはうれしかった。結果は8位だけど、ちょっとだけ成果はあった。

 レースの後、ケニーさんも今回は「毎日、トレーニングしろ」と、たったひと言だけ。本当は、「どうして遅いんだ。どうしてもっと速く走れないんだ」って言いたかったんじゃないかな。だって、それは僕も同じ気持ちだから。

 そんなに遅くはないのに順位が悪い。原因は自分でもなんとなく分かっている。それは、スタートして1周目から5周目ぐらいが遅いからなんだ。どうしてなのか自分でもわからないが、昔は予選の順位に関係なく、1周目からバーンとスピードを上げられた。それで一気に前に出られたのに、最近はそれがない。

 今回も、バロスまではいいペースで追いついたのに、抜けない。序盤のペースと相手の抜き方。これがうまくいかない。次のイタリアGPではこれを克服していかなくてはいけない。

 それにヨーロッパの生活にももっと慣れなければならない。ドイツでは、予選が終わってからスーパーに買い物に行ったら6時半で閉店。何も買えなくて、初日は伊藤(真一)さんに夕食をごちそうになってしまった。チームのホスピタリティーに行けば食事はあるんだけど、やっぱりご飯が食べたくて。

 2日目も伊藤さんと一緒にサーキットの近くのレストランへ。スープとパスタとシュニッツェルをオーダーしたら、お店の人が「そんなに食べるのか」。実際、ものすごい量で、だから「全部食べて驚かせてやれッ」て意地になったけど、やっぱり食べきれなくて、笑われた。

 レストランで思い出したけれど、ヨーロッパではウサギの肉をよく食べるらしい。オフィシャルの人が「夕食にしろっ」って言ったのも、冗談じゃなかったんだよね。僕は食べなかったけど、あのウサギはどうなったんだろう。だれかに食べられたのかな。

 それにしても、ホント、あの瞬間は驚いた。僕がウサギをはねる瞬間を見た人が何人もいて、「すごい音がして、ポーンと飛んでいったんだ」って教えてくれた。

 ピットに戻ってウサギを見せられた時も驚いた。ケニーさんがいいものを見せてやるから来いって言うので付いていったら、「ほらっ」て。思わず「ヒェ〜」って大声が出て、チームのみんなに笑われてしまった。

 死んじゃったウサギはかわいそうだけど、足はまだ痛いし、足の骨が折れなくて良かったなって思っている。

 イタリアGPまで2週間。来週はカタロニアで2日間のテストがある。イタリアGPに向けて頑張らなければ。

■1995年5月24日掲載