第1戦日本GP編
岡田(2番車)とバトルの末、マシンをぶつけられたノリック。表彰台は確実だっただけに無念……(カメラ=藤原進一)
岡田(2番車)とバトルの末、マシンをぶつけられたノリック。表彰台は確実だっただけに無念……(カメラ=藤原進一)
 開幕Vを狙った阿部典史。予選7番手からホールショットを奪う絶好のスタートを切ったが、PPスタートのM・ビアッジにかわされリードを許すことになった。その後、岡田忠之、芳賀紀行との激しい2位争いとなったが、岡田と接触してコースアウト。この遅れを取り戻そうと追い上げている途中に、今度はA・クリヴィーレと接触寸前のアクシデントで2度目のコースアウトと大波乱の展開。結局、再スタートしたものの14位とノリックにとっては悔しいレースとなった。しかし、完全復調を印象づけるレース内容に、ノリックへの周囲の期待はますます高まってきた。
 悔しいのを飛び越して、今回のレースは残念という言葉しかなかった。何たってコースアウトが2回。おまけに2回目のコースアウトでは止まりきれずにタイヤバリアに激突して転倒。再スタートしたけれど14位になるのがやっと。あのまま走っていれば絶対に2位は確実だった。2位になっても悔しかったと思うけれど、こんな結果になるとは夢にも思わなかったんだ。

 今年の日本GPは、いつもより応援がすごかった。「勝ってください」「頑張ってください」って本当に何百人ものファンの人たちに声を掛けられた。ピットウオークでは前にいる人が押しつぶされそうなほど僕のところに集まってくれたし、それだけに応援してくれたファンの人には申し訳ないと思った。

 最初のコースアウトは、岡田さんと芳賀君とで2位争いをしているレース中盤に起きた。その周回、僕の前に出た岡田さんのペースが上がらなかった。そこでスプーンカーブの立ち上がりで抜こうとスピードを乗せていった。さあ、抜くぞって思ったら、目の前で岡田さんが振られてバランスを崩す。それを避けようとしたんだけれど、避けきれなくて岡田さんのバイクをガガガ〜ッてこする形でコースアウトしてしまったんだ。

 でも、このときは意外と冷静だった。すぐに追い付くと思っていたし、このコースアウトでクリヴィーレにも抜かれたけれど、それもあまり気にはならなかった。それが、サインボードでラスト5周と出たときに、これはヤバイと思ったんだ。

 この周に何とかしてクリヴィーレを抜かないと、岡田さんと芳賀君に追い付かないと思った。それでダンロップコーナーで勝負することにした。このコーナーは左コーナーで上り坂なんだけど、クリヴィーレはここが遅かったから、次のデグナーまでに絶対に抜けると思ったんだ。ところがクリヴィーレも頑張って真横に並んだままデグナーへ。しかもクリヴィーレが左にバイクを振ってきたのでついに行き場がなくなって、ああ、ぶつかる〜って感じで、またしてもコースを飛び出してしまったんだ。スプーンの立ち上がりは芝生だったから何とか立ち直れたけど、デグナーは深い砂地でブレーキもかけられないし、どうすることもできない場所だった。とにかく転ばないように何とかコースに復帰しようと思っていたら、グラベルの山にリアタイヤが乗り上げて、タイヤバリアにぶつかってしまったんだ。

 あのときは悔しくてヘルメットの中で叫びまくっていた。「ふざけやがって」とか「バカヤロー」って声がかれるほど大声を出していた。何でこうなるんだって完全に頭に来ていた。だから、タイヤバリアを殴りつけてけっ飛ばして、ああ、これでリタイアだって超〜がっかりしたんだ。

 でも、ふと気付くと、オフィシャルが僕のバイクを押している。走れるバイクがあるのに走らないわけにはいかないって気を取り直して、再スタートした。

 オフィシャルも「そうりゃ行けぇ〜」って掛け声を掛けながら押してくれた。そのときに初めて気付いたんだけど、デグナーカーブにも観客のスタンドがある。バイクが走っているときはエンジンの音がうるさくて何も聞こえないけど、結構、シ〜ンとしている場所だった。そんなところで、バカヤローとか、とにかくめちゃくちゃ叫んでしまったわけだから、ああ、これは全部聞こえてるんだろうなあって、後で結構、恥ずかしい気持ちになった。

 14位でレースを終えてピットに帰ってくると、監督のレイニーさんに呼ばれた。「転んだ後に何であんなことしているんだ」ってしかられた。「プロだったらバイクを見て、すぐに再スタートしなくちゃいけない。あんなことしてなかったらシングルでゴールすることができた。それに岡田を抜くときに、どうしてアウト側にいたんだ。クリヴィーレはあそこで抜かなくてもよかった。もっと安全な他の場所で抜くことができた」って、とにかく責められてばかりだった。僕も自分に腹が立っていたし、そんなこと言われたくもないって感じだったけど、何も口答えしないで聞くことにしたんだ。

 こんな結果になったのも、とにかくヘアピンやシケインで遅かったのが原因のひとつ。もともと鈴鹿のヘアピンやシケインは得意だったのに。これが2位争いから抜け出せない、そしてビアッジに離された理由。今回は高速コーナーが良かっただけに、次のレースへの課題となったような気がした。

 ジョホールで行われる次のマレーシアGP(19日決勝)は初めて走るサーキットだからどうなるか分からないけど、今回の悔しさを全力でぶつけたいと思う。全戦Vを目指して走るという開幕前の目標に、うそがないようなレースにしたいと思っている。

■1998年4月8日掲載