全日本最高峰4連覇で6度目王者
強さの秘訣に迫る
もはや日本最強ライダーになった中須賀(カメラ=沢田将人)
もはや日本最強ライダーになった中須賀(カメラ=沢田将人)
 今年はヤマハ発動機の創立60周年の年。そのメモリアルイヤーに、全日本ロードレース選手権の最高峰JSB1000クラスで史上初の4連覇を達成し、史上最多の6度目のタイトルを獲得したのが中須賀克行(34)だ。しかも、鈴鹿8耐ではヤマハの19年ぶりの優勝に貢献し、日本GPモトGPクラスでは8位のシングルフィニッシュと大活躍。ヤマハにとっては最高の“孝行息子”というわけだが、その中須賀の強さの秘訣(ひけつ)は何か。1年ぶりに登場のV6・長野博(43)が無敵のチャンピオンに迫った。

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 長野 日本GPは現地で観戦できましたが、8耐は録画で見ました。全日本ロードの活躍も素晴らしく、これ以上ないというシーズンでしたね。

 中須賀 もてぎGPで、長野さんに声をかけてもらいうれしかったです。ありがとうございます。

九州・英彦山での走り込み

1人で集中してやるのが好き

◇中須賀克行 今季成績◇
◇中須賀克行 今季成績◇
 長野 中須賀さんの強さの秘密を教えてほしいと思うのですが、トレーニングは特別なことをされているんですか?

 中須賀 僕は運動音痴なので、北九州市の自宅の近所にある英彦山(ひこさん=福岡県と大分県にまたがる標高1199mの山)をランニングすることが中心です。

 長野 単独ですか?

 中須賀 1人で集中してやるのが好きですね。

 長野 それが速さの秘密?

 中須賀 モトGPマシンのテストをさせてもらっているので、バイクに乗る時間が長いことだと思っています。

 長野 全日本仕様とモトGP仕様の乗り換えは大変じゃないですか?

 中須賀 今年の全日本マシンYZF−R1は、モトGPマシンのYZR−M1に近くなりました。マシンコンセプトが“ツイスティーロード最速”から“サーキット最速”に変わったので、乗り換えは楽になりました。制御もM1のテクノロジーが入っています。

 長野 全日本開幕戦は2位でしたが、その後は全てポール・トゥ・ウイン。最終戦鈴鹿では2分5秒192のレコードを記録していましたね。

 中須賀 8耐でチームメートのポル・エスバルガロが6秒フラットでポールを獲得したのは、実はとても悔しかった。耐久仕様とマシンは違いますが、鈴鹿最速は僕が記録したかった。

現役モトライダーとの出会い

ポル・エスパルガロとスミス

全日本ロード最終戦・鈴鹿を中須賀は連勝で締めくくった(カメラ=竹内英士)
全日本ロード最終戦・鈴鹿を中須賀は連勝で締めくくった(カメラ=竹内英士)
 長野 8耐の活躍も素晴らしかったですね。

 中須賀 ええ。8耐では現役モトGPライダーの2人(ポル・エスパルガロ、ブラッドリー・スミス)が、自分が造ってきたマシンを評価してくれ高いスキルで乗りこなしてくれました。

 長野 8耐の表彰台はどんな気分でしたか?

 中須賀 最高でした。レース人生において、バレンシアGP(12年2位)のケーシー・ストーナーとダニ・ペドロサと一緒に上った表彰台の次にうれしかった。

 長野 モトGPライダーと互角の走りを見せた8耐、日本GPでしたね。

 中須賀 8耐でモトGPライダーの2人に楽しんで乗ることを思い出させてもらいました。だんだん、バイクに乗ることが仕事になっていたなと…。バイクが好きで始めたことなんだから楽しもうと思うようになりました。日本GPでも、モトGPライダーの集中力や、挑む気持ちに刺激され、チームのオーダーで、バレンティーノ・ロッシやホルヘ・ロレンソのような走り方にトライしました。それでタイムアップできました。その走りは、その後の全日本にも生かされ、スキルアップできたと思う。日本GP後の2戦(岡山国際、鈴鹿)は負ける気がしなかった。

 長野 圧勝でしたね。

 中須賀 タイヤが路面をつかむ感じが分かり、マシンが手足のように動く感覚で、全てを自分がコントロールしていると実感できました。岡山国際では1秒、最終戦鈴鹿でもレコードを更新して勝って終われました。

 長野 すごいことですね。そして、モトGPでもロッシとロレンソの2人が中須賀さんが開発したマシンでタイトルを争うというシーズンになりました。

 中須賀 ええ、最高です。

 長野 マシンのポテンシャルが上がった?

 中須賀 今年から入れたフルシームレスギアボックスが勝因のひとつだと思います。このおかげでブレーキに集中でき、次へのアプローチがしやすくなり、コーナリングスピードを上げることができた。

 長野 エンジンもコーナリングもと全てを求めるとバランスが崩れてしまうと聞いたことがありますが、そのリスクは?

 中須賀 ブレーキングばかり求めると曲がらない。ヤマハの良さを見失う。難しいですが、良さを伸ばしながら、扱いやすいマシンを求めて行く。簡単ではないですね。

来季は誰も抜けない記録作る

◇中須賀克行 年度別成績◇
◇中須賀克行 年度別成績◇
 長野 モトGP後半戦は違う意味でも注目を集めていましたが、ロッシは(マルク)マルケスを蹴ったんでしょうか?

 中須賀 確かに振り返ってマルケスを見ているけど、先に行かそうとしたか、違う展開にしようとしていたんだと思う。でも、絡んで足が外れたのだと思います。

 長野 最後はスペインとイタリアの戦いのようになっていましたね。

 中須賀 ええ。僕はどちらがチャンピオンでもうれしかったのですが、ロレンソは本当に速く、強いチャンピオンだと思う。彼を祝福したい。また、来年は新たな戦いが始まります。

 長野 来季はミシュランへとタイヤが変わりますね。

 中須賀 ブリヂストンはタイヤをつぶして曲がるというイメージですが、ミシュランはゴムが溶けて路面を食うという感覚で、やはり特性が違います。

 長野 テストでは、だいぶ転倒していたようですね。中須賀さんも?

 中須賀 昨年のオフに転んで足をけがしてしまいました。きっちり試練を受けています。タイヤの変更はライダーの力量が試されることになると思います。

 長野 そうなるとロッシですか?

 中須賀 ええ。ロッシはキャパが広く、リカバリー能力に優れているので、最初から飛ばして行くかもしれませんね。

 長野 さらに共通ECU(エンジンコントロールユニット)の採用となります。画期的なことですね。

 中須賀 本当ですね。それでも、ヤマハの速さを示せるように開発しています。制御だけでなく、タイヤも変わるので、マシンのバランスをどのようにしていくのが大きなポイントです。

 長野 また、違った戦いを見ることができそうで楽しみです。中須賀さんの、今後の目標は?

 中須賀 誰も抜けない記録を作ってやろうと思っています。

 長野 今年以上の活躍に挑戦ですね。

 中須賀 全日本全勝でV5。8耐も機会がもらえるなら連覇したい。モトGPもチャンスがあれば参戦したい。

 長野 中須賀さんの時代が続きそうですね。

 中須賀 長男の輝斗(らいと、6)、次男の遥翔(はると、3)に続いて来月に三男が生まれるんです。その子にもライダーの自分を覚えていてほしいので、少なくともあと3、4年は走りたいと思っています。

 長野 活躍、楽しみにしています。

 中須賀 ありがとうございます。

 ▽中須賀克行(なかすが・かつゆき) 1981(昭和56)年8月9日生まれ、34歳。福岡県出身。99年全日本昇格。08、09、そして12〜15年と全日本最高峰クラスJSB1000の史上初の4年連続チャンピオンに輝く。鈴鹿8時間耐久で19年ぶりにヤマハに優勝をもたらした。12年モトGPバレンシアで2位の実績がある。ワイルドカード参戦の今年の日本GPモトGPでも8位とシングルフィニッシュ。

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24時間パーソナリティー

テレビ&ラジオで制覇

 長野は年末を控え、今年で結成20周年を迎えたV6での活動が中心になっている。24、25日には、ニッポン放送の「第41回ラジオ・チャリティー・ミュージックソン」をV6が務めることになっている。8月22、23日には日本テレビの「24時間テレビ38『愛は地球を救う』」のメーンパーソナリティーも務めた。

 「同じ年にテレビとラジオの、ともに伝統のある24時間チャリティーのパーソナリティーをV6が任されるなんて光栄です。どちらも最初は萩本欽一さんがやられて、萩本さんは今でも手伝いに来られてます。ほんとにすごい方ですね」と長野は感心しきり。そしてミュージックソンの1週間後には、大みそか恒例の第66回NHK紅白歌合戦があり、V6は初出場の昨年に続き2年連続での登場になる。

 長野自身は今年も食の仕事に関わることも多かった。直近では雑誌「Hanako」(11月19日発売の1100号)での表紙を飾り、21ページのなかでレストランを紹介したりするなど大きくフィーチャーされ、女性読者に“グルマン長野”を印象づけた。