ガソリンとパフォーマンスの秘密
なんだかあまーい匂いを放ちながらピットアウトしていくジョアン・ミル。今年は去年よりややマイルドな匂いになったと言われているが、飛び魚は去年までの強烈な匂いがなんだか「おおモトGPだ」という感じがしてすきだったのである。
なんだかあまーい匂いを放ちながらピットアウトしていくジョアン・ミル。今年は去年よりややマイルドな匂いになったと言われているが、飛び魚は去年までの強烈な匂いがなんだか「おおモトGPだ」という感じがしてすきだったのである。
 バーン、ババーンとエンジンが掛かると、あまったるーい匂いが漂う。コースサイドで写真を撮っているときも、青いマシンが、バーン、ババーンと通りすぎると、あまったるーい匂いが漂う。「なんだこれ、いい匂いがするよね」という会話を交わすようになったのは3年くらい前のことだ。

 いい匂いを撒き散らしているのはスズキのモトGPマシンGSX−RRで、目の前を通り過ぎる度に「なにこれ?」・・・。

 あれから月日は流れ、第6戦イタリアGPで、それまで低迷を続けていたKTMワークスのミゲール・オリベイラが今季ベストリザルトの2位になり、ブラッド・ビンダーがポルトガルGPと同じ5位でチェッカーを受けた。このときにKTMがスズキと同じガソリンを使っているということが話題になり、飛び魚は早速、ピットに出向き、エンジンの暖気をしているKTMの横でくんくんくんと匂いをかぐという変態ぶりを発揮していた。正直、スズキほど匂いは強くなくて、同じガソリンなのかなあと思った。もしかすると、メーカーのエンジンに合わせブレンドしていることも考えられるので、もしかすると同じ会社だけど、ちょっと違うガソリンなのかも知れない。

 *後日、同じタイミングで匂いをかぎに行ったら、あまったるーい同じ匂いでした(臭気判定士・飛び魚)。

 ということで、このいい匂いがするガソリンを作っているのはフランスの「ETS」という会社で、エルフにいたエンジニア3人が新しくつくった会社なんだそうだ。「ETS」というのは、その3人の名前のイニシャルを取っている。

 そこで、ガソリンでどのくらいパフォーマンスが変わるのかということを知りたいと思ったのだが、当然ながら誰も教えてはくれない。万が一、教えてくれたとしても「書かない、言わない」ことが前提になるので、それなら聞かない方がいいということになる。

 そこで一般的な見地から推測してみたい。

 MotoGPのガソリンは、無鉛ガソリンでオクタン価(RON)が最低95〜最高102と規定されている。一般的には、オクタン価の高いガソリン(ハイオク)が使えるエンジンにするとパワーが出せるようになるが、102というのは一般に売っているガソリンよりちょっとだけオクタン価が高いという感じだ。

 オクタン価を上げると、どうなるかというと、単純に燃えにくい燃料になるので圧縮比を高くすることが出来るしノッキングが起きない・・・となる。それをいちいち説明するとわけがわからなくなるのでとりあえずすべて割愛するが(すいません)、先に書いた通り、現在のレース用ガソリンは、無鉛でオクタン価の制限があるので、パワーの出るガソリンを作るのは至難の業だと思われる。

 しかも、スズキのようにずっと使っているガソリンとエンジンの組み合わせではなく、KTMはシーズン途中から使い始めている。となれば、スズキと同じガソリン使ったからと言って、「うわーはやくなったー」というのはあまり考えにくく、もしそうだとすれば、エンジンに合わせたガソリンを作ったということになる。

 それがなんなのかはわからいが、この3年近く、スズキが使ってきたことを思えば、なんらかの効果があるのだろう、KTMもそこに着目したのだろうと思われる。

 しかし、イタリアGP以降、オリベイラはカタルーニャGPで優勝、ドイツGPで2位と絶好調。この成績がガソリンの効果とはとても思えず、イタリアGPでKTMが投入したニューシャーシー(KTMはアップデートという表現ですね)が、もっとも大きな効果になっているのだろうと思うのだ。

 それにしても、スズキのあのあまったるいいい匂いの正体はなんなのだろう?そこでFIMのルールブックを見れば・・・うわー、なんだこれ、専門用語ばっかりで、もうちんぷんかんぷん。添加物の規制もたくさんあるが、現在のMotoGP用ガソリンはそうした添加物を入れたもので、馬力を上げたり、もしかすると燃費を良くしたりという効果があるのかも知れない。

 それだけガソリンは難しく奥が深い。そして、結局は、あまーい匂いがするガソリンがハイパワーの秘密なのか???ここまで書いてきてなにひとつ結論はないが、いまのMotoGPクラスの戦いは、エンジンの開発が厳しく規定されているだけに、車体にサス、空力に続いて燃料ということになってるのかも知れない。

 ということで「ETS」というステッカーはスズキもKTMも貼っていない。つまり、スポンサーではなく、購入して使っているということになる。となれば、リッターいくらなのか?次々に疑問がわいてくるので、今度、こっそり教えてくれる人がいたら、ここで紹介したいと思っている。
ガソリンを変えて一気に調子を上げたKTM。2021年型RC16はシーズン当初、タイヤとのマッチングに苦しんだが、フレームの剛性を落とし一気に調子をあげている。
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