第11戦チェコGP編
幸福の壁に手を触れ、げんかつぎ――。復活を誓うノリック(カメラ=遠藤智)
幸福の壁に手を触れ、げんかつぎ――。復活を誓うノリック(カメラ=遠藤智)
 1カ月のインターバル明けで第11戦チェコGPに臨んだノリックこと阿部典史は予選7番手から今季2度目の転倒リタイア。1周目の混戦の中でスリップダウンというあっけない内容だった。一体、何が起こったのか。不完全燃焼に終わったノリックがその経緯を語った。
 ――なんて言っていいのやら、だね。1周目に転倒し、何がどうしたの?

 ノリック「んんん。どこから話していいのか。スタートはまあ良くもなく悪くもなく。で、僕の前にマッコイがいて僕は4、5番手だったのかな。そのまま1コーナーを抜けて裏ストレート。ここまではいつも通りだったけど、その先のS字コーナー入り口でマッコイがやたらに遅かった。それでケニーとか岡田さんに抜かれ、次のコーナーでクリヴィーレにも抜かれた。それで焦って、クリヴィーレを抜き返した途端、フロントからシャ〜と転んでしまった」

 ――遅いマッコイを抜いちゃえばよかったじゃん。

 「そうなんですけどね。そのS字コーナーの入り口で抜こうとしたらケニーがば〜んと入ってきた。おぉっと思っているうちに今度は両側からバンバンと抜かれて、次のコーナーの入り口でクリヴィーレにも」

 ――カーッときた?

 「その通りですね。クリヴィーレをすぐに抜き返してそのまま」

 ――何で焦ったの?

 「そうですね、本当に……。去年のムジェロも1周目、今年のマレーシアも2周目で。今回もそうだったけどすごく調子が良く、1周目からパ〜ンと前に出たかった」

 ――分かるけど、調子がいいからこそ、落ち着いていかないとだめなんじゃないの。

 「そう、そうですね」

 ――あれ、何て素直なノリック。

 「いや、ほんと、そうです。何も学習してないなって自分でも思う。スタート前にスタッフとも今回は行ける、落ち着いていこうって話してたのに」

 ――それが……。

 「マッコイのせい……では、ないですけどね(笑)」

 ――では、ないけどアタマにくる。

 「それですね。アイツ、レース後の会見で何て言ってたと思います。1周目の1コーナーでフロントの調子が悪いような感じがしたので様子を見てたって。それでますますアタマにきた。様子なんてみてんじゃないよって」

 ――今回は転倒後、ピットに戻ってそのままレースをやめたけど。

 「走ろうと思ったけどラジエーターに穴が開いていて交換には30分はかかるといわれた。悔しいけどあきらめました」

 ――完全な不完全燃焼。で、レース後コースをランニングしてたの?

 「全然、疲れてなかったし、ちょっと汗をかこうかと思って」

 ――ノリックらしい。でも今回は成果が大きかったね。力を抜くことを覚えたし、予選の一発タイムも出るようになった。

 「精神的にも肉体的にも取り組み方を変えました。でも肝心なところではまだ昔のままかなあ」

 ――今日のノリックはとっても素直で怖いよ。いじめようとしてもすきがない。ニューノリックだね。

 「ええ日々進化です(笑)」

 ――レース後、プラハに観光に行ったね。

 「テストまで暇だったし気分転換もかねて。で、触ると幸福が訪れるっていう壁を触って来ました。だから次レースからは大丈夫」

 ――じゃ手を洗えない?

 「もちろんですよ」

 ――本当?

 「本当です」

 ――マジで? うそでしょう?

 「はい、うそです」

 ――これだけ元気なら大丈夫だね(笑)

 「まあ、次のポルトガルは見ててください。ガツ〜ンと行きますから」(聞き手=遠藤智)

■2000年8月23日掲載