ノリック手記総集編「エピローグ」
つらいことは忘れて、気持ちを切り替えたノリック。さあ、やっとトレーニング!(カメラ=遠藤智)
つらいことは忘れて、気持ちを切り替えたノリック。さあ、やっとトレーニング!(カメラ=遠藤智)
 いい時があれば悪い時もある。阿部典史にとって今年は、空回りのシーズンだった。フル参戦7年目。しり上がりに調子を上げたテストの勢いで序盤は好調な出だしだった。しかし、中盤以降は、不運のけがとツキに見放されて低迷。3年ぶりに優勝のないシーズンを過ごし、ランキングも予想外の7位まで落ちてしまった。ノリック独占手記の最終回は、その悔しさを反すうすることになった。
◆ハードな1年

 最終戦が終わって、あっという間に2カ月が過ぎようとしている。今年はシーズン中のけがが思うように回復しなくて、オフになっても、トレーニングができない状態が続いている。12月中旬に鈴鹿で2日間のテストをしたときも、ポルトガルで痛めた左足首の状態が良くなくて、2日目の午後の走行をキャンセルしてしまったほど。いまでも30分くらい歩いていると足が痛くなる。

 医者には、じん帯が切れていると言われているし、完全に治るまでにはもう少し時間がかかりそう。そのために、鈴鹿の後に予定していたツインリンクもてぎのテストも中止。今週は、鈴鹿の病院で、ポルトガルで骨折した左手薬指と小指に入れたボルトを抜く手術をしてきた。

 こんな状態だったので、この2カ月は、思いのほか、心身ともにゆっくり休養することができたような気がする。トレーニングができないのはちょっとつらいけど、体を治すのが先決だし、まずは、来年に備えて体の整備。いろんな意味で今年はハードな1年だったので、体と心のオーバーホールにはいいチャンスだと思ったんだ。

 それにしても今年は、僕にとって今まで経験したことがないほどつらく厳しい1年だった。シーズン序盤はまずまずの成績。それが第7戦オランダGPでチェカに追突されてひざを負傷。そのけがが治ったと思ったら、第11戦ポルトガルの予選で大クラッシュ。そこで負った左足首と手の負傷が今でも尾を引いていて、今までけがらしいけがをしたことがなかっただけに、経験したことがない苦しさも味わった。

 とは言っても、今年のレース内容は決して悪くはなかった。どのレースも優勝争いに加われる走りができていたし、走り自体は悪くはなかった。ただ、どういうわけか、結果がついてこなかったんだ。

 ツキとか運とかあまり言いたくはないけど、でも、ほんとに今年はツキがなかった。やれること、やるべきことはすべてやった。それなのに、けがもそうだし、天気にも裏切られてばかりだった。特にシーズン終盤戦は、なんでこうなるんだろうというレースばかりで言葉もなかった。そしてシーズンが終わってみればランキング7位。優勝もなくて、なんて1年になってしまったんだろうと思ったんだ。まあ、そんな超最悪の気分も、この2カ月でだいぶ立ち直り、来年に向けて気持ちを切り替えている。というか、もう、完全に切り替わっている。

 思えば、僕がトーチュウで手記を始めたのは、GP最初のシーズン(95年)からで、今年で7年目。いいレースも、悪いレースも、こうしていつも記事にしていただいた。言いたいことを書ける場所があるというのは、ストレス発散になっていたような気がする。いいレースのときは、うれしさも言いたい放題だったし、本当に恵まれているなあと思っていた。

 その7年間続いてきた僕の“手記”も、これが最終回。今年は、運がないとかツキがなかった、なんて書いておいて、これが最終回です、というのも、なんだか言いにくいけれど、7年間、僕の手記につきあってもらって、本当にありがとうございました。

 いままで、この手記がずいぶん自分の励みになっていた。と同時に、ファンの皆さんには、思うように期待にこたえられなくて申し訳ないなと思うレースばかりだったなあとも思う。それだけに、来年は今まで以上に頑張りたいし、8年目のシーズンを納得のいくものにしたい。手記がない分、レースでいい成績を残して、トーチュウの紙面を独占するつもりなので、今まで以上に応援してください。

 トーチュウの皆さん、ファンの皆さん、本当に7年間ありがとうございました。

■2001年12月30日掲載