’96第5戦イタリアGP編
昨年のムジェロではクリヴィーレ(今回2位)と競り合ったノリックだが、今回は…
昨年のムジェロではクリヴィーレ(今回2位)と競り合ったノリックだが、今回は…
 今季最低の11位。グランプリデビュー以来、コースアウトや転倒といった大きなミスがないレースでは最低順位に終わった阿部典史。スペインGPの転倒リタイアに続き、イタリアGPも苦悩のレースとなった。超〜ヤバイと危機感を募らせるノリックの心境は……。
 全然ダメ。もう、ダメ。まるでダメ。この一言に尽きるレースだった。

 スタートがうまくいかなかった。というよりも、1コーナーの進入でうまく走れなくて前に行けなかった。で、プーチが前にいて、3周目が終わるまでプーチをずっと抜けなかった。すごく遅いペースなのに抜けない。その間に、トップグループにどんどん離されてしまったんだ。

 でも、プーチをもっと早く抜いていたとしても、やっぱりダメだったかもしれない。全然うまく走れなくて、プーチを抜いた後もペースは上がらなかった。

 そのうちにロンボニが追いついてきた。僕とプーチが競っているので、抜くのに手間取っていたみたい。でも抜いた後は超〜速くて、どんどん離されてしまった。

 マシンは悪くはなかった。それなのに予選からとにかくタイムが出ない。超一生懸命走っているのに、全然ダメ。なんでだろうって考えた。考え過ぎて、2日目は体よりも頭が疲れてしまった。

 昨年までは、ダンロップタイヤでセッションの最後に一発の走りができた。だからセッション中の順位はそれほど変わらないと思うけれど、そうやって最後にポーンって順位を上げていたんだ。

 今年はタイヤがミシュランになった。ミシュランはダンロップのように予選タイヤはないから、いつもレース用で走っている。一発のタイムが出せないから予選の順位も上がらない。でも、みんな僕と同じミシュランを使っているんだ。

 ドゥーハンなんか予選でロケットのように抜いていく。同じタイヤだから、僕の言うのは言い訳でしかない。グランプリに初めて来た94年も「みんなだてにグランプリライダーじゃない」と思った。今回もみんな速くて「さすがグランプリライダーだ」って。でも、タイム的にはそれほど速いとは思わない。だから周りが速いんじゃなくて、自分が遅いだけなんだって言い聞かせていたんだ。

 タイヤのコンパウンドを、みんなはGを選択していた。僕は予選でGを試してダメだったので、それよりちょっと硬いR。なのにジュニアもバイルも、それにホンダ、スズキ勢も、みんなGを選んだのは信じられなかった。

 だからといって、僕のRが悪かったわけでもなくて、マシンもこれといって何もトラブルはなかった。だから言い訳なんか何もない。何もないから、余計につらかったんだ。全部、自分のせい。自分が遅いからなんだ。

 今回のレースは疲れた。走っている間はそんなに疲れなかったのに、成績が鬼のように悪かったから、終わってから精神的にどっと疲れた。もう何もしたくないし動きたくもなかった。でも、チームが後片付けをしている時に、スタッフの人にあいさつするためにピットに行った。マネジャーのタッドがいて、長い時間、慰めてくれた。

 まだまだレースはたくさんあるぞって。それにケニー(監督)と話をしたかって言う。してないって言ったら、じゃ話をしろ。きっといいアドバイスをくれるよって言ってくれた。でも、あの日はだれとも話したくない気分だったんだ。

 モーターホームでゴロンと横になったら、日本GPで優勝したことが本当に信じられなくなってしまった。だから、ヤバイ、超〜ヤバイ。次のフランスで頑張らないと本当にマズイ。

 11位は今までで最低の成績だった。立ち直るのにどのくらい時間がかかるか自分でもわからない。でも、今週は火、水とイモラでテストがある。いつでもどこでも日本GPのような走りができるようになりたい。速く走りたい。今はそれだけしか頭の中にはない。

■1996年5月29日掲載