第8戦イギリスGP編
ノリック(手前)は今季初のフロントローからロケットダッシュを決めたが……(カメラ=竹内秀信)
ノリック(手前)は今季初のフロントローからロケットダッシュを決めたが……(カメラ=竹内秀信)
 WGP第8戦イギリスGPで、今季最高位の予選4番手からスタートした阿部典史。ホールショットこそPPスタートの岡田忠之に奪われたが、1コーナーでは2番手と絶好のポジションにつけた。しかし、オープニングラップのシケインで痛恨のコースアウト。必死の追い上げを見せたが、6位になるのがやっとだった。今季最大のチャンスを逸した原因は……。
 シーズンオフのテストからずっと感じていたこと、開幕戦からこのチームの最大の弱点だと思っていたことが、今回のレースではっきり出てしまった。それは、僕にはバイクのことを信頼して任せられるチーフメカニックがいないということ。それが今回の失敗につながってしまった。

 前回のオランダGPの予選の転倒で、僕は右足首のじん帯を切ってしまった。そのけがの影響か、ドニントン入りした翌日の予選前日にひどい熱が出た。おなかも痛くて一日寝込んでしまった。2日目の予選、決勝とすこしずつ体調は回復していった。予選を4位で終えた時に、ポジションこそまあまあだけど、タイムは去年の自己ベストにも届いてないし、フロントのフィーリグがおかしいって感じていた。

 これまでは、チーフメカニックがいないということで、僕がすべてセッティングの方向を決めてきた。それで何とかなっていた。でも今回は体調が悪くて、セッティングのことまで十分に頭が回らなかった。チーム・ロバーツやチーム・レイニーにいたころは、バイクのコンディションを伝えれば、チーフメカニツクがすべて方向を決めてくれた。僕のバイクのことだけを考えてくれる人がいないってことが、今回の失敗につながったと思う。

 スタートは悪くはなかった。岡田さんがホールショットを取って、すぐ後ろにつけた。でも、スタート位置がイン側だったのでいいラインが取れなかった。それで後ろにいたジュニア(ケニー・ロバーツ)にすぐにかわされてしまうけど、1周目のコース終盤のシケインまではジュニアの後ろにいた。1周目の、しかもそんなにペースが上がっていない時だっていうのに、なぜかブレーキングで止まりきれなかった。前にいるジュニアに追突しそうになり、避けようとして真っすぐコースアウト。それで大きくポジションを落としてしまったんだ。

 それから必死になって追い上げた。込み合っているときはそんなにペースは上がらなかったけれど、下位の集団を抜けたらスペースができた。どんどん追い上げてセカンドグループに追い付いた。後でテレビを見て知ったのだけれど、トップグループはこの時点で、クリヴィーレと原田さん、岡田さんの3人。少し遅れてビアッジ。少し間隔があいて、その後ろにいたバロスと、トップ集団から遅れたジュニア、そしてボルハという集団の後ろにやっとはい上がってきた。でも、何とか追い付いたなあと思うとまたオーバーランで遅れる。フロントのセッティングに最後まで苦しんだ。

 それでも最終ラップには、この集団のトップに立った。ところがシケインでボルハが強引に突っ込んできて僕の目の前でオーバーラン。それで行き場がなくなってバロスに前に行かれた。何とかボルハは追い抜いたけど結局、6位でゴールすることになった。

 今週は、チーフメカニックの問題を解決するために、チームオーナーの(ルイス)ダンティーンにバルセロナに来てもらって話し合いをする。優勝を狙うには今の体制では難しいということを、あらためて訴えるつもりなんだ。

 それにしても、バルセロナに帰ってきてから、じん帯の切れている右足首がすごく痛んだ。薬で痛みを抑えてきた反動なのかもしれない。次のドイツGP(7月18日決勝)までとにかく少しでも回復させたい。何たってザクセンリンクは僕が得意とするサーキットのひとつ。今年の調子なら優勝は十分に狙えると思うし、そのためにももっとチームのレベルを上げようと、ダンティーンにお願いするつもりなんだ。

■1999年7月7日掲載