’96第13戦カタロニアGP編
またもコースアウト……。欲求不満の続くノリック
またもコースアウト……。欲求不満の続くノリック
 第9戦イギリス、第10戦オーストリアと連続3位で表彰台に立った阿部典史。今季2度目の優勝の期待がレースを追うごとに高まっていたが、第11戦チェコ、第12戦イモラ(サンマリノ)と連続コースアウト、11位、5位と低迷した。そして迎えた第13戦、ヨーロッパラウンドの最終戦となったカタロニアGPはチームの本拠地。今度こそ優勝――の思いはまたしても……。無念の思いに変わった。
 前回のイモラは予選3番手。今年初めてのフロントローだったのに、今回はまたしても予選がだめ。13番手の4列目スタートになってしまった。

 それでも決勝は、スタートが良くて1周目8番手。前にカピロッシ、後ろに岡田さんと伊藤さんという展開だった。でも、スタートから全然だめだった。ブレーキングして寝かし始めるとフロントがズルッ。まったく寝かせられず、2周目になると大滑らしさせて岡田さんと伊藤さんに抜かれてしまった。

 なんとかついていこうと思って、コーナーの入り口ではゆっくり、立ち上がりで頑張った。それがまた逆効果でよけい滑ってしまう。まったくペースが上がらず、予選よりもタイムは悪かった。岡田さん、伊藤さんはだんだん離れていく。前にいるカピロッシも僕と同じでペースが上がらない。そのカピロッシを5周目の1コーナーのブレーキングで抜こうと思ったら、予想以上にカピロッシのブレーキングが早くてぶつかりそうになった。

 ハードブレーキング。その時にリアが完全にロックして、まるでエンジンが焼きついたようになった。それでコースアウトさせてエンジンを止めた。でも、どうも焼きついてはいないような感じだったので、完全に止まり切らないうちにもう一度エンジンを掛けてみたら、うまく掛かったので取りあえず走ってみようとコースへ戻って再スタートすることにしたんだ。

 エンジンは大丈夫だった。でも、リアが異常に滑ってやっぱりおかしい感じがする。コースに戻った時にはもうだれも見えなかった。2台がすでにリタイアしていたから最下位の22番手。チェコGPと同じパターン。孤独な一人旅になってしまった。

 それでも頑張って最後まで走ろうと思った。1台、また1台……。プライベーターの選手とはラップタイムに差があるのでどんどん追い付いていく。11番手に上がった時には前にはもうワークス勢だけ。10位のラッセルとは10秒ぐらいの差があって、とても追いつけるとは思わなかった。でも、ラッセルは調子が悪くてペースが上がらない。それで最後はラッセルもかわして10位でゴールすることができたんだ。

 それが限界だった。9位のカピロッシとは30秒ぐらい離れていたし、どんなに頑張っても予選と同じ48秒台がやっと。もしコースアウトしなくてもカピロッシの前でゴールするのが精いっぱいだったような気がした。

 こんなに自分の走りができなかったのは今年初めてのこと。がっかりしたというよりも、悔しいというよりも、全力で走れなかったモヤモヤばっかりの、やり切れないレースだった。

 予選から、ずっとこんな調子だった。初日はニューシャーシとニューエンジン。もっとも、シャーシを替えたのでエンジンの方は外側を替えただけって聞いた。つまり、ヤマハが僕の乗り方にあったシャーシをスペシャルで作ってくれたバイクだった。でも、今回が初めてということで、2日目の予選と決勝は今までのバイクで走ることにしたんだ。

 それでも、やっぱりタイムは出なかった。去年は1分47秒台が出ているのに今年は48秒台がやっと。ソフトコンパウンドのタイヤを入れるとグリップはいいのだけどすぐに滑り始める。硬いのを入れると全然グリップしない。決勝前のウオームアップで、もう一度ソフトを試してみたらやっぱりタイヤがもちそうになかった。結局、予選で全然だめだった硬いコンパウンドを選ぶしかなかった。

 でも、ジュニア(ケニー・ロバーツJr)もバイルもカピロッシも同じタイヤを選んでいる。ジュニアはラスト2周で転んだけど、どうだったって聞いたら、タイヤは全然問題なかったって言う。変だった。それでチーフエンジニアのシンクレアさんにコンピューターを見てもらったら、リアサスの動きがやっぱりおかしいって言う。リアタイヤの滑りが、コンピューターでこれほどはっきり分かるのは異常だって。それほどリアがスライドしていたということ。

 原因はサスがおかしかったからなんだと思う。それでも、今回のレースは絶対に勝ちたかった。結局、使わなかったけれど、ヤマハがニューシャーシとニューエンジンを持ってきてくれたのは、やっぱり勝ってほしいから――ということが僕にもヒシヒシと伝わってきたし、もう少しいい走りをしたかった。それに、コースアウトしたのは僕のミス。本当に残念な結果に終わってしまった。

 トップから1分遅れのゴール。チェッカーを受けてから、いつもだったら優勝した選手がすぐに分かるのに今回は不思議だった。だって、こっちではチェカが旗を持って大喜びしているし、あっちではクリヴィーレがスペイン人にどっと取り囲まれている。ドゥーハンも今まで見たことがないほどはしゃいでいるし、どうなってるんだって……。ピットに戻ってきてから、ああ、そうだったのかって納得した。でも、チェカが優勝するなんてどうなってるんだろうと思った。カタロニアがいくら地元だからっていっても、ここだけ速いってのは変。僕だって鈴鹿で優勝しているじゃないかって言われればそれまでだけど、今年のチェカは乗れていなかったし、絶対に優勝は無理だって思っていたから本当に驚いた。

 これで、ヨーロッパラウンドも終わった。もう、残り2戦。今回の教訓は、どんな状態でもタイムを出せないといけないということを強烈に感じた。今回ほど予選からやばいって思ったことはなかったし、この悔しさを次のブラジルにぶつけたい。ブラジルは何たって、初めて表彰台にたったグランプリだから、自分でも期待しているんだ。

■1996年9月18日掲載