第10戦チェコGP編
ヤマハには向いていないブルノで健闘したものの、結果には不満が残った(カメラ=竹内秀信)
ヤマハには向いていないブルノで健闘したものの、結果には不満が残った(カメラ=竹内秀信)
 今季最悪の予選12位で決勝を迎えた阿部典史。3列目から猛ダッシュを見せてトップグループに浮上したが、思うようにペースを上げられず、中盤はジリジリと後退した。最後はS・ジベルノーとの激しい戦いを制して5位でフィニッシュしたものの、ホンダ勢4人のバトルに加わることはできず、今季初優勝の夢は次戦に持ち越した。
 本当にいちかばちかのスタートだった。今季最悪の予選12番手。絶対にスタートで前に出てやろうと思っていたし、3番手で1コーナーを抜けた時には、正直ホッとした。

 ブルノはコース幅が広くて1コーナーも右に緩く曲がっている。スタートのタイミングはそれほど良くはなかったけれど、イン側がガラ空きだったので、そこへ思い切り突っ込み、うまく前に出ることができたんだ。すごく勇気のいる作戦だったし、今、思い返してもちょっとドキドキする。前にはビアッジとバロス、と思っていたらドゥーハンに抜かれて4番手へ。

 ところが、ドゥーハンはすかさずバロスも抜いていく。そしてまさかの転倒……。僕を抜いていく時も、ドゥーハンにしてはずいぶん強引な抜き方だと思ったけれど、まさか転ぶとは思わなかった。

 そして1周目を終えると、ビアッジがトップでバロス、僕という順。グリッドに着く前のウオームアップですごく感じが良かったし、スタート直前になって自信がついた。というのも、ダミーグリッドから1周してグリッドに着く時に、ぶっち切りでトップを走ることができたからなんだ。実際、2周目には自己ベストの2分2秒台に入った。この調子なら絶対にいけると思った。ところが3周目にクリヴィーレに抜かれたころから、タイヤが滑り始める。アクセルを開けるとアウトに膨らんでいくアンダーテスアの状態で、全然ペースを上げられなくなったんだ。そのうち岡田さんにも抜かれて5番手に落ちた。中盤は一番苦しくて、何をどう頑張ってもペースが上がらない。タイムもひどい時は4秒台に落ちて、トップグループにジリジリと離されてしまったんだ。

 終盤は追い上げて来たジベルノーとの戦いになった。このあたりになると、滑る走りにも慣れてきたのか、タイムも3秒台に戻すことができた。それでもジベルノーは必死についてくる。ストレートでは僕のバイクの方が速かったし、抜いてくるとしたらブレーキングしかない。

 それでブレーキングも絶対にミスをしないように走って、最後はジベルノーを抑えて5位でゴールすることができたんだ。

 ブルノでは、だらだらとバイクを寝せている時間が長い。アクセルを開け始めた時に向きがカチッと変わらないとタイムを詰めることができない。予選ではフロントの接地感がなくて苦しかった。フロントの加重が足りないんじゃないかということでセッティングをどんどん変えていった。変わると良くなるんだけど、次の問題が出てくる。それは決勝でも同じだったけれど、3日間の中では一番いい走りだったと思う。結果には全然満足してないが、5位でゴールしたことでスタッフも喜んでくれた。

 日本を出発する直前にのどを痛めて風邪をひいていた。熱はそれほどじゃなかったけれど、声が全然出なくてホント、どうしようかと思うくらいひどかった。おまけにブルノは、レースウイークに入ってから天候が不順で、曇っているとすごく寒かったし、体調を維持するのに気を使った。

 レースを終えて月曜日にバルセロナへ帰った。ブルノは天気が悪かったけれど、バルセロナは30度を超える暑さで夏が戻ってきた感じがした。夏休みの間、バルセロナの家を留守にしていたので庭の芝生が枯れていた。チェコに向かう前にタイマー付きのスプリンクラーをセットしておいたら、かなり回復していたのでうれしかった。来週のイモラGPは絶対に暑いレースになる。残り5戦、全部のレースで表彰台と優勝を狙って、熱い走りを見せようと思っている。

■1998年8月26日掲載