虎之介と対談し激走を誓ったノリック=写真は日本GPのもの(カメラ=野間智)
虎之介と対談し激走を誓ったノリック=写真は日本GPのもの(カメラ=野間智)
「目指すは最速、そしてチャンプ」

 戦いの場が日本と世界という違いはあっても、今や日本中のファンの期待と注目を一身に集める二人の若者、フォーミュラ・ニッポンの高木虎之介と、ノリックこと阿部典史のビッグ対談が正月早々実現した。(構成=遠藤智、田村尚之)
 司会「新年明けましておめでとうございます。ところで、二人が顔を合わせるのは今回の対談が初めてだと思うのですが」

 高木虎之介(以下=虎)「そうです。どうも初めまして」

 阿部典史(以下=ノリ)「どうも初めまして」

 司会「こうして並ぶと、髪形も雰囲気もとても似てますね。二人はどうして髪を伸ばしているのですか」

 虎「どっちから話しますか?」

 ノリ「それじゃ、ジャンケンということで(笑)」

 司会「それではジャンケンに勝った高木選手からどうぞ」

 虎「この髪形は、実はノリックのをマネしたの。ヘルメットから髪の毛が流れるのがいいなと思って」

 ノリ「本当ですか。僕は去年のシーズン前に思い切り短くして、また伸ばし始めているんですよ。本当は走り終わった時なんか汗で髪の毛がうざったく感じる時もあるし短い方がいいんだけど」

 虎「それにもうひとつは、僕は人と違うことがしたかった。髪を伸ばしたのもあまりカッコ良くしたくなかったからだし、髪の毛なんかボサボサでも速く走りたかった。周りからなんだアイツと言われてるところで速く走る、ジンクスを破っていけたらいいなとも思った(笑)」

 司会「二人は今回が初めて会うまでのお互いの印象はどんなものでしたか」

 虎「ノリックの走りは去年の日本GPで見たのが初めて。やっぱり生で一度は見てみたかった。だって94年の日本GPの時にバイクでもスゲぇ〜のが出てきたなって思ったし、あの当時はF3に乗っていたけど、ずいぶんと励みになった。今年は鈴鹿の2コーナーで雨の中ずぶぬれになりながら見ていたけどノリックは全然ダメだった(笑)」

 ノリ「ああ、うれしいな。見に来てくれてたんですか。あの日本GPは自分でも一番悔しいレースだった。今年は頑張りますから、また見に来て下さい」

 虎「うん、行こうと思ってる」

 ノリ「高木選手の名前はずいぶん前から聞いていた。若くて速いヤツがいるって。でも、虎之介さんという名前からしてきっと怖い人だろうなと思っていた。でも、実際はそんなこと全然なくて(笑)。それにしても、去年の富士で星野(一義)さんをグイグイ追い上げて優勝したレース、あれは本当にすごいと思った。この対談も、あのレースを見てトーチュウの担当者の人にお願いしたんです」

 虎「オレもこの話を聞いた時は、すぐに“やる、やる”って返事していた(笑)。ところで、去年のシーズンは、何がだめだったの。前半はいいけど後半で遅れていく。テレビでいつも見ていたけど、どうしてだろうって思っていた」

 ノリ「本当にありがとうございます。いつも見てくれていて…。何が悪かったのかと言われれば、タイヤのもちが良くなかった。ずっとダンロップを使っているけど、去年は阪神大震災があって、その影響が大きかった。でも、チームメートだったカダローラが2勝しているし、まあ、言い訳だけど」

 虎「でも、スタートの1周目に速く走れるのってすごい。4輪もそうだけど、タイヤが冷えている1周目に速く走るというのは、何よりも有利なんだよね」

 ノリ「本当にありがとうございます(笑)。ところで僕はあの富士のレースが一番印象に残っているのですが、今までで一番印象に残っているレースは?」

 虎「やっぱり、F3000のデビュー戦、7位になったレース。すごく疲れたし、レースが終わった時にはマシンから降りることができなかった。それにフロントウイングが吹き飛んでいたのに、最後は死んでもいいって感じで走った。今じゃできないと思うけど。ノリックはやっぱり、94年の日本GPじゃないの」

 ノリ「いつも頑張っているけど、その中でもやっぱり、本当に頑張らなきゃと思ったレースは、あのレースかな。結果は転倒してリタイアしたけど、やるだけのことはやったし満足感はあった。結果として、今こうしてチーム・ロバーツに入れたし、あれがなかったら今の自分はないと思っているし」

 虎「あのレースを見てて、オレもあれでいいと思った。1位かつぶれるかってレースの方が好きだから。チャンピオンになるより、優勝したいっていつも自分では思っているし、だから去年の最終戦は3位や4位で終わりたくなかった。前で起きたクラッシュを避けられなかったのは自分の腕のせいもあるけど、あのレースはあれで良かったと思っている。タイトルを取れなかったのは残念だけど、今年こそって思っている」

 ノリ「今年は最終戦なんかいらないって感じで、チャンピオン決めてほしいですね」

 司会「ところで、二人は生い立ちもとても似ていると聞きましたが」

 虎「4歳でミニバイクに乗りはじめて、カートは12歳。12歳にならないとカートに乗れないので、その間は50ccのモトクロッサーに乗ったり自転車に乗っていた。おやじがカートをやっていたし、もし、バイクに乗せられていたらバイクのレースをやっていたかもしれない」

 ノリ「ああ、同じことを野田(英樹)さんも言ってましたね。僕もおやじがオートレーサーで、バイクに乗せられたからバイクに乗っているけど、もしカートだったら4輪をやっていたかもしれない。ところで、F3000ってどのくらいスピードが出るんですか」

 虎「富士で310km、鈴鹿で280kmぐらいじゃないかな」

 ノリ「ああ、それじゃ500CCのバイクとそんなに変わらないですね。F3とF3000ではどう違いますか」

 虎「F3はタイヤを滑らせないようにして走らせないとだめ。F3000はとにかくアクセルを踏まないとタイムが出ない。4輪はやっぱりタイヤが4つあるからコーナーが速い。でも、加速じゃ2輪には全然かなわない」
 ノリ「ああ、すごく似てる。2輪も500はアクセルを開けないとタイムが出ない。でも、250だと、スムーズにロスをなくして走ることも要求される。F3とF3000の関係によく似ている。ところで、F1はいつごろまでに行く予定ですか」

 虎「早く行きたい。でも、今年はとにかく結果を残す。予選ではガンガン行って、決勝はガマン」

 司会「最後にひとことずつ、エールの交換をしてください」

 虎「バイクのレースはいつも見ているし、あんなに面白いレースはない。ノリックには今のレースのスタイルを変えずにガンガン行って、早く優勝してほしい」

 ノリ「虎之介さんも、去年の富士のようにグイグイ追い上げるレースをしてチャンピオン目指して下さい。そしてF1に乗って、ヨーロッパで一緒に遊びましょう(笑)」

 虎「どうも。ところで時々、仲間だけでカートに乗って遊ぶんだけど、来る?」

 ノリ「行きます行きます。絶対に誘って下さい」