’95最終回「95年を振り返って」
原田(右)、治親(左)とともにテレビ出演したノリック。注目度はNo.1で、新旧チャンピオンと並んでも存在感十分。来年こそは大きなことをやってくれそうだ
原田(右)、治親(左)とともにテレビ出演したノリック。注目度はNo.1で、新旧チャンピオンと並んでも存在感十分。来年こそは大きなことをやってくれそうだ
 ノリック手記もいよいよ今回をもって最終回。オフも忙しく飛び回っているノリック。今は新しいトライを頭に描いて、テストを楽しみに待っているという。今季の戦いぶりを振り返って反省しつつ、また成長を確認する毎日でもある。それが来年のステップの礎になるからだ。
 11月中旬に予定されていたスペインのテストがキャンセルになったので、これで少しはノンビリできるかなと思っていたら、これが結構、忙しい。新聞、テレビ、雑誌の取材にスポンサー関係のイベントなどが毎日のようにあって、東に西にと、愛車のポルシェで飛び回っている。もう、走行距離も1万kmを超えて、「日本にほとんどいないのに、いつそんなに乗っているんだ」ってみんなに笑われてしまう。

 6日には、都内のWOWOWのスタジオで「95年ロードレース世界選手権総集編」の収録があって、原田(哲也)さん、(青木)治親と3人で出演した。この時に原田さんが買ったばかりのフェラーリ355に乗ってきたのでちょっと乗せてもらったけれど、やっぱり2人乗りなのでポルシェよりは室内は狭い感じがした。

 話は横道にそれてしまった。で、テレビの収録では、今年のシーズンを振り返った。ハイライトシーンを集めた映像や自分のインタビューを見直すことになったのだが、本当にアッという間の一年だったなとあらためて思った。

 とくに開幕戦の映像は髪も短くて、そのせいか顔も幼く見えるらしい。自分では何にも変わっていないと思うのだけれど、シーズン序盤の映像を見て、みんなに大人になったなって言われた。確かに今年の9月で20歳になった。でも、自分では何にも変わってないと思うし、気持ちの変化もない。ただ、今年一年グランプリを走って、シーズン中も今までにないくらいトレーニングをしたし、体に筋肉もついてきたので、ハダカになれば開幕前とはずいぶん変わったなって自分でも思うことがあるけどね。

 それにしても、今までずいぶんテレビの取材を受けたけれど、今回のようにスタジオであんなに長い時間、収録したのは初めて。お昼に始まって終わったのが5時ごろだった。普段着でスタジオに来てくれと言われていたけど、前日には渋谷に出掛けて服を買った。といっても、やっぱり普段着ているような服装になって、いつもと何も変わらなかったけれど。

 今年の反省点は、やっぱりスタートがヘタだったということ。悔しいレース、残念なレースは、ほとんどがスタートに失敗して転んだりといったパターンが多かった。それに序盤にペースが上がらなかったこと。シーズン序盤には本来の自分の走りに戻ったけれど、中盤戦は本当に遅かった。

 悔しくて忘れられないレースはたくさんある。オーストラリア、日本、チェコはとくに強烈に悔しかった。オーストラリアは自分でもいけると思っていた。それなのにタイヤがズルズルでもうこれ以上ペースが上げられなかった。鈴鹿は、自分でも得意のサーキットだったのに、予選から全然だめで決勝は雨でやっぱり全然だめ。みんなに期待されていたし、自分でも鈴鹿は走り慣れていたサーキットだったから、今、思い出してもつらいレースだった。

 チェコは、今シーズン初めてホールショットを取ったレース。スタートもうまくいってやっと自分の走りができたと思ったのに、やっぱりタイヤが滑り出して転んでしまった。

 その反対に、今年一年で得た成果はいくつもある。初めてのサーキットに慣れるのがすごく早くなったこと。マシンのセッティングも覚えたし、スタッフとのやりとりもかなりスムーズになった。それがうまくいったのがブラジルGPで、チェッカーを受けるまで表彰台に立てるとは思わなかったけれど、久しぶりの表彰台だったし、やっぱりうれしかった。

 来年は、まだ発表はないけれど、僕は今のチームでこれまで通りの体制で走ることになると思う。テストは12月にマレーシアから始まる予定で、年明けからは本格的になると思う。

 来年は、いよいよ2年目。初めてのサーキットもほとんどなくなって、先輩ライダーたちとのハンディもなくなった。今年は、予選の段階からいつもみんなに一歩後れを取っていたけど、来年からは同じスタートラインに並べる。とはいっても、このオフのテストでびっくりするぐらい速くなる選手が必ずいるはず。それ以上に自分も頑張らなくてはいけないし、負けてはいられない。

 今年のオフは、シーズン中にテストできなかったリアのハンドブレーキを試したい。僕はリアブレーキをかなり使うほうなので、右コーナーでは足の位置が問題になる。だから、これがうまくいけば、得意とする左コーナーと同じように右コーナーも走れるかもしれない。

 来年の抱負は、とにかく最初からどんどん表彰台に立てるようになること。優勝できるかどうかはわからないけど、気持ちは今年以上に勝つつもりでガンガン行く。

 今年は、みんなの期待に十分こたえられなかった。だから来年はその分も頑張らなくてはいけないと思うし、自分に納得のいくシーズンにしたい。

 今年一年、応援してくれて本当にありがとうございます。来年も、よろしくお願いします。(構成・遠藤智)
=おわり=

 ◆阿部典史の今季成績◆
 戦 グランプリ    予選    決勝
 1 オーストラリア  4位      9位
 2 マレーシア    6位 16周リタイア
 3 日本       7位      9位
 4 スペイン     6位      4位
 5 ドイツ     10位      8位
 6 イタリア    11位      6位
 7 オランダ     5位      6位
 8 フランス     6位 20周リタイア
 9 イギリス    13位     18位
10 チェコ      4位  6周リタイア
11 ブラジル     3位      3位
12 アルゼンチン  10位      6位
13 ヨーロッパ    8位  5周リタイア


■1995年11月8日掲載