第15戦パシフィックGP編
風邪のため最悪だった体調を押してファンサービスに努めた(カメラ=野間智)
風邪のため最悪だった体調を押してファンサービスに努めた(カメラ=野間智)
 鈴鹿の日本GPに続いて、ツインリンクもてぎのパシフィックGPでも優勝の期待がかかった阿部典史。地元日本では過去最高の予選6位から決勝に挑んだ。だが肝心のスタートに失敗、さらに序盤のスローペースが災いして苦闘を強いられるはめに……。終盤になってグイグイとポジションを上げ、結果5位までばん回しただけに、ノリックは悔しさに身もだえた。
 ――今回は、レースが始まって、いきなりため息が出てしまった。ノリック、何やってんだよ〜ってね。肝心なグランプリだっちゅうのに、なんでスタートに失敗しちゃったの?

 ノリック「シグナルの変わるのが遅くて、今回は全然タイミングが合わなかった。125と250のスタートを見て、タイミングはばっちり体に刻まれていた。そのタイミングで、よ〜し今だ、とクラッチをつないだら、なんと青にならない。このままだと完全にフライングになっちゃうと思ってブレーキ。もう、最悪のスタートになってしまった」

 ――それでも1周目6番手だから、まだそこまでは最悪って感じでもなかった。ところが、ロッシに抜かれ、ビアッジ、ノブ(青木宣篤)、バロスと次々に抜かれてしまった。ああ、これじゃ、もう優勝はないなあと見ていてがっくり。一体、どうしたの?

 「朝のウオームアップで初めてフルタンクで走ったんですけどね、その時に、フロントが全然グリップしなかった。あれ、やばいなって感じで、多少セッティングを変えて決勝に挑んだんだけれど、やっぱりだめだった。全然走れなくて攻められなかった。そのうちタンクが軽くなって調子が戻ってきたんですけどね。今度はバロスに引っ掛かって前に行けなかった」

 ――バロスの後ろで10周も走っている。その時点で7番手だったけど、ラスト3周でバロスをかわしてから一気にベースが上がった。クリヴィーレを抜いて、4位のチェカにも届きそうだった。あの走りを見たら、ほんと、序盤のもたつきが悔しい。なんで、フルタンクで走っておかなかったの?

 「高速サーキットではこんなことはない。もてぎのようなハードなブレーキングが必要なサーキットは、フルタンクの時に多少乗りにくいことはあるけど、こんなに変わるのはあまりなかった。仕方がないというか、悔しいけど、もうどうしようもできなかった」

 ――でも、後半は本当にいい走りをしていた。それだけに、こっちも悔しかったね。

 「それは僕も同じ。もてぎは苦手なサーキットだけど、予選から手ごたえも感じていた。絶対に優勝してやるんだって気持ちだった」

 ――もし、もしもだけど、あれで、スタートで失敗していなかったら、どうだった? ロバーツの後ろで踏ん張れたとか……。

 「いや、同じことだったと思う。もう転倒寸前まで頑張ってあれだから、スタートが良くてもついてはいけなかったと思う」

 ――そう、それなら、仕方がないよね。それにしても、今回は、レースの内容だけじゃなくて、体調もつらそうだった。ブラジルからの移動で時差ボケもひどかったし、風邪もひいて熱も出ていたし……。

 「そうですね。つらかったですね。特に日曜日の朝は体調が最悪で、走ることに集中しなくちゃと思っていた。で、レースが終わった後は、今度は成績が悪くてぐったりって感じだった。だから、ピットの後ろで待っていてくれたファンの人に、ぶっきらぼうな態度を取ってしまったんじゃないかと、いま反省してるんですけどね」

 ――確かに、ノリックのピットの後ろは、いつもすごい数のファンが待っていた。予選日なんか、サインに写真にと、ノリックはファンサービスに一生懸命だったし、えらいなあと思っていたよ。でも、決勝日は仕方がないんじゃないの。

 「これで結果が良ければ、ゴールした途端、風邪なんかどこかに吹き飛んでいたと思うんですけどね」

 ――だめだったから、余計に……。

 「……熱が出てしまった。もう、ほんと、ぐったり。何もしたくなかった」

 ――まあ、元気を出して。次のオーストラリアGPは泣いても笑っても今年最後のレース。それにノリックが得意とするフィリップアイランドなんだから。

 「そうですね。今度こそ、が〜んと行きます。というか行かなくちゃいけないし、何としても勝ちたい。いまはそれだけですね」(聞き手=遠藤智)

■2000年10月18日掲載