第8戦ドイツGPからホンダが投入したフロントのニューウイング。中上貴晶は従来型を選択するなど、ライダーによって好みが分かれることに。
第8戦ドイツGPからホンダが投入したフロントのニューウイング。中上貴晶は従来型を選択するなど、ライダーによって好みが分かれることに。
 MotoGPクラスは2014年にエレクトロニック・コントロール・ユニット(ECU)のハードウエアが共通化され、16年にはソフトウエアが共通化された。その結果、MotoGPのパフォーマンスは「7、8年は後退した」と言われたが、数年後にMotoGPクラスは、かゆいところに手が届く「独自ECU&ソフトウエア時代」のラップタイムを越えた。勿論、ミシュランタイヤのパフォーマンス向上もあるが、7、8年は後退したといわれたMotoGPのパフォーマンスを大きく引き出すことになったひとつに、ドゥカティが始めた空力パーツがあった。

 それまでは、ありあまるパワーを独自の電子制御でコントロールしていたが、共通ECUになってからはそういった細かいセットアップができなくなり、例えばウィリーの制御を空力パーツで補うことでエンジンパワーを引き出そう、使えるようにしようというものだった。

 確かに共通化されてからの数年は、どのメーカーも2015年以前のパフォーマンスを出すのに苦労していたが、いまは、7、8年は後退したといわれたパフォーマンスをあっという間に取り戻し、それ以上に進化している。

 現在の空力パーツは、独自ソフトで出来たことが共通ソフトでできなくなった分を取り戻すだけでなく、さらに、MotoGPエンジンのありあまるパワーをさらに引き出す重要なパーツへと進化しているようだ。しかし、これがなかなか難しく、どのメーカーも試行錯誤を続けている。そして、今シーズン、車体のセットアップに苦しむホンダがドイツGPから投入した新型ウイング(19年前半に登場したものと似ている)は、ホンダ勢の中でも評価が分かれる結果となっている。
中上貴晶は従来型を選択。今シーズンの課題はリアグリップの不足で、オランダGPでは今季ベストの4番手グリッドを獲得したことで2位争いに加わった。
中上貴晶は従来型を選択。今シーズンの課題はリアグリップの不足で、オランダGPでは今季ベストの4番手グリッドを獲得したことで2位争いに加わった。
 新型をつかっているのはレプソル・ホンダのマルク・マルケスとポル・エスパルガロのワークス勢ふたりとLCRホンダのアレックス・マルケスの3人。一方、開幕戦から第7戦カタルーニャGPまでホンダ勢全員が使った2019年後期型を踏襲する「蝶ネクタイ」ウイング(飛び魚が勝手に命名)を使っているのがLCRホンダの中上貴晶である。

 蝶ネクタイ型と新型の違いはダウンフォースにあり、新型はダウンフォースが減少されているのだそうだ。昨年右腕を骨折し今季復帰のマルク・マルケスは、右腕のパフォーマンスがまだ十分ではなく、減少ダウンフォース型を選んだのは、右腕の負担を減らすためではないかと推測(ウイング付きのMotoGPマシンは切り返しなどですごく体力と腕力が必要になる)。ポル・エスパルガロは、どっちがいいのか模索しているようだが、マルク・マルケスにならって新型を選んでいると推測。とまあ、推測ばかりで申し訳ないが、アレックス・マルク・マルケスは、ダウンフォース減少ウイングが自身の乗り方にあっていると絶賛し、ただひとり中上だけは、「僕はこっちがいい」と蝶ネクタイ型を選択している。
第8戦ドイツGPから投入した新型ウイング(上)と従来型(下)のウイング。ダウンフォースが新型は軽減されているとのこと。
第8戦ドイツGPから投入した新型ウイング(上)と従来型(下)のウイング。ダウンフォースが新型は軽減されているとのこと。
 ということで、空力パーツだけを見れば、ホンダの2021年型RC213Vは、依然として試行錯誤の状態と言えなくもないが、いやいや、空力パーツはセッティングパーツのひとつだから、という見方もできる。そうだとすれば、これがいまのMotoGPマシンの難しさなのかも知れない。