ホンダチームアジア青山博一監督
久々Wヒロシ対談
 今年最後のゲストは、ロードレース世界選手権(WGP)モト2、モト3クラスに参戦するホンダチームアジアの青山博一(ひろし)監督(38)。元モトGPライダーで、2009年250cc(現モト2)王者。昨年、若くして同チームの監督に就任。2年目の今季、モト3では開幕戦で鳥羽海渡(19)が念願の初優勝、アラゴンGPでは小椋藍(18)が2位表彰台と大躍進した。そんな青山監督にV6長野博(47)が今後への意気込みを聞いた。

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 長野 この対談に最初に登場して頂いたのが2010年。09年に250cc世界王者となり、最高峰クラスのモトGPに挑戦を開始したばかりでした。現在はWGP監督。監督になるということを意識はしていましたか?

 青山 現役を終えてからテストライダーとしてやってみたいこと、学びたいこともありましたから、「いつかは監督に」と漠然とは思っていましたが、こんなに早くなるとは考えていませんでした。打診され、最初は驚きましたが、「なかなか巡ってこないチャンス、つかまなければ」と思いました。

 長野 大きな決断ですね。

 青山 WGP参戦を開始した04年からお世話になっているアルベルト・プーチさん(レプソルホンダのチームマネジャー)が、(若手育成を目的とした入門シリーズ)アジアタレントカップのディレクターだったこともあり、アドバイザーをさせてもらって、若手育成の大事さを感じていたこともありました。

 長野 モト3で活躍する真崎一輝選手、佐々木歩夢選手、青山さんのチームの鳥羽選手、小椋選手も、アジアタレントカップから、モト3参戦へつながっていますね。

 青山 はい。彼らとは長い付き合いです。

 長野 欧州のライダーとのスキルの違いは感じますか?

 青山 欧州ライダーは日本人が全日本に出るのと同程度の感覚で、WGPに参戦します。ライバルの顔ぶれも言葉も環境も慣れ親しんだものですが、日本人やアジア人にとっては初めての環境に飛び込むわけですから、戸惑いがある。ライダーとしてのスキル以前の問題があります。

 長野 アウェーな感覚ということですね。

 青山 そうですね。みな若いので親から離れた経験がないままに、こちらでの生活が始まるわけですから環境面でのハードルは高い。

 長野 実力はあっても、それを示すまでに少し時間がかかるわけですね。

 青山 足踏みする部分はあると思いますが、彼らは自分よりセンスがあると思うので、慣れてしまえば世界王者の可能性は十分にあります。

 長野 センスを感じますか?

 青山 彼らがアジアタレントカップに参戦し始めた15〜16歳の頃、自分はまだミニバイクでレーシングマシンに乗っていませんからね。その年齢で世界を経験していることは大きい。

 長野 アジアタレントカップの選手はどのように選出するんですか?

 青山 14年から始まり、日本、アジア、オーストラリアからオーディションに参加し、今年は書類選考で88人が参加、17人が選ばれました。

 長野 なかなか、狭き門ですね。

 青山 タイムだけでなく、その姿勢、態度を見ています。

 長野 具体的にはどういったところを?

 青山 転倒後、すぐにまた走る意欲があるかなど細かいところを見ています。最近はインドネシア、マレーシア、タイなどアジア人ライダーの勢いを感じますね。

 長野 日本人ライダーはどうですか?

 青山 昔に比べると、おとなしい印象ですね。ただ、歩夢や海渡はやんちゃで、小椋もガッツがある。何か持っている子は感じさせるものがあります。

 長野 中上貴晶選手がモトGPに参戦していますが、後に続くライダーが育ってほしいですね。

 青山 来季は全日本から高橋巧がスーパーバイク世界選手権に参戦を開始しますし、周りが「こいつにチャンスをあげたい。走らせてみたい」と思わせる走りをすれば、道が開けるはず。信じて頑張ってほしい。

 長野 青山さんもプーチ監督に鍛えられて道を切り開いたライダーですからね。

まるで軍隊

 青山 軍隊経験はないですが、軍隊のようだと感じていました。朝の5時には「家の前にいる」と電話で起こされてトレーニング。長時間のきついトレーニングが日課で、レース以外のことを考える時間はありませんでした。

 長野 チーム員にもそれは受け継がれているんですね。

 青山 はい。体力アップも大事ですが、きついトレーニングを乗り越えることでメンタルが強くなります。モータースポーツは集中力が重要ですし、気持ちが影響する部分が大きい。だからトレーニングが重要なんです。

 長野 青山監督も、ライダーたちと一緒にトレーニングしていると聞きました。

 青山 ええ、まだまだ負けません。最後の瞬間に負けず嫌いが顔を出します。

 長野 追い込みをかけるボクサーみたいですね。

 青山 そうですね。プーチ門下生にはダニ・ペドロサ(スペイン)やケーシー・ストーナー(オーストラリア)ら名選手が多くいます。トレーニングの成果を実感しているからこそ、今のライダーにも引き継いでもらいたいんです。

 長野 青山監督のネットワークを使い、モトGP王者のマルク・マルケス選手とダートや、トライアル世界王者の藤波貴久選手とも夢のようなトレーニングをしていると聞きました。

 青山 レベルの高いライダーと一緒にやることで、自分との違いを見つけてほしいと願っての実施です。違いが分かれば、努力目標が明確になりますから。

 長野 マルケス選手はトレーニングでも別格ライダーですか?

 青山 レベルが違います。考え方が違う。曲がらないバイクなら普通は曲がるように、止まらないバイクなら止まれるバイクに変えようとしますが、マルケスは曲げる乗り方、止まる乗り方と自分を変化させる。ドリフトするんですが、4輪の乗り方に近い。

 長野 普段のマルケス選手はどんな雰囲気ですか?

 青山 海渡や藍と普通に「あそこは何速で回っている?」とか「何速の方がいいよ」とアドバイスしたり、彼らの質問に答えてくれ、自然に接してくれます。

 長野 若い2人は会話に不自由しないんですか?

 青山 アジアタレントカップには英会話の時間も組み込まれているんです。日常会話には問題ないレベル。若いので吸収も早い。自分がWGPで苦労したことを排除してレースに集中できる環境を作りたいと考えています。

 長野 素晴らしいですね。

ライダー目線

 青山 監督としては若いので、ライダー目線に近いことが強み。ライダーそれぞれにキャラクターが違うので声のかけ方や言葉を考えます。それがうまく伝わり、スイッチが入ってタイムや結果につながると、充実感があり「良かったな」と思います。

 長野 来年、モト3では鳥羽選手に代わって、国井勇輝選手がチームに加わりますね。

 青山 自分の経験を伝えながら、いつも選手たちに世界王者をとってもらいたいと思ってやっています。その目標に近づいていきたい。

 長野 楽しみにしています。

 ▼青山博一(あおやま・ひろし) 1981(昭和56)年10月25日生まれ、38歳。千葉県出身。5歳でポケバイに乗り始め、99年全日本デビュー。03年全日本GP250王者。04年ホンダスカラシップを獲得してWGP参戦開始。09年250cc世界王者。10年からモトGP。15年にテストライダーとなり、18年にチームアジア監督就任。弟はオートレースで活躍する青山周平。
初のフロントローを決めた小椋藍(中)と青山監督(左)=今季フランスGPで(遠藤智撮影)
初のフロントローを決めた小椋藍(中)と青山監督(左)=今季フランスGPで(遠藤智撮影)