開幕直前編
愛猫・シロを抱き、開幕戦はおろか、全戦Vを誓うノリック(カメラ=遠藤智)
愛猫・シロを抱き、開幕戦はおろか、全戦Vを誓うノリック(カメラ=遠藤智)
 「日本GP」開幕は目前。WGPフル参戦4年目のシーズンを迎えるノリック(阿部典史)独占手記「No Limit」が、シーズン開幕に向けて一足先にスタートする。昨年はランキング7位と、日本人初の500CCチャンピオンを狙うノリックにとっては悔しくてたまらないシーズンだった。が、今年はそんな屈辱をバネに大きいな成長を遂げた。オフのテストではかつてないほどの好調ぶり。全戦優勝を狙う意気込みで、ノリック手記もスタートからアクセル全開だ。
 いよいよ新しいシーズンが始まる。ついこの前までヨーロッパを走っていたような気がするし、まして終盤戦のインドネシアからオーストラリア、そして去年の最後のレースになった11月のTBCビッグロードレースなんて、ほんと、ちょっと前の出来事のような気分。シーズン中はオフになったらあれもこれもといろいろ計画を立てるんだけど、やっぱり、今年も何にもできなかったなあって。もっと遊びたかったなっていうのが開幕を目前にした正直な気持ち。

 でも、しようがない。さあ、気を引き締めて頑張るぞって感じ。今年はオフのテストも好調だったし、先週の鈴鹿のテストも良かった。とにかく開幕戦が待ち遠しい。本当はマレーシアが延期になって、鈴鹿が開幕戦になってから、すごく嫌な気持ちだった。だって、鈴鹿は絶対に勝ちたいレースの1つだし、いつだって緊張する。だからほかで開幕戦をやって、気持ちをほぐしてから挑みたかった。でも、今は最初のレースが鈴鹿になってよかったと思っているんだ。

 とにかく、今年はオフのテストで収穫が多かった。先週の鈴鹿の合同テストもマシンのセッティングが完全じゃないのに、走るたびにぐんぐんタイムが上がる。最終的には自己ベストを1秒半もつめる2分7秒6をマーク。トップがビアッジで6秒999。それに難波さん、芳賀君、岡田さん、ドゥーハンと続いて僕の順。タイヤのテストをしていたり、全力でアタックをしていたわけじゃなかったけど、終わって自分の順位を見たら、超〜悔しかった。

 今までなら、テストとかフリー走行とか予選ではタイムが出なくても、これほど悔しい気持ちになることはなかった。本番になれば大丈夫だって言い聞かせていたからなんだけど、今年はちょっと違うような気がする。

 だってテストから調子がいいし、頑張れば頑張るほどタイムが出る。頑張る前からタイムが出てしまうって感じだったし、それだけに先週の鈴鹿テストを終えたときに、今年はテストでもフリーでも予選でも、いつも一番にいないと気が済まないと思った。一番大事なのは決勝で勝つことだけど、今年はいつでも一番になれるように心掛けて走ろうと心に決めたんだ。

 去年だったと思うけど、今年からティレルでF1を走っている(高木)虎之介さんと対談したときに、ドライバーもライダーも、マシンとかチームとかいろんな要素がそろって勝てる体制になったときに初めて「勝ちます」と言えるんだって話をしたことがあるけど、今年はやっとそんな言葉が吐けるような気がしてきた。

 94年にスポット参戦して、95年からフル参戦、今年で4年目だけど、やっとそんな気分になれたような気がする。今までは、やってみなければ分からない、本番になってみなければ分からないレースが多かった。でも今年はトップグループでレースをする自信があるし、できなくてどうするって気持ちなんだ。だから、今年の目標はシーズン3勝することだって言ってきたけど、今年は全戦勝つつもりで走ろうと思っている。

 今年もヨーロッパのベースはバルセロナ郊外にあるシーチャスという街でプール付きの一軒家を借りた。ちょっとぜいたくな感じがするけど、トレーニングすることを考えると場所も家の造りもすごく良かった。それに家賃は日本では考えられないほど安い。それと今年は、マールボロがパーソナルでスポンサーがつくことになった。グランプリを走るようになってから96年までずっとマールボロがついていた。それが去年は初めてなくなって、成績もだめになった。今年はマールボロが復活してヘルメットにもワッペンがつく。なんたってカッコイイし、今年はスタートからいいシーズンになりそうな気がしている。

 さらに縁起を担いで、僕が優勝した一昨年の日本GPの直前の「No Limit」にも登場した愛猫の「シロ」に今回は登場してもらう。シロは僕が中一のときに多摩川で拾ってきた猫で今年で11歳と1のゾロ目。今年は調子がいいし、縁起なんて気にしないけど、まあ、気持ちの問題。去年は自分で納得のいくレースがひとつもなかった。今年は自分の走りができたら絶対にトップ争いができると信じているし、鈴鹿は絶対に勝ちたいレース。ここでいい結果を残して、その勢いでシーズンを乗り切りたい。今年こそは、元気いっぱいのノリック手記にしたいと思うので、みなさんも応援よろしくお願いします。

■1998年4月2日掲載