第5戦フランスGP編
トップを快走するノリック。クリヴィーレにパスされるとは「まさか」だった(GP Photos)
トップを快走するノリック。クリヴィーレにパスされるとは「まさか」だった(GP Photos)
5年ぶりにル・マンで行われたフランスGPで、阿部典史が素晴らしい走りを演じた。予選は7番手だが、決勝前のウオームアップではGPデビュー以来初めてトップタイムをマーク。決勝では序盤はK・ロバーツ、中盤はA・クリヴィーレに主導権を譲ったものの終盤にはトップに。そして日本GPの再現かと思わせた最終ラップに、クリヴィーレに逆転を許して2位に敗れてしまった。「勝てたレース」というノリックの悔しさと嘆きはなかなか収まらなかった。(聞き手=遠藤智)
 ――今回の全開トークは、きっと注目されている。最終ラップのあの瞬間のことを、みんな知りたいと思っているしね。ノリックが先頭にいて、クリヴィーレ、ロッシと続いていた。ああ、このまま行けば優勝だなってだれもが思った。ところが、2コーナーのブレーキングでクリヴィーレに抜かれてしまった。

 ノリック「そうですね。抜かれてしまったんですね。でも、あのコーナーでは絶対に仕掛けて来ないと思っていた。あのコーナーでアレックスは予選で転んでいるし、決勝でもあそこは速くなかった。勝負してくるとしたら、次のヘアピンだと思っていたし……」

 ――確かに、今回のノリックは乗れていた。走りだけを見るなら90%の確率で勝てたはず。だから、ちょっと油断していたんじゃないって思ってしまう。

 「油断? そんなことないですよ。あのコーナーだって絶対に来ないとは思っていたけど、それでも目いっぱいブレーキングを遅らせている。だから、横に並んできたときには、まさか、だった。並ばれた時は、もうどうしょうもなかった。でも、このスピードで突っ込んでいったら、絶対に止まり切れるはずがないと、今度はクロスラインで抜くことを考えていたんですけどね」

 ――でも、アレックスはミスをしなかった。

 「そうですね。何事もなかったように、曲がっていってしまった」

 ――でも、いいレースだったよ。鈴鹿も良かったけど今回も良かった。

 「でも、勝てなきゃ、だめですよ」

 ――そりゃ勝つに越したことはないが、2位になるからこそ次の優勝がある。いつも勝てるわけじゃない。

 「でも、優勝と2位じゃ、大違い。勝てるレースだったし、勝てなかった自分が、情けないし悔しい」

 ――トップを走って最後に抜かれる経験は初めてだったしね。ところで、今回は予選から調子が良かった。

 「日本とスペインと、結果は優勝とリタイアと大違いだったけど、抱えてる問題は同じだった。車体のセッティングが完ぺきにならない。セッティングの幅でできることはすべてやり尽くしたって感じだった。そこで1年ぶりくらいに、車体のディメンションを変えた。それが良くて、実際に今回はウエットでもドライでもいい感じで走れた」

 ――ディメンションって一般の人には分かりにくいけど、まあ、フロントフォークとリアアームとか、ホイールベースとか……。

 「それじゃ、余計、わかんなくなっちゃうんじゃないんですか(笑)。つまり、車体のいろいろな寸法、ですね」

 ――寸法を久しぶりに変えたということは……。

 「これが難しいんですよね。変えてもなかなか分からない。それがだんだん分かるようになってきたんですね」

 ――すごいすごい。今まで調子に波があったのも、ひとつはセッティング能力が足りなかったってことかな。

 「そうですね。でも、経験しないとわかんないことでもあるし」

 ――でも、これでもう、アベは時々速いなんて言わせないってところかな。

 「だといいんですけどね。次のムジェロ(イタリアGP)は、ほんと苦手だだから。ここで、ちゃんとセッティングを詰められたら、もうって感じですね」

 ――ところで、チェッカーを受けてから、ロッシと握手してたね。

 「あいつがすごく喜んでいて……。こっちは悔しくてそれどころじゃないって感じだったのに。でも、よ〜く考えてみれば、僕の方から祝福してあげないといけないんだよね。先輩として」

 ――あれあれ。そりゃ、そうだ。それは先輩として恥ずかしい。ついでに、2位でも、もっと喜ばないとだめだよ。喜べば喜ぶほど、相手にはプレッシャーになるんだから。いつものノリスマイルが今回はなかったのは、だめ。

 「そうですね。次からは……。いや、次は優勝して喜びますよ(笑)」

 ――まったく懲りないね、ノリックは。

■2000年5月17日掲載