2019年マレーシア・セパンテストで転倒したドゥカティワークスのダニーロ・ペトルッチの写真。エンジンのクランクシャフトにバランサーウエイトが装着されている。
2019年マレーシア・セパンテストで転倒したドゥカティワークスのダニーロ・ペトルッチの写真。エンジンのクランクシャフトにバランサーウエイトが装着されている。
 第16戦エミリア=ロマーニャGPでチャンピオンを決めたファビオ・クアルタラロが、アルガルベ・インターナショナル・サーキットで開催された第17戦アルガルベGPで、ホルヘ・マルティン&ヨハン・ザルコのドゥカティ勢を相手に苦戦。ついにはレース終盤に転倒リタイヤに終わりました。フリー走行、予選が終わったときの連続ラップのデータを見れば、優勝したフランチェスコ・バニャイアとクアルタラロはほぼ互角。優勝争いができそうでしたが、いざ、レースが始まるとドゥカティ勢を相手に苦戦して6,7番手を走行。そうこうしているうちにトップグループに離され、ついには転倒というレースでした。

 転倒したクアルタラロは「ドゥカティ勢が前に出ると抜けない。ラップタイムでは勝っているのに」とフラストレーションをためていました。これはクアルタラロに限らず、ドゥカティ勢を相手に戦ったライダーたちを見れば一目瞭然。第13戦アラゴンGPのバニャイアとマルク・マルケスのバトルを思い出してみればわかります。コーナーの立ち上がりでドゥカティのマシンは速くてなかなか抜けない。抜けるのはブレーキングだけ・・・それも相当深いブレーキングが必要で、アラゴンGPを見ればわかるように、マルケスはバニャイアを超ハードブレーキングで抜くのですが、クロスラインで簡単に抜き返され、結局、バニャイアが勝利しました。

 こうしてドゥカティと戦ったライダーたちは異口同音に「ドゥカティが前にいると抜けない」と語り、今季コンストラクターズタイトルを獲得したドゥカティのバニャイアとミラーは「いま、コース上で1番速いのはドゥカティだと思う」と速さでライバルを一歩リードしていることを認めています。

 その速さの要因はどこにあるのでしょうか。実は今年8月のオーストリアGPでエネア・バスティアニーニがレース中にサイドカウルが外れて、ドゥカティのエンジンの左側が丸見えになりました。そのときのビデオを見て欲しいのですが、ものすごい高回転で回ってるものがあります。

 あれはなに?普通、左側にはこういうのはないのだけど思いながら、2年前、2019年のマレーシア・セパンテストで撮影した写真を飛び魚は思い出しました。

 その写真がこれです。これはダニーロ・ペトルッチがセパンの5コーナーで転び、カウルなどがぶっ飛び、そのときにパチリと写したものです。つまり、クランクシャフトからダイレクトに取り付けられているのがバランサーなのですね。こんなものをエンジンの外側にとりつけているメーカーはないし、バスティアーニのエンジン左側で猛スピードで回っているものがこれだということに気がついたのです。

 つまり、クランクにウエイトを取りつける。それで何がどう変化するのだろうと思い、知り合いのエンジニアに、一般論としてどういう変化があるのか?と聞けば、クランクにある程度の重さのバランサーをつけることで、アクセルの開け始めにトラクションがかかりやすく、乗りやすくなるというものでした。反面、このバランサーをつけることでデメリットも生まれますが、現状ではそれを上回る効果があるということなんだろうと思われます。

 つまり(つまりが続きますが・・・)「どっかーん」というパワーの出方ではなく「するするする〜〜」という滑らかでするどい加速が実現するわけですね。このバランサー効果に加え、ドゥカティは、加速時にリアの車高を低くする「ホールショットデバイス」と加速時のウイリーを制御する空力デバイスがあり、すべての面でライバルに一歩先んじています。

 こうして、アイデアを次々に実現させて実戦に投入しているドゥカティ・・・。これまでずいぶん長いこと飛び魚のHDに眠っていた写真ですが、エネア・バスティアニーニのカウルの外れた映像を見て、いろんな疑問が解決したというわけです。それにしても、エンジンの外側にバランサーを装着するなんで、よくぞこんなことを考えたものだと、つくづく思うのでありました。
これはMotoGPのオフィシャルサイトの映像の写真。オーストリアGPの決勝で左側のカウルが外れたエネア・バスティアニーニ。
これはMotoGPのオフィシャルサイトの映像の写真。オーストリアGPの決勝で左側のカウルが外れたエネア・バスティアニーニ。
アルガルベGPでドゥカティのホルヘ・マルティン(前)とヨハン・ザルコ(中)に苦戦し転倒したチャンピオンのファビオ・クアルタラロ(後)
アルガルベGPでドゥカティのホルヘ・マルティン(前)とヨハン・ザルコ(中)に苦戦し転倒したチャンピオンのファビオ・クアルタラロ(後)
第13戦アラゴンGPでし烈な戦いを繰り広げたホンダのマルク・マルケス(前)とドゥカティのフランチェスコ・バニャイア(後)。エンジンの速さに勝るドゥカティがホンダを圧倒した。
第13戦アラゴンGPでし烈な戦いを繰り広げたホンダのマルク・マルケス(前)とドゥカティのフランチェスコ・バニャイア(後)。エンジンの速さに勝るドゥカティがホンダを圧倒した。